16年前、NHKで放送開始された韓国ドラマ「冬のソナタ」が多くの中高年層の女性陣の心を捉え、第一次韓流ブームが幕を開けました。
出生の秘密・記憶喪失といったドラマチックな要素の上に、日本のドラマではほぼ見かけない、男性主人公が情熱的に愛を語りはらはらと流す涙と切ない演技のクオリティーは衝撃的でした。
記憶を失う前と後で別人のような人物を演じた主人公のペ・ヨンジュンが「ヨン様」と呼ばれて日本で不動の人気を誇ったことを鮮明に覚えています。
私は冬のソナタのブーム到来の2年前に「秋の童話」という韓国ドラマをみて、その内容の濃さと俳優たちの演技力の高さにハマり韓国ドラマというジャンルを心に刻んでいました。
当時、アジアの映像作品といえば、ジャッキー・チェンが出ているカンフーアクション作品やキョンシーといったホラーコメディといったものがほとんど。
私は、韓国ドラマの情報を求めてネットの波を泳いでみたのですが、その時は、のちに韓流ライターとなられた阿部裕子さんのウェブサイトが頼りだった思い出があります。
あの頃、「韓国ドラマ」は強いぞ、とかなり強く思っていましたが、その後16年たった2020年、こうして韓国ドラマは確実にファンを得て定着しているのが一韓ドラファンとして本当にうれしいところです。
そんな私が、今年3月末、あの時のような「強いぞ」と感じるドラマに出会いました。
タイBLドラマ「2gether」
17-8年前のような強いぞと感じたドラマ、それが、タイのBLドラマ「2gether The Series」。
すでに日本でも世界でも、BL実写ドラマというのは一定のファン層があり、サブカルチャー的ジャンルとしても定着しています。
BLドラマには、タイ沼(タイ産のBLドラマ)、中華沼(台湾や中国産BLドラマ)などと呼ばれる、落ちたら抜けることは難しい魅力を持つアジア実写BLドラマの世界が存在しています。
私もその世界に吸い込まれたわけですが、「2gether」には、BLという、同性を愛する若い男子のたちのラブストーリーの魅力がこれまでBLに触れてこなかった層までをも魅了すると感じました。
軽快でナチュラルな等身大のラブコメ
主人公たちは、出会い、関わっていく中で相手に恋をしていきます。
恋をした相手が男子であることを明るく爽やかに描いていきます。
この恋の物語は軽快なラブコメとして描かれ、サムの関係を漂いながら時にきゅんとするようなキスシーンを挟んでスキンシップの予感をマークしていきます。
2getherでの二人の関係性はナチュラルで等身大に展開し描かれていて、ストーリーや俳優たちの演技、演出を含めドラマとしてのクオリティーが維持されています。
アジアBLドラマブーム牽引の可能性を秘めていた
9話まで見た時には、例えばNHKの海外ドラマ枠などでも放送できる作品だと感じていたことから、日本でアジアBLドラマブームの可能性にドキッとしました。
→2020年7月現在、複数のタイBLドラマのVOD配信・CS放送が一気に決定しています。
韓流ブームは中高年のお姉さま方が中心となって下支えましたが、今度はもっと若い層が中心です。
そしてボーイズラブという濃いファンの好むジャンルというイメージを脱却していく予感もしています。
この2getherをきっかけに、アジアで愛される若者たちを中心に描いたクィアストーリーが日本へと流入すると同時に注目が高まり、評価と指示を得られるはずだと感じました。
実際に、アジアBLドラマにハマった私が生き証人と言えます。
恋も愛も人それぞれ 平等に幸せを得られる当り前さへの気づきに
濃い大人向けのラブストーリーを展開するBLドラマももちろんありつつも、「2gether」がアジアのBLに触れる初めての作品となる方も多いかもしれません。
BLドラマはゲイあるいはバイセクシャルの男性たちの恋を主軸に描かれる実写のラブストーリー。
ドラマがセクシャルマイノリティーである彼らの愛の形を紡ぐことで、ドラマが彼らの表象として視聴者に届けるイメージは、見慣れないものでもなかったものでもないと伝えることでしょう。
韓国ドラマがお隣の国の文化を親しみのあるものにしたように、今度は若い世代の子たちを中心にして恋も愛も人それぞれという、人が平等に幸せを得られるための常識が徐々に浸透していくきっかけになっていきそうな気がします。
これまでは(ほんの半年前までは)、日本でタイBLドラマを見るには、公式が英語字幕を付けてくれていればよいし、ない場合は有志の方が時間を割いてつけて下さった日本語字幕付き動画を見せていただいたりと平坦な道ではなかったそうです。
今回、2020.7.21、RakuteTVでの配信や、スカパーチャンネルの衛星劇場など、続々とタイBLドラマのラインアップが発表され、日本の業界が需要がある=商機があると踏んでいることがはっきりしました。
しばらくは、質の高い過去作を求めて見まくった私のように、名作が立て続けに日の目を見るでしょうね。
ひとときブームの様相を示すかもしれませんが、長く愛され続ける作品が続くことでしょう。
さいごに
BLドラマの個性を尊重しつつ
タイのBLドラマを見ていると、これまで私が韓国ドラマや海外ドラマ、映画などの感想を書いているのとは違う角度と熱量で魅力を語ることになるなという現実的な思いにも駆られていました。
そういう理由もあって、結局は別部屋的に、「BLドラマはびっと」のサブカテゴリーサイトを作っています。
興味のある方はメニューリンクや上のロゴリンクからBLドラマカテゴリーをのぞいてみて下さいね。
本館ドラマはびっとにはなくて、こちらに感想があるドラマもあると思います。
今後「2gether」が生んだ多くの新BLドラマファンたちが若いアジアの俳優たちの活躍の場をどんどん広げていくようで今から楽しみで仕方がないhabbitです。