ヴェルサーチ暗殺:アメリカン・クライム・ストーリー 視聴感想

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ヴェルサーチ暗殺:ASC2

2018年のエミー賞やゴールデングローブ賞などで作品賞や主演男優賞を獲得していた話題作「ヴェルサーチ暗殺:アメリカン・クライム・ストーリー」を見終わりました

アメリカン・クライム・ストーリーは実際にあった事件をベースに脚色を加えながらドラマ化されているシリーズということもあって、今回リアルな空恐ろしさと映像の美しさに引き込まれました。

今回も私の感じたところを主観的に語っていきたいと思います。

前半はネタバレなし、後半からネタバレあらすじや感想などを語っています。

目次

作品情報

放送:アメリカFX

シリーズ:アメリカン・クライム・ストーリー

シーズン1
O.J.シンプソン
2016年 全10話
シーズン2
ヴェルサーチ暗殺
2018年 全9話 ←今回ココ

キャスト

ダレン・クリス(アンドリュー・クナナン)
エドガー・ラミレス(ジャンニ・ベルサーチ)
ペネロペ・クルス(ドナテラ・ベルサーチ)
リッキー・マーティン(アントニオ)
フィン・ウィトロック(ジェフ・トレイル)
コディ・フェーン(デヴィッド・マドソン)他

原作:

Maureen Orth著「Vulgar Favors:Andrew Cunanan,Giannni Versace,and the Largest Failed Manhunt in U.S.History」

冒頭あらすじ

1997年7月15日、アメリカの自宅であるマイアミビーチの邸宅前で有名デザイナー、ジャンニ・ベルサーチが射殺された。

犯人はジャンニと7年前に出会ったことのあるアンドリュー・クナナンという男だった。

アンドリューはジャンニの前に4人を殺害していることで指名手配となっている男娼だった。

予告編

ここで本作の配給元FOXJapanの予告編を共有させていただきます。

見た目も物腰も普通以上の洗練度あるアンドリューがしでかした、世界的デザイナーの暗殺の陰にいったいどんなストーリーがあったのかが詳細に描かれていくことが分かる予告編となっています。

ドラマ「ヴェルサーチ暗殺」の魅力

ヴェルサーチ氏の晩年のストーリーの力強さ

暗殺事件と犯人の物語が主軸となっていた本作ですが、連続殺人犯に殺害されてしまったジャンニ・ベルサーチ氏が晩年をどんなふうに生きていたかという部分も描かれています

ヴェルサーチ氏のマイアミの邸宅の建築様式や美術、色彩などを撮りこむカメラワーク、そしてその家族との姿も含めて、鮮やかさと力強さに引き込まれました。

だからこそ、殺人犯アンドリュー・クナナンがなぜヴェルサーチ氏を標的としたのか、その理不尽な経緯や背景をじっくりとみていこうという気持ちになりました。

アンドリュー・クナナンの才能と悲劇

富裕層の心にすーっと入り込めるほど教養もあり話術も巧みなアンドリュー。

その彼が、自分の立身方法の一つとして選んだのが“ゲイであること”でした。

同性愛が違法の時代、隠しているけれど相手を求めている人がいるという事実を逆手に取るアンドリューが踏み込んでいったのは自分を追い詰める道。

彼が一体なぜその道を選んだのか、なぜそこまでできてしまうのか疑問だらけになります。

その経緯を時間をさかのぼる形で物語を展開させながら紐解いていく構成となっていました。

犯罪の種(たね)となった衝撃の事実

時間をさかのぼっていくと先ほど言いましたが、終盤まで来ると、アンドリューがどんな子供時代を過ごしたかが見えてきます。

それは私の予想とは違った意外なものでした。

アンドリューにとってそれが彼の人生の幸せを見据えたものだったのかどうか、結果が出ているだけに衝撃だったと言えました。

ヴェルサーチ暗殺:ACS とは

連続殺人犯アンドリュー・クナナンの事件を紐解きながら
偉大なデザイナーヴェルサーチ氏の晩年に思いを馳せる物語

ハマリ度は

3

シリーズの1作目であるO.J.シンプソンのストーリーは見ていないので、このシリーズがどういったパターンで描かれるのかなどの前知識が一切ありませんでした。

とはいえ、そんなことはまるで関係なく、本作自体のもつドラマ力で最後まで引き込まれてみることができました

何よりも、偉大なデザイナーの命を残酷に奪った男アンドリュー・クナナンの物語を見るということより、演じたダレン・クリスの力を見た!と感じずにはいられませんでした。

ダレン・クリス、すごい俳優さんです!

▶︎Netfilx「ヴェルサーチ暗殺」

ネタバレあらすじ

野心の方向性を誤った男娼アンドリュー

頭の回転が速く、身だしなみも良く教養もあり、特に富裕層の老紳士たちに可愛がられフリーのゲイの男娼として成功し始めたアンドリュー

彼の野心満々な姿に微笑み、すらすらと出てくる嘘の身の上話すら見逃してもらえたのは、彼がゲイでありそんな彼を可愛く思ってくれていた隠れたゲイであった彼らの思いが重なっていたためでもあったようでした。

同性愛者であることが罪だった時代の中を生き抜いてきた彼らの心に寄り添っていたならばきっと穏やかで新しい展開があったかも…。

でもつけ入ってしまっていたアンドリュー。

若気の至りといって笑えない展開になってしまったのは、アンドリューにとって欲しいものを手に入れられないことに対する極度の憤りがあったからのようでした

欲しいものが手に入らない憤りと歪み

アンドリューが究極に欲したもの、それは愛する人デヴィッドでした。

若くハンサムで前途有望な建築家のたまご。

しかし彼は嘘だらけのアンドリューを受け入れませんでした。

デヴィッドが求めていたのは豪華な旅行や食事・プレゼントではなく、嘘偽りなく自分を語るところからの人間関係のスタートでした。

知り合いだったジェフとデヴィッドの関係を誤解し、ジェフを殺害するところをデヴィッドに見せたアンドリュー。

共犯として逃避行することで関係を深めようとしていたアンドリューを拒絶したデヴィッドもまた殺害されました。

アンドリューは憤りと逃走のために人を殺しながら、最終目標としたヴェルサーチ氏の住むマイアミへと向かいました…。

ヴェルサーチ氏がターゲットになったのは

アンドリューがヴェルサーチ氏と会ったことがありました。事件から7年も前。

当時サンフランシスコにいるという情報を得て会いに行ったアンドリューはクラブで話しかけ、故郷を偽りながらすらすらと語る虚構の身の上話に耳を傾けてくれたヴェルサーチ氏。

アンドリューの持つ教養と才能が正しいほうへと向くよう、芸術的な刺激となればよいなと彼をオペラに招待しています。

ただヴェルサーチ氏がゲイだと見抜いていたアンドリュー。

色仕掛と押しのトークで受け入れてもらおうとしたアンドリューを丁寧に諭したヴェルサーチ氏。

ふたりの関係はただそれだけのことでした。

歪んだ殺意は嫉妬から  

自分は特別で、成功して当然と思っていたアンドリューは愛する人に受け入れられず、愛人に見限られ金が切れ、連続殺人犯となった。

彼の中で最も華々しく成功してたのがヴェルサーチ氏だったことで、自分の不幸を恨み、彼への妬みが歪んだ殺意へと変わったようでした

アンドリューが奪ったベルサーチ氏の余生

人格者で努力家だったヴェルサーチ氏。

彼はガンで余命わずかな体を抱えてブランドをどう自分亡きあと存続させていくか踏ん張っていました。

まずは従業員や全世界の店舗のためにブランドを、そしてきっとそのあとには十数年を共に生きた愛する人アントニオさんのこともいろいろと準備したはず。

そんなヴェルサーチ氏の余生を奪ったアンドリュー。

アンドリューはヴェルサーチ氏に関係する人達も不幸のどん底に陥れ、ついにはアントニオさんが後追い自殺をするなど取り返しのつかない悲劇も生んでいました。

アンドリューの衝撃の生い立ち

さて、時間をさかのぼりながら描かれた本作の最終章はアンドリューがどんな子供時代を過ごしたかが描かれました。

アンドリューがうそぶいていたと思っていた裕福な生活を送っていた自慢は実は一部は本当でした。

しかし、それは口八丁と度胸と詐欺で金を稼いでいたお父さんが他の子どもを差し置いてアンドリューだけを王子様のように家族にかしずかせて育て有名私立に通わせていた、まさに虚構ともいえる生い立ちでした。

アンドリューが18歳ごろ、その虚構ともいえる生活はお父さんの詐欺罪成立と家族を捨てて全財産をもってフィリピンへ逃走したことによって崩壊していました。

結末

マイアミで潜伏していたアンドリューは逃走不可能な包囲のなか自殺しています。

人生で唯一信頼し可愛がってくれたお父さんに見捨てられたと分かったことがその引き金に違いありません。

感想

実話ベースのドラマには、想像もつかない人間物語が垣間見えます。

あの時あの人に出会わなければ、とか、あの時あの人に別の言葉をかけていたらなどといったもしもの後悔が積み重なるような重さを感じてしまうのが悲劇のドラマですが、すべては加害者が犯罪を犯したという重大な問題を直視しその背景を知るという部分にこそ意味を感じます。

本作ではアンドリューのお父さんがそもそもコワ過ぎたという感想がじんわりと残っています。

家族関係も育て方も極端で、アンドリューを愛していたと思っていたお父さんは、贅沢をさせ高等教育を受けさせている自分に満足していたようにしか思えません。

トレイ殺害の共犯と疑われたデヴィッドの両親の息子を信じる言葉を聞いて、アンドリューはフィリピンのお父さんに助けを求めています。

けれど、そのあとお父さんの取った行動はマスコミを呼び寄せて息子の半生を映画にする計画があるとプレゼンするインタビューでした。

アンドリューを救えるのも、過ちを正させることができるのもお父さんだけだったはずですが、そもそもお父さんが歪んでいた

アンドリューの絶望は崖っぷちで頼れる人についに捨てられたと認識したことでもあったのではないかと思います。

そんなアンドリューの歪んだ価値観と本音の垣間見える行動を、なまなましく演じて見せたダレン・クリス。

彼の演技が本当にすごかった。

ダレン・クリスがその演技で受賞されたのがよくわかりました。

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