韓国ドラマ

悪の花 自分自身を取り戻す緊迫の遠き道のり 秀逸クライムサスペンスロマンス

悪の花

2020年夏tvN放送、イ・ジュンギ&ムン・チェウォン主演のヒューマンクライムサスペンス「悪の花」。

「無法弁護士」(2018)以来、久しぶりのイ・ジュンギ主演作だったこともあって気になっていた作品でした。

その上、放送終了が近づく頃には盛り下がるどころか評判をあげていたこともあってこれは見ないとな~と思っていました。

いやいや、これがなかなか秀作でした!

今回はサスペンスということもあり、後半のネタバレあらすじでは事の真相などの詳細なところもズバッと書いていこうと思っています。

前半はネタバレなしで本作の魅力を熱く語っていきたいと思います。

少し長くなりましたが、良ければお付き合いください。

作品情報

放送・話数

2020年 韓国tvN 全16話

演出・脚本・キャスト

演出:キム・チョルギュ

花よりも美しく(2004)
ファン・ジニ(2006)
優雅な女(2013)
空港へ行く道(2016)
シカゴ・タイプライター(2017)
Mother(2018)
悪の花(2020) 他

共同演出:ユン・ジュンホ

愛しのホロ(2020)(w/イ・サンヨプ) おそらく
悪の花(2020)

脚本:ユ・ジョンヒ

KBSドラマスペシャル 4作品ほど(2014・15)
裸の消防士(2017)
悪の花(2020) など

キャスト

イ・ジュンギ(ト・ヒョンス)
ムン・チェウォン(チャ・ジウォン)
チャン・ヘジン(ト・ヘス)
ソ・ヒョヌ(キム・ムジン)
キム・ジフン(ペク・ヒソン) 他

心の機微まで演出するキム・チョルギュ監督

登場人物の心の機微を、劇的ともいえるドラマの展開の中でとらえて離さない映像にされていく大大ベテランのキム・チョルギュ監督

「ファン・ジニ」や「空港に行く道」といった、シリアスで重い設定や展開を持つ脚本を、さらにさらに深い人間ドラマに仕上げられるため、私は監督作を視聴したときは常に引き込まれてきました。

今回、監督のクライムサスペンスは私は初でした。

だからこそ緊迫感と絶望感の上に描かれるヒューマンさがたまらないドラマとなっていたと太鼓判を押します。

冒頭あらすじ

かわいい幼稚園児の一人娘を育て、互いを尊重しつつ愛し合う夫婦ヒソンとジウォン。

だが、平穏な日々は、キム・ムジン記者がヒソンの工房に訪れたことで崩れ始めた。

記者ムジンはヒソンが当時騒がれたヨンジュ市連続殺人犯ト・ミンソクの息子で、彼自身が里長殺人の容疑者として指名手配されているト・ヒョンスだと気づいたためだった。

予告編2本を

まずはサスペンス部分をフィーチャーしたバージョンがこちら

過去の殺人事件に関係する、ある明らかになってはならない秘密を主人公が抱えている様子が分かります。

もう一本はメロ予告編

愛し合う幸せな夫婦。

互いを大切に思っていることは確かだけれど、夫は「愛」という感情は分からないという。

疑心が膨らんでしまうある事件が2人の関係を変化させていく予感がしますね。

悪の花 の魅力と個性

イ・ジュンギの本領が最大限発揮された作品「悪の花」

極限を耐えどん底を生き抜く役にとことん強いイ・ジュンギ

これまでも、大出世作となった映画「王の男」をはじめ、俳優としての地位を確立したドラマ「イルジメ」「犬とオオカミの時間」そして、さすがイ・ジュンギだと言われた「TWO WEEKS」など、

  • 生と死の狭間という絶体絶命の状況
  • 誰の助けも得られない孤独な戦い
  • 誰かを守るために耐え抜き目的に向かう

などといった究極を生き延びる主人公を演じて評価されてきました

体を張ったアクションを自らこなす主演俳優としてのイ・ジュンギの評価は高く、これまでも視聴率という客観的な数字がそれを証明してきました。

水中で溺れかけ、どろだらけになり、血みどろになりながらも生き抜くタフな迫力のあるキャラクターの活躍する作品はイ・ジュンギの本領が最大限発揮されると言えます。

時に、現実離れしたファンタジックなキャラクターですら、イ・ジュンギはそこにリアルな人間味を加味して見せてくれます。

「麗」を見た方なら、その意味が手に取るようにわかるかと思います。

本作「悪の花」は、イ・ジュンギのためのドラマか?もしやあて書きだったのか?とすら思うほど見事でした。

盛り盛りの設定を落とし込んだ見事な構成

主人公ヒョンスの境遇として

  • 父親が連続殺人犯
  • ヒョンス自身が生まれつき感情を持たない
  • 他人として十数年間逃亡生活を送っている
  • 妻にも秘密、その妻は刑事

これだけでもすでに設定はかなり盛り込まれていることがわかります。

しかも、ネタバレになるのでここでは挙げませんが、サスペンス・メロの部分でもよりドラマチックな設定が用意されています。

上記の設定を見ても、

  • 連続殺人鬼を父に持った青年の苦悩と愛を描いた「ここに来て抱きしめて」
  • 本当の自分を隠して不利な戦い生き抜く「イルジメ」
  • 「○○(シーズン1)」(のちほど語ります)

といった、衝撃的な設定で視聴者を引き付けた作品のエッセンスを1本のドラマに落とし込んだような構成となっています。

それゆえに、「悪の花」は脚本の力が凄まじいとも言えました。

演技・脚本・映像 三位一体 後半に行くほど惹きつけられる優秀作

冒頭から、いわば、ハマリ度3~3.5くらいの“面白さと魅力を感じる”ドラマとして楽しめていました。

それが、およそ10話くらいに差し掛かってから、ぐいぐい、ぐんぐんと面白くなっていくではありませんか

緊迫の展開と同時に、大切な人たちの想いが溢れてきてついつい涙させられることも。

キャストの迫真の演技と脚本の力、そして映像を含めた演出、三位一体となっていたと感じます。

演出のすごさで言えば、ラストの第16話。

ここは、これまでの15話とは映像のトーンが違っていたこともあり、この1話だけで1本の映画として成立するほどのクオリティーとなっていました。

悪の花 とは

自分自身として生きることを放棄するしかなかった男
自分自身と大切な人を取り戻すまでの過酷な物語

ハマリ度は

 4.5

冒頭は、刑事ドラマやサスペンスドラマらしい事件が描かれ、その中で、主人公夫婦であるヒソンとジウォンの築き上げた現在の関係性の中に生まれた疑念の気配を匂わせられるところから静かに引き込まれていきます。

前半に描かれたその事件が終盤で見事に回収されていくストーリーとなっているなど、全編通してくみ上げられた構成にはっとする面白さがありました。

しかも、この盛り盛りの設定のドラマがヒューマンなドラマとしての魅力にもあふれています。

演出と俳優さん方の鬼気迫る演技の賜物だったと思います。

おススメです!!!

ここから後半はネタバレがあります
ご注意ください。

ネタバレあらすじ:二つの事件の核と重なった偶然

物語の核となった事件とは

本作で描かれる事件はこの2つ

  1. ミンソクの最後の被害者とされるが遺体が見つからないチョン・ミスクの行方
  2. ヒョンスが犯人とされ指名手配されている里長殺人事件

①チョン・ミスク拉致事件

ヒョンスの父であるミンソクが自殺でこの世を去りすでに20年ちかく経っているため、遺体のありかを見つけるのは不可能だとされていました。

ミンソクには共犯がいたことがミスクさん失踪時の明らかな証拠としてあったことから、息子ヒョンスが共犯者であると皆が思っていました

ドラマの最初、ヒョンスが巻き込まれた事件は、ミスクさんの遺体でもいいから取り戻したいと考えた夫によるヒョンスおびき出し作戦でした。

②里長殺人事件

父ミンソク亡きあと、里長が刺殺され、その犯人は高校生だったヒョンスであるという証拠が残されていたことが容疑者となった理由でした。

しかしヒョンスは姿を消し、逮捕されることなく20年近く経ったという状況でした。

つまり、ヒョンスは2つの未解決事件の容疑者とされていました。

ヒョンスは本当に犯人だったのか

②里長殺人事件の真相から

親亡きあと、守ってくれる人も公的な機関もない中、執拗に繰り返されるお祓いの儀式から弟を守りたくて里長にお願いに行ったヘスは襲われかけます。

身を守るために刃物を持った結果の過失致死でした。

ヒョンスは犯人と判断されるよう偽装し逃亡。

姉ヘスを守るためにヒョンスが固い決意で自ら選んだ容疑者の道でした。

①チョン・ミスク失踪事件の真相

これは後々見えてくる、連続殺人犯ト・ミンソクと同じ殺人衝動を抱えた青年ペク・ヒソンによる共犯関係によるものでした。

ミスクさんを目撃されてしまったヒソンの不注意を咎めたミンソクと仲間割れをした殺人犯たち。

ヒソンはミンソクを襲い、殺害後自殺に見せかけて遺棄。

その間、逃げたミスクさんは、無事助かることなく、人身売買の手引きをした男に再び捕まり精神病棟で監禁され続けていました。

ミスクさん失踪事件の共犯がペク・ヒソンであったことを知っていたのはチョン・ミスクさんただ一人という状況でした。

つまり、ヒョンスはどちらの事件にもその手を汚していない犯人ではない人でした。

無実を証明する方法も、いや、無実を証明するつもりもなく、静かに別人として生きることにすべてをかけていた人生でした。

ヒョンスが巡り合ってしまった究極の偶然

偶然①ヒョンスを轢いたのがヒソンだった事

逃亡生活を送り数年目だったヒョンスが同僚に騙され殺害されかけた時、偶然にもヒョンスを車でひき、家に連れ帰ったのがヒソンでした。

息子が連続殺人犯であると知って動転していた母親がヒソンを刺し、ヒソンは意識不明のまま14年眠っていた。

その間、ヒョンスがヒソンとして生きていた時間は残酷な偶然でもありつつ、事件の真相の真っただ中にいたことになりました

偶然②ヒョンスを心から信じ愛してくれる人との出会い

出会ってから結婚生活を続けていた二人の14年間があったことで、ヒョンスが殺人を犯せる人間なのかどうかという心証がジウォンの中で積み上がっていたことが最も幸運な偶然となりました。

結末は

ミスクさんは保護され、ヒソンは逮捕の場で警官から拳銃を奪い発砲したためジウォンの後輩刑事ホジュンさんによって射殺されました。

ヒソンが発砲した弾はヒョンスの頭部を傷つけ、ヒョンスはヒソンとして生きた時間すべての記憶を失ってしまいました

公判では、姉ヘスの里長殺人の罪は正当防衛による過失致死であったことが認められ、またミスクさん拉致・殺害容疑も、ミスクさん本人の証言でヒョンスが犯人でないことが証明され自由の身に。

ヒョンスはジウォンと共にすごした記憶にない感情に戸惑いながら、彼女が自分にとって尊い人であることに徐々に気づきます

ヒョンスが自由に生きられることをただ願っていたジウォンの愛情はやはり伝わっていく。

感想

偶然の出来事と幸運と不幸の背中合わせだった14年

過酷すぎる子ども時代に、助けてくれる大人がいなかった現実を受け止めて生きてきた主人公ヒョンス。

彼や彼の姉ヘスの孤独で迷路のような人生は、偶然の出来事と、幸運のような不幸との背中合わせでなんとか十数年を維持し耐え抜いてきたという状況でした。

大切な人を守るために本当のことを言えない苦しさや、疑心よりも信じることを求めあう関係などといった葛藤の中から生まれる感情の軋轢の表現

これらが逐一細かに描きこまれていて引き込まれました。

殺人鬼を家族に持ってしまった親と子の生きざま

「悪の花」は、連続殺人犯の父親を持った主人公ヒョンスと、連続殺人犯の息子を持ってしまったペク・ヒソンの両親とが、かりそめの親子として14年生きてきています

息子の罪、そして息子を刺した母親の罪を隠すためというヒソンの両親の狙いと、自分は逃亡犯であることを隠したいヒョンスの身分洗濯という利害が一致しての親子契約でした。

罪を隠蔽したかった殺人鬼の親と、無実の罪を明かせず捕まるしかない未来を避けたかった殺人鬼の息子。

何を守りたいのかで、人生の目的がまるで違っていたかりそめの親子の姿は皮肉でした

大多数の人と違っても悪人ではない

生まれつき感情というものを理解できないヒョンスは、理論的に学習することによってコミュニケーションをとる努力を続けていました。

多くの人と同じリアクションが取れないヒョンスを気味悪がったり、それを利用して大人も子供も彼をいじめ搾取する対象とした残酷な者たち。

本質を知ろうとせず、安易に少数派を差別する理不尽さに流される人々を描きつつ、人と同じに生きられないつらさを抱えるヒョンスの乗り越えていくものを目に焼き付けることにもなりました。

問題を先送りすることの功罪

14年という時間を他人として過ごせたことで、古い事件を紐解くきっかけが生まれ、困難な冤罪を晴らすチャンスが巡ってきたのがヒョンス

一方で、息をしているだけの息子に満足していたヒソンの両親にとっては、目覚めた殺人鬼の息子ヒソンは爆弾でしかありませんでした。

殺人を止めない息子の罪を隠蔽することで一日一日と家族の平穏を伸ばすことに執着していた両親の罪は重かった、そういうことを語る脚本でもありました。

ここは、あの名作クライムサスペンス「ボイス1」の殺人鬼を息子に持ったグループ会長のエピソードがよぎりました。

息子を守るために罪を隠蔽し、司法を金と権力で丸め込み一日一日をやり過ごした会長は、ついにすべてが明るみになって手が付けられないと悟った時、自殺という方法で逃げました。

本作では、そんなズルは許さないとばかりに、愛という名のもとに家族の保身を図ってきた殺人鬼の親は対価を払わされていました

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OSTを

サスペンスドラマである本作の気配を濃厚に感じさせるテーマ曲がこれ

DOKO「Psyco」

不穏さの中にも、真実を求めて進んでいく物語のアクティブなイメージまで感じられますね

それから忘れてはならないのがこの曲!

実力派ボーカルグループだった元4MENのシン・ヨンジェ君の秀逸なボーカルが光るこの曲です

シン・ヨンジェ(2F)「Feel You」

悲しさやくやしさ、出口のない絶望感にさなまれるシーンで流れました。

抑えた情感が「悪の花」の世界観を見事に表していました

さいごに

今回は見ごたえのあるサスペンスだったということで、少し熱く語ってしまいました。

最後までお付き合いいただきありがとうございました。

キム・チョルギュ監督&イ・ジュンギ&ムン・チェウォンという適材適所が二乗以上のケミストリーで爆発したドラマだったと感じています。

サスペンス好きは唸るはず。

ロマンスが好きな方も、究極の愛の形を突き付けられるはずです。

機会があればぜひみていただきたいです!

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