2016年公開のパク・チャヌク監督作の韓国映画「お嬢さん<劇場公開版>」を見ました。
韓国内でのヒットというだけでなく、海外での評価が高かった作品ということで機会があれば見ようと思っていました。
主演はキム・ミニ、キム・テリそしてハ・ジョンウ。
なかなか大人向けでしたし、日本統治下時代が舞台だったので日本を美しくとらえてはいないという部分もありましたが全体的に独特のエネルギーに満ち溢れた作品だったと言えます。
本作の個性や描かれた要素などを前半ネタバレなしで少し語っていきたいと思います。
作品情報
公開:2016年 韓国
原作:サラ・ウォーターズ「荊の城」
監督・脚本:パク・チャヌク
オールド・ボーイ(2003)
親切なクムジャさん(2005)
サイボーグでも大丈夫(2006)
渇き(2009)
スノーピアサー(2014/製作) 他
キャスト:
キム・ミニ(秀子お嬢さま)
キム・テリ(スッキ 珠子)
ハ・ジョンウ(偽伯爵)
チョ・ジヌン(上月)
パク・チャヌク監督作品は「オールド・ボーイ」と「サイボーグでも大丈夫」の2作品しか見ていないのですが「オールド・ボーイ」の持つ狂気を感じる熱量が本作と共通していたと感じました。
冒頭あらすじ
スッキは詐欺師率いる裏稼業の一家で育った。
今回のヤマは日本人になろうとして日本人没落貴族と結婚した上月という男の財産を奪う計画だった。
上月は日本人妻を亡くし、財産を相続したその姪秀子と婚約していた。
詐欺師は伯爵になりすまし上月に近づき、秀子をものにして財産をいただく計画を立てていた。
スッキはスムーズに事を運ぶために秀子の侍女として送り込まれたのだった。
予告編
ここで、予告編をご紹介します。
この予告編、プロットがすごく良く伝わってきます。
個性や魅力
海外でより評価された美術
本作を見ていると、富豪のお邸や主人が愛用している趣味の朗読部屋の作り込みがなかなか凝っていることに気づきます。
大正時代の和の雰囲気を感じられる風でもありがながらちょっと違う感じが本作の淫靡な世界観とも重ねてありました。
アブノーマルなエロティシズム
本作ではアブノーマルなエロティシズムに傾倒する上月という男とその趣味を分かち合う男たちが登場します。
これが主人公たちのアイデンティティーや人生に大いに関わってきます。
日本語で朗読される具体的な性描写や露骨な挿絵の入った本を見せるというシーンもあったのですが、そこで使われていたのが葛飾北斎の春画だったりします。
北斎の浮世絵のクオリティーは美術的価値のあるアートゆえに存在感は抜群で、それをエログロな世界観を強化するモチーフとして使われていました。
私としては江戸時代のおおらかな性風俗が垣間見られると捉えているのですが、ちょっと過激に曲解されているようでちょっと待って…となりましたが。
狂気の熱量
本作ではどこか狂気を感じる演出がなされていました。
アブノーマルな朗読会のシーンやそれを開催する上月、秀子お嬢様の心を奪おうと立ち回る偽伯爵など。
狂気の熱量が高いと感じれば感じるほど、本作の魅力にからめとられている証拠だったような気がします。
三部仕立ての反転劇
上月を騙し、お嬢様の心を奪うという目的で作戦を進める偽伯爵の詐欺師とスッキ。
けれど、どこまでが嘘で、何が真実なのかが分からなくなってきます。
目線を変えて描く一部と二部、その結果となる第三部というように、工夫されたサスペンス形式の脚本も面白みがありました。
「お嬢さん」 とは
何が真実なのかわからない
淫靡な世界観の中で描かれるエロティックサスペンス
ハマり度
3
なんというか、すごいエネルギー(狂気の熱量の高さ)に引っ張られて最後までぐいぐいと惹きつけられて見ました。
人で言うと、「めちゃくちゃ目ヂカラのある人」みたいな映画でした。(分かってもらえるでしょうか(;^_^A)
このあと、後半のネタバレのところで少し触れますが、本作はエロティックサスペンスというくくりだけでは語れないあるテーマでも描かれていました。
視聴後の何とも言えないスッキリ感(?)のような余韻はここから来ていたんじゃないかなと感じています。
それから、登場人物たちが日本語で話すシーンがなかなか多いのですが、かなり聞き取りやすかったです。
俳優さん方ずいぶん頑張られていたんじゃないでしょうか。
ここからはネタバレがあります
ご注意ください
ネタバレあらすじ・感想
セクシュアリティ―と純愛と
個性派女優キム・ミニと正統派タイプのキム・テリ。
二人が演じたお嬢様秀子と侍女に身をやつしたスッキの関係は、本人たちも気づかぬうちに唯一無二のものとなっていきます。
このままだと一生男の欲望を満たす囚われの身だった秀子と、使い捨ての駒にされるところだったスッキ。
秀子は、偽伯爵に嫉妬し自分を守ろうとするスッキの思いに気づき、自らもスッキを愛し始めていました。
エログロな世界観の中で光ったロマンス。
二人は自身のセクシャリティーを見出す幸運もつかんだと言えます。
利用し、屈辱の中生きることを強いる男たちから逃げた二人。
愛しあう二人の思いが勝利した痛快な結末でした。
さいごに
個性派女優キム・ミニを配した理由は見ているとどんどん見えてきます。
セクシュアルなシーンや難しい演技が要求されるシーンも強い存在感を保ったまま演じきるキム・ミニ。
それに応えるハ・ジョンウもですが、本作ではまさにキム・テリが出色でした!
エログロさやアブノーマルさがどうしても目立ってしまいますが、二人を縛っていた世界から脱出する解放感や、敵に一泡吹かせてやった仇討ちの達成感もありました。
とにかく、この「お嬢さん」という映画を作り上げただけでもすごいな~と感じています。
エネルギーを感じる、そして印象に残る映画でした。