ドキュメンタリー・リアリティー

ドキュメンタリー「眠りに生きる子どもたち」視聴感想 Netflix

眠りに生きるこどもたち

第92回(2020)アカデミー賞がいよいよ近づいてきました。

Netflix作品が数多くノミネートされている中で、ドキュメンタリーもひとつ見てみようと選んだのが子どものことを取り上げた「眠りに生きる子どもたち」でした。

短編ドキュメンタリー部門にノミネートされています。

作品時間は40分と短く、「あきらめ症候群」という特殊な症状についての取材と現状をおさめたものでした。

[結果」

残念ながら本作は受賞はならず。

受賞したのは「Lerning to skateboard in a Warzone」でした

それでは、「眠りに生きる子どもたち」を視聴して感じたこと、そして派生してこの症状が集中しているスウェーデンについても少し調べてみました。

作品情報

配信・制作国:Netflix スウェーデン アメリカ

監督:ジョン・ハプタス 

クリスティン・サムエルソン

あきらめ症候群とは

初めて症例が報告されたのが1998年、それ以降数百を超える子どもたちが体の異常はないけれど数か月から数年昏睡状態のような状態に陥るという症状です。

しかも、この症状を見せている子どもたちのほとんどがスウェーデンに集中していて、その家族は難民申請中のケースが多いということでした。

紹介された3人の子どもたち

本作ではダリア(7才)、カレン(12才)、レイラ(10才)の3人の子どもたちが取り上げられていました。

家族や医師の話しかけや身体的な刺激にも無反応、歩くことも話すことも目を開けることもなくまさに昏睡状態のよう

けれど、体に異常はないんです。

これが「あきらめ症候群」や「生存放棄症候群」と呼ばれる症状でした。

引き金は社会的要因と逃れられない不安

この3家族は、東ヨーロッパ出身の難民家族。

激しい暴力や暴行を家族が受けていたりしてスウェーデンに来て難民申請をしています。

申請が却下されて元いた国に戻されたら… と両親も不安を抱えている状況でした。

回復の鍵は希望

両親の精神状況が大きく影響する可能性が示され、本作では難民申請が受理された家族のダリアが回復し、取材の6か月後には元気に走り回っている様子がおさめられていました。

一方、状況に変化が見られないレイラの一家では、レイラの姉までもこの症状を見せ始めていました。

この症候群の回復の鍵は「希望」

ある特定の文化圏の家族が難民となって引き起こされる子どもたちの症状は「希望」が感じられない不安な状況が引き起こすものであることが描かれました。

スウェーデンの難民受け入れ事情

GOOGLE MAPより

映画では詳細に触れられてはいなかったのですが、本作の症候群に深いかかわりがあるスウェーデンの難民・移民問題について少し確認してみました。

そもそも戦後や紛争内紛による移民の受け入れ、その後のEUにおける協定や国連の難民条約批准など難民受け入れに対して寛容なイメージがある国だったスウェーデン

近隣他国や地域の内紛などでスウェーデンに亡命を希望する難民の数がとても多いことが分かりました。

しかし、2014年には1年で8万人の難民がスウェーデンに来るなど財政難や現地スウェーデン人との共存上の問題などが現れはじめ状況が悪化

2015年には移民受け入れに関する法律が厳しくなってしまったようです。

永住権が得られるかどうかがで家族の今後が左右されるという不安要素はどうしても強くなってしまう現状があったということでした。

子どもたちにかかる強いストレスの形

独特で局地的に見られる症候群ゆえにすべてが解明されていない症状ですが、原因も回復のきっかけも家族が安心して暮らせるかどうかという心因的なものであることは確かなようでした。

東ヨーロッパとスウェーデン以外でも、世界では紛争地帯からの集中的な難民移民問題など受け入れる国の事情もあって難題であることは否めません。

それでも、子どもたちにかかった強いストレスが及ぼした影響の一つとしてこういった悲しい症状を見せるケースがあるという事実を知ることができました

スウェーデンではここ3年間で「あきらめ症候群」は200件増加していると言っていました。

本作が2019年6月配信スタートだったので、およそ2016~ということはまさに移民に対する法律の厳格化の影響はあるといえそうです

また、本作では語られませんでしたが、スウェーデンには「あきらめ症候群」からの回復のために両親から離してトラウマをケアする方法が有効だとする医師もいらっしゃるようです。

ドキュメンタリーでは「眠りに生きる子どもたち」が語る回復のヒントは「希望」だと語っていました。

不安を抱えた家族の会話や気配を感じることが影響しているとすれば一旦環境を変え適切なプログラムの元で回復できれば最善ですね。

さいごに

本作では言及されていないところまで語ってしまいましたが、こうして調べてみようという気持ちにさせてしまうという点でも意味がある作品だったのでしょうね。

世界にはまだ名前がついていない症状に苦しむ人々がいるに違いないですが、子どもたちが生きることを放棄したくなることが引き金という症状はとても胸が詰まります。

短い作品でしたので、気になった方はぜひご覧になってみていただけたらと思います。

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