ジャンルものがお得意の韓国ケーブル局OCNが2018年夏に放送した「ボイス2」。
2017年に放送され人気があった「ボイス~112の奇跡~」(←シーズン1)のシリーズ第二弾として放送された「ボイス2」は、イ・ハナが112通報センター(日本の110番)のセンター長として続投しています。
シーズン2の主演はイ・ハナとイ・ジヌク。
シーズン1のチャン・ヒョク演じたジニョクは海外へ行き、イ・ハナ演じるグォンジュの良き相談相手兼友人として連絡を取り合っている様子が描かれていました。(チャン・ヒョクは声のみの出演でした)
シーズン2も気合のはいった刑事ものとして楽しませてもらいました。
本作の魅力などを今回も主観的に語っていきたいと思います。
ネタバレあらすじ・感想は後半に、前半はネタバレなしでお読みいただけます。
シーズン1の感想はこちらです
ボイス2 について
放送
放送:2018年韓国OCN
シーズン1 ボイス~112の奇跡~ | 2017年 全16話 |
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シーズン2 ボイス2 | 2018年 全12話 ←今回ココ |
シーズン3 ボイス3 | 2019年 全16話 |
シーズン4 | 2021年 |
演出・脚本・キャスト
演出:イ・スンヨン
新別巡検(2007)w/キム・ビョンス
別巡検3(2010)w/キム・ミスク他
特殊事件専門担当班TEN(2011)
失踪ノワールM(2015)
チョ・ロクファン
イニョン王妃の男(2012)w/キム・ビョンス
脚本:マ・ジンウォン
ボイス~112の奇跡(2017)
キャスト:
イ・ハナ(カン・グォンジュ)
イ・ジヌク(ト・ガンウ)
クォン・ユル(パン・ジェス)
ソン・ウンソ(パク・ウンス)
キム・ウソク(チン・ソユル)
事件捜査ものに強い演出・脚本ペア
ボイス1の監督はキム・ホンソン監督でしたが、本作の監督さんはOCNのクライムサスペンスの中でも事件捜査ものに強いイ・スンヨン監督が担当されていました。
2007年、2010年に監督された「新別巡検」は朝鮮時代の鑑識術で事件を捜査する朝鮮時代版科学捜査班という斬新なコンセプト。人気シリーズでした。
私も見た「失踪ノワールM」はまた唸るほどの深みを感じさせる刑事ものでした。
「失踪~」は韓国で警察が抱えるジレンマだけでなく、事件の隙間や闇をえぐりつつ問題を投げかけるような複雑な構成もあり、しかも刑事ものの面白さも捨てていない手の込んだ作品でした。
そして本作もまた、途中から「これはすごいな」とじわじわ感じざるを得ない印象が高まり、脚本力を映像化させる力量を感じました。
冒頭あらすじ&予告編
2015年6月、ト・ガンウ刑事はプンサン市ソクポ沿岸のほの暗い船上で目覚めた。
拘束され、手が届かない所に相棒ソンジュン刑事がしばられ今にも手首を切り落とされようとしていた。
実行犯一人、命令する仮面の男一人。
ガンウは相棒を助けられず海に落ち、近くにいた船に発見されるのだった。
3年後、112センター長を務めるカン・グォンジュは列車内に人質を取って暴れる爆弾を纏った男の事件に向き合っていたが、現場を仕切るゴールデンタイムチームのチャンチーム長が到着していなかった・・・。
チャンチーム長は薬を打たれ、耳を切り取られ、ハンドルを持たされ、バス停で待っているハイキング帰りの人々を轢かされようとしていたのだった…。
本国放送時の予告編
主人公たちが追うことになる犯人は人体の一部を採取する特徴を持っているため、残酷なシーンがあります。
ただ、直接映像にするのを極力少なくし、そうなったんだなとわかるように工夫されていました。
グロさレベルとしては若干低めくらい?に設定されていたと言ってもいいのではないかと思います。(ただしグロ大丈夫の私の基準ですが)
ボイス2 の見どころ
時代を表す事件を網羅
本作では全編を貫くある犯人の存在を描きながら、その犯人によるほう助とみられる、あるいは関係ないと思われる事件も含めておよそ2話に1エピソードの割合で描かれていました。
それらエピソードの事件内容はここ最近注目され始めた時代を表すものが選ばれていました。
例えば、小児性愛者の再犯率の高さを表すエピソードであったり、ボイスフィッシング詐欺(特殊詐欺=オレオレ詐欺的なもの)やDJならぬBJと呼ばれる生放送中継をするユーチューバーのような存在による事件、深刻な合成麻薬を描いたものなどでした。
今シーズン対峙した犯人の存在
私が実によくできているな~と感じたのはこのラストまで捕まることのない、今作でのラスボス的な存在だった犯人の描き方でした。
この犯人は主人公であるト・ガンウに執着を見せたのですが、その理由もきちんと用意されていました。
ト・ガンウが常につらい状況に置かれてしまうことになるまた別の理由もストーリーを複雑化させていて、さらにガンウを危機に陥れていきます。
最もつらい役を演じきったのはまさにガンウ役のイ・ジヌクだったかと思います。
冷静さと優しさを兼ね備えた才女グォンジュ
本作の一つのテーマが“憎悪犯罪”的なものだったと思うのですが、ひとつマイナスの証拠的なものが出ると誰もが一気にその人を犯人だと決めつけ叩き出すという姿が見られました。
冷静になればそうとは言い切れない部分がまだまだあるのに何で…と思うほどなのですが、そういう熱くなっていく人々の傍らで、きちんと自分の目と耳で状況判断をしてゆくグォンジュの存在がとても頼もしかったです。
前作よりも落ち着きを増したグォンジュ。
彼女失くしては語れないシリーズと言えます。
ボイス2 とは
人の憎悪を利用し欲望を果たそうとする猟奇犯と戦った
グォンジュ率いる緊急通報センターの活躍を描くシリーズ第二弾
ハマり度は
4
ストーリーのピースのはめかたが実にうまくいっていて、その複雑なストーリーを工夫された映像で分かりやすく描いてありました。
伏線が多くなりすぎると視聴者は置いて行かれがちですが、本作はそんなこともありませんでした。
人々から向けられる偏見や心ない憎悪の目がいかに人を傷つけるのかもう一度自分自身を振り返ってみたくなる物語でした。
ここからはネタバレがあります
ご注意ください
ネタバレあらすじ
ガンウ刑事がとにかくツラい目に遭ったストーリーと先ほど言いました。
彼は3年前に起こった相棒であるヒョンジュン刑事の手首を切断し殺害した容疑者とされ、嫌疑不十分で釈放後休職していた刑事でした。
真犯人を追い続け、真犯人の犯行パターンや類似事件を研究し尽くしたガンウ刑事は、再び活動を開始した真犯人を捕まえようと必死でした。
かなりぎっしりと詰まった内容だったので、少し本作のポイントとなったストーリーを書き記しておこうと思います。
感想はそのあとに書くことにします。
ガンウをゴールデンタイムチーム長にしたグォンジュ
優れた聴覚を持つグォンジュは、遠くの音や小さな音、音の種類を聞き分けるだけでなく、声色などから話者の精神状態や持病、嘘をついているのかどうかまで聞き分ける力を持っています。
ガンウのいう真犯人が警官を狙っていることを察知したグォンジュはガンウをチーム長に抜擢し、ともに捜査することにしました。
ガンウが真犯人にターゲットにされていた理由
おそらく三つの理由からだと思われました。
ひとつは、RAS(反射性無酸素発作症)を患っていたからということもあると思いました。
怒りや極度のストレスで意識を失い記憶を失うなどの症状がある疾患で、ガンウは意識を失っていた前後のことをはっきり断言できませんでした。
二つ目は、RASの症状を引き起こしてしまう理由の一つであったのですが、彼のお父さんは少女を殺害し耳を切断した猟奇犯だったことでした。
ガンウはその少女とは友達で、少女をおびき出す役割をしたといわれ人々から憎悪の対象とされてきました。
三つ目は警察官だから。
真犯人はこの三つの理由からガンウをターゲットにし執着を見せていたのでした。
真犯人の思惑とは
真犯人は自ら手を下すことはほとんどなく、殺人を犯させるターゲットを選別していました。
殺人を犯させるターゲットに選ばれるのは「強い怒りを抱いているもの」。
真犯人は運営チームと呼ばれるグループを裏サイトで管理し、ターゲットとした殺人犯(に仕立て上げようとしているもの)が動き易くしたり、被害者を誘導したり決定的な証拠が残らないよう監視カメラの電源を落としておくなど用意周到でした。
時には、自分たちが手を下しておき、被害者に強い怒りを抱いていた人を犯人に仕立て上げ口封じに殺す、ということまでするグループでした。
真犯人らグループの目的とは
自分たちの基準でみて、社会にとって害悪となる“害虫”を駆除してやっているという使命感に突き動かされていたといえます。
その使命は公には犯罪となるものであるがゆえに、それをいかにして捕まらずにやり通せるかという部分でもゲーム感覚の欲求を満たしていた可能性もありました。
真犯人は誰だったか
真犯人は元海軍出身の海洋警察官パン・ジェスという男でした。
軍では優秀、実力も度胸もあるジェスでしたが、彼は母親が集団暴行をうけその結果自分が産まれたという悲しい出生を抱えていました。
心を病んでいたお母さんは他人と関わることを怖れ愛情と憎悪の入り混じる複雑な感情をジェスにぶつけていたけれど、ジェスだけを頼りに愛していたことは確かでした。
自分たち親子に偏見を持ち、いじめ、引き離そうとする者たちへの憎悪が噴出し歪んだジェス。
強迫性障害も抱えていたジェスは人々からの憎悪を受けて育ったガンウなら理解者となり仲間であるはずだという望みも抱いていたようでした。
ガンウは勝ったのか負けたのか
ジェスが自分側へと引きずり込みたかったガンウは、どんな手を使っても最後まで悪の道には来ませんでした。
ガンウは勝ち、ジェスは逮捕され負けた。
しかし、ジェスはグォンジュを陥れていました。
爆発物があるため避難とされた建物に幼い女の子が取り残されているとグォンジュに思わせる細工をして爆発物の近くまでおびき寄せていました。
そして爆発は起きてしまった。
ジェスは勝ち誇っていました。
グォンジュはどうなったのか
映像の状況だと逃げる時間はなかったので、爆発に巻き込まれ助からなかったと判断できます…。
ただ、ジェスの背後には、活動を金銭的に支援していたと思しき黒幕的な老人の存在が常にありました。
それが一体何者なのかという謎は残ったまま。
続編がある可能性が残った最終話でしたが、このシリーズはグォンジュの聴覚が主役ということもあって、グォンジュが生きていることを祈るばかりです。
ここでちょっとOSTを
エンディングでフルで流れたのですが、サウンドも歌声もカッコよくてしびれたのが
キム・ヨンジ「声」
人間の悲喜劇が詰まった刑事ものである本作の、哀愁と情熱のようなものを感じます。
さいごに 感想
ストーリーの濃さと構成のうまさ、見せ方のバランスの良さが相まってとても見ごたえのあるドラマでした。
前シーズンではストーリーもさることながら、猟奇殺人犯のキャラクター像と存在感が際立った部分もあったのですが、本作はグォンジュの指揮官的な立ち位置が安定したこともあり、ストーリーの充実度が増していました。
アメリカンドラマのクライムサスペンスよりも感情的で、日本の刑事ものよりも凄みのある本作の力を興味のある方は味わって見てもらいたいなと思います。
いつもより少し長くなりましたが、最後までお読みいただきありがとうございました。