2014-15年韓国ケーブル局Jtbc放送の「イニョプの道」(原題:下女たち)を2016年に見ました。
当時韓国内でヒットドラマを生み始めた躍進めざましいケーブル局の中で、Jtbcは一度視聴率の伸び悩みからドラマ制作を見直し満を持して製作されたのが本作「イニョプの道」(下女たち)。
そして題材も含め注目の中放送されたドラマでした。
今回も本作について2016年に見た時の感想を絡めながら主観的に語っていきたいと思います。
前半はネタバレなしでいきます。
作品情報
放送
2015年 韓国Jtbc 全20話
演出・脚本・キャスト
演出:チョ・ヒョンタク
危機一髪!プンニョンマンション(2010)
親愛なるものへ(2012)
君を守る恋(2013)
イニョプの道(2015)
魔女宝鑑(2016)
SKYキャッスル(2018)他
脚本:チョ・ヒョンギョン
イニョプの道(2015)
不滅の恋人(2018)
キャスト
チョン・ユミ(クク・イニョプ)
オ・ジホ(ムミョン)
キム・ドンウク(キム・ウンギ)
イ・シア(ホ・ユノク) 他
冒頭あらすじ
両班の娘イニョプは李氏朝鮮建国の功臣クク・ユの一人娘。
誇り高く美しいイニョプは妥協というものを知らず、許嫁の戸曹判書の息子キム・ウンギと思いあう仲でもあり彼女はすべてを手にしていた。
しかし、父が政争の中で謀反の罪を着せられ失脚したことでイニョプは奴婢の道を歩まざるを得なくなった。
予告編
ここで、2015年の衛星劇場の予告動画をご紹介します。
ネタバレなしの予告編としてちょうどいいのがこれだったので選びましたが、ラストの放送日時などは2015年当時のものですのでご注意ください。
2019年現在衛星劇場での放送予定はありません。
登場人物の紹介と、ヒロインイニョプの人生が激変することとなる冒頭の様子が分かります。
「すべてを捨てて生きる」。
イニョプが一度は乗り越えなければならない過酷な道の始まりを感じさせます。
イニョプの道の個性と魅力
奴婢のリアルを詳細に描く
朝鮮時代には、全人口の約3分の1が奴隷身分だったそうです。
下女下男である両班の所有財産という扱いの奴婢たちの日々の生活や物事の捉え方、そして主人たちとの関係性など、タブーを出来る限り排除せずに描いてあることも初回から引き込まれたポイントでした。
映画音楽のような上質感
ドラマの音楽や曲はもちろん大好きなのですが、本作ではオーケストラによる音楽が印象的でした。
時代劇という世界観やイニョプのたどる道を見ていると、こだわりの上質なサウンドが際立つと感じることが多かったです。
描かれた時代は李氏朝鮮初期
時代が大きく動く時、動いた後というのは政情が安定していないゆえに、これまでも様々なドラマが生まれてきました。
本作はまさに、約470年続いた高麗を倒し建国された李氏朝鮮初期が舞台。
高麗の王族や貴族階級だった者たちが再興を目指して密かに動いているというきな臭い背景が物語を動かしていきました。
誇り高いイニョプの生きざま
ヒロインは誇り高く正しい道を歩む方法を見つければ一直線の女性でした。
まさにヒロインたる素質。
唯一の肉親である父親を無実の謀反の罪で失い自らも奴婢となり人生が一変しても彼女は道を見つけて受け入れて歩みました。
イニョプを愛する男性二人
もともとの許嫁だった良家の儒生ウンギと奴婢になってから出会ったムミョン。
詳細は後ほど語りますが、彼らは本当の自分の立場や生まれを知って戸惑い苦悩するしかない時代の奔流のひずみに絡め取られた男たちでした。
どんな真実があろうとも、自ら進むべき道をイニョプをいかに守るかという一点で動く彼らの純粋な思いもみどころです。
イニョプの道とは
李氏朝鮮建国直後の混乱期
下女たちの生活を鮮明に描く個性が光る
ハマリ度は
3.5
最初は原題である「下女たち」がぴったりだったのにと思っていたのですが、見終わってみるとまさにイニョプはイニョプが進むべき道を選び歩み続けるという内容にピッタリの邦題だったと感じます。
政情の不安定さという背景から物語がドラスティックに展開していく時代劇らしいドラマではあったのですが、人が“生きる”という力強さを感じられる作品でした。
ちなみに華やかなロマンスは期待しないほうがよいです。
ここからはネタバレがあります
ご注意ください
ネタバレあらすじ
イニョプが奴婢になった状況
イニョプのお父さんクク・ユは、李氏朝鮮建国時に功をなした忠臣として有名でした。
まだまだ新しい国の安定を図るため、旧王朝である高麗再建を狙う勢力を警戒していたお父さんは、謀反勢力に使用人を潜入させ調査を続けていました。
しかし、この謀反勢力と接触したとして謀反の罪を着せられお家とり潰しとなり、イニョプは身分をはく奪され奴隷身分となったのでした。
没落した貴族の娘イニョプを見つめる二人の男
一人はイニョプが奴婢となっても思い続けている許婚だった戸曹判書の息子ウンギ。
ウンギは兵曹判書の娘ユノクの強い要望が通り、ユノクの婿となっても思い続けていました。
イニョプを目の敵にしていたユノクはイニョプを下女とし、ウンギを夫にして満足のようでしたがウンギの心までは奪えない地獄が待っていました。
もう一人はユノクの家の下男ムミョン。
彼こそが高麗王朝復興を狙う組織マンウォル党の人間でした。
ウンギとムミョンが知った自らの宿命
ウンギの血筋
ウンギは高官の息子でありながら、すべてを捨ててイニョプと一緒になりたいと切に願っていました。
しかし、ウンギが知ったのは自分こそが高麗王朝の王族の末裔であった真実でした。
父は高麗王朝復興の悲願を懸けて王を討とうと機会を窺っていたマンウォル党の党首でした。
ムミョンの血筋
一方、ムミョンは高麗王朝復興勢力の一員として生きてきたけれど、実は現王の子であることが育ての母から伝えられました。
スパイとして王妃の侍女として宮中に上がり王の子を身ごもった母は、王であるイ・バンウォンを愛してしまっていたことから裏切り者として党に処刑されたそうです。
党は残酷にもムミョンを父親殺害の刺客として育てていたわけでした。
王と太上王の不仲を利用したマンウォル党
情勢を有利に図るため、ウンギはこれまでマンウォル党が莫大な資金援助を続けてきた王の父太上王に接近していました。
ウンギの狙いは、イニョプの父クク・ユさんが太上王の密命を受けて逆賊を調査していただけで彼が逆賊ではなかったという証でした。
またマンウォル党は、ムミョンをたきつけて王権を奪わせることで李氏朝鮮を転覆させることも目論んでいました。
しかし父も祖父も裏切るつもりはなかったムミョンはウンギや戸曹判書に利用されると見せかけて彼なりに立ち回り、ついには戸曹判書と兵曹判書を謀反の罪で断罪させることに成功、その一族は処刑・流刑、家族は奴婢とされました。
こうしてウンギ・ムミョンの働きで、イニョプの家門は回復されました。
結末
ムミョンは家門の回復を成し遂げたイニョプと一生を共にする覚悟でいました。
けれど、ムミョンは今や謀反勢力を一掃することに尽力した王子、一方イニョプは自分が両班に戻ったとはいえ両親がいないという現実がありました。
社会的に釣り合わないとされる自分を想い続けるムミョンを守るためイニョプは姿を消しました。
年が明けて4月。
最後の家族のように大事にしていた侍女のお墓で再会したイニョプとムミョン。
自分の歩むべき道を知り受け入れてゆく強いイニョプは王様の思いがかかるムミョンを受け入れることはこれからもないかもしれません。
感想
イニョプの身分が回復したらもしかしてムミョンと結ばれるんじゃ?と期待したんですが現実的に考えたらそれは無理そうです。
そもそもイニョプは自分のために決断はしない女性なので、ムミョンの立場を優先すれば、彼を受け入れるかどうかは明らかというところ。
それでも、あの後、二人で誰も知らないところに行って結ばれてほしいな、という淡い期待だけは抱けるエンディングでした。
誇り高く生真面目なイニョプは社交性が高いとは言えなかったので苦労することは目に見えていました。
それでも、どんな場合でもイニョプは現状において正しい選択をするという良き両班の夫人としての気概を感じさせるところがあって私は好きでした。
ただ、ムミョンらの助けがないと無事生き延びることはできなかっただろうし誇り高く生き続けるのも難しかっただろうなとは思います。ドラマやね。
イニョプが捨てなかった誇りは彼らの心を強く惹きつける魅力があったんでしょうね。
どちらかといえば政情やお家復興という悲願を目的としたヒロインの物語で華やかなロマンスは期待できませんでした。
ただイニョプを生かし、守り抜こうとした男たちの純情を感じました。
これって、「ミスター・サンシャイン」に通じるところあるな~とふと感じたりして。
イニョプに好感持てないと物語を楽しみづらいかもしれませんが、私は好きでしたよ!