中山美穂&キム・ジェウク主演の2018年公開の映画「蝶の眠り」を見ました。
日本語のうまいキム・ジェウクが文学部専攻の留学生役で中山美穂演と共演、ロマンスを演じたことで話題となっていました。
ちょうど機会があり見てみたのですが、雰囲気だけで終わらない余韻が感じられて好印象が残りました。
本作の作品情報や魅力やについて今回も感じたところを語っていきたいと思います。
作品情報
公開:2018年
原案・監督・脚本:チョン・ジェウン
キャスト
中山美穂(松村涼子)
キム・ジェウク(ソ・チャネ)
石橋杏奈(アンナ)他
監督は建築ドキュメンタリーで評価された方
本作の印象を聞かれたとしたら、私はキム・ジェウクの雰囲気ある演技とともに主人公涼子が住む家が素敵だったことを挙げたいです。
間取りや内部の構造が実に凝っていて、あえて狭いところは居心地よく、庭の緑や太陽の光がたっぷりと堪能できるところは解放感を感じられるなど住んでみたいと感じる素敵な家でした。
監督さんの来歴を見ると、2012年に日本未公開の建築ドキュメンタリー「語る建築家」という作品で成功されている方でした。
冒頭あらすじ
人気作家として名声を得ている涼子はアルツハイマー病と診断され、人生最後の小説を書きあげようとしていた。
大学で講義を受け持った縁で生徒の友人の韓国人留学生ソ・チャネと出会う。
学費のためにアルバイトを掛け持ちしている彼に愛犬の散歩や小説の書きおこしを頼むうちに二人は互いに特別な感情を抱くようになっていくのだった…。
予告編
出会いのきっかけや二人の関係性がさらりと伝わってくる美しい予告編です。
本作の魅力とは
色彩を意識した映像
ヒロインの家が素敵だったと言いましたが、本作は色彩へのこだわりがストーリー上重要な要素として描かれていました。
詳細はネタバレで語りますが、二人の記憶の中に鮮明に残ることとなる大切なシーンを生み出していました。
自然な日本語と安定した演技キム・ジェウク
日本に来て7年というチャネを自然に演じたキム・ジェウク。
二人の物語に集中できたのはセリフの面で違和感がなかったのは大きかったと思います。
さらに、中山美穂さんは演技に独特のクセがありますが、それが涼子の個性として感じられたのは相手役を美しく見せることができるキム・ジェウクとのケミストリーが活きていたからだったのではないでしょうか。
愛の思い出が贈りものとなったロマンス
才能あふれる作家として成功してきたヒロイン涼子は50代。
発症後余命約3年というアルツハイマー病と診断され、孤独な人生の終わりに年若い青年との時間のなかで愛の思い出を刻みました。
涼子の選択が青年チャネの人生に大きな贈り物を残すことになる、静かだけれど温かい愛の物語でした。
映画「蝶の眠り」とは
小さな思い出たちの足跡は消えない
心の深くに刻まれた愛の記憶を綴るラブストーリー
ハマり度は
3
正直なところ、予想よりも良かったというのが本音でした。
美しいシーンシーンの断片に実は意味があったということが分かるストーリー。
余韻を静かに楽しむことができる映画でした。
ここからはネタバレがあります
ご注意ください
ネタバレ感想や結末
記憶というのは、その人をその人たらしめるものですよね。
それを失っていくことの怖さやさみしさは計り知れません。
主人公は遺伝的な理由もあってのことでしたが、平均寿命80越えの日本で生きる私自身もアルツハイマー病や認知症などの可能性を無視できないと感じています。
涼子もどれほど怖かったでしょう。
涼子の選択
互いに愛し合うようになったのは想定外だったかもしれません。
ただそうなると、ずっとそばにいようとしてくれることが分かっているチャネのためにも、そして涼子自身が守り抜きたい尊厳のためにも、彼女が選択する道は「別れ」ただ一つでした。
納得できなかったチャネ
自分の気持ちを置き去りにされ、一方的に拒絶されてしまった形となったチャネ。
別れの喪失感が大きすぎ、利用されただけだったんだと悲しさから湧き上がる憤りが大きかったのも無理はなかったでしょうね。
別れによる感情のうねりを韓国に戻って作品に昇華させたチャネは2年後作家として成功し、日本語翻訳版の出版で日本にやってきました。
自分が手助けした涼子の遺作「永遠の記憶」の書籍をはじめて紐解いたチャネは、執筆にチャネが関わっていたと分かる痕跡をあえて涼子が残していたことに気づきました。
涼子が残したプレゼント
チャネに作家としての道を歩むきっかけをくれたこと、
愛していたから別れを選択したこと
愛した証となる小さな思い出たちの痕跡を残していたこと
チャネのおかげで涼子にとっての最後の作品を作り上げることができましたが、結果的に文学を諦めようとしていたチャネに文学の道に戻るきっかけを与えたことにもなりました。
その他にも、涼子は二人の愛の記憶としていくつかのあしあとを残していました。
特に、涼子の頼みでチャネがブックカバーの背表紙の色に合わせて並べなおした美しいグラデーション仕上げの本棚がありました。
作家別でもジャンル別にも並んでいない、本との偶然の出会いを愉しめるという涼子の思いは「偶然の図書館」という名に生まれ変わった涼子の邸宅にそのまま残されていました。
結末の余韻
療養所で再会した涼子はもうはっきりとした反応を返しはしませんでしたが、チャネの手を取り頬に運びました。
自分のことが分かっているのかと問うチャネ。
手渡されたミニレコーダーからは「たとえ記憶を失っていても愛し合うもの同士が出会った瞬間お互いがわかる、チャネあなたを覚えている」と語る涼子の言葉が。
チャネと共に過ごした時間の痕跡を刻み、そして残そうとした涼子の思いを受け止めたチャネの涙が印象的でした。
さいごに
中山美穂主演の映画「ラブレター」(1995)は韓国では大ヒットした日本映画として有名です。
中山美穂というブランド力とでもいうのでしょうか、韓国での上映を視野に入れれば固いキャスティングだったんだろうなと思います。
メロ寄りのラブストーリーでしたが、20才以上年の離れた二人の愛の物語としては説得力のある物語でした。
ちなみに、映画公開当時キム・ジェウクさんの実年齢36才、中山美穂さん48才で物語の設定より年の差は少なめですね。
それにしてもおふたりとも童顔です、お美しい♥