映画

彼らが本気で編むときは、 視聴感想 悲しさを編んで払い愛されて強くなる

彼らが本気で編むときは

2017年の日本映画「彼らが本気で編むときは、」を見ました。

子どもと大人が家族となっていくような関わりを描くヒューマンな作品が見たい!と思っていた時にNetflixで目に留まったのが、「かもめ食堂」の萩上直子監督の本作。

今年2020年は、私にとって実写のアジアBLドラマとの出会いをきっかけに、性的な指向や性自認の多様性について多くを見て読んで考えることとなった年でした。 →BLドラマはびっと

本作の主人公のひとりはトランスジェンダーの主人公”リンコ”。

彼女の生き方や、彼女と出会ったことで人生をより強く生きていける信頼と安心という愛を得た一人の少女との関係に涙しながら見終わりました

短い感想ですが、少し語り残しておこうと思います。

今回は最初からネタバレありとなっていますのでご注意ください。

作品情報

制作:2017年 日本

監督・脚本・キャスト

監督・脚本:萩上直子

かもめ食堂(2005)
めがね(2007)
トイレット(2010)
レンタネコ(2011)
彼らが本気で編むときは、(2016)
川っぺりムコリッタ(2021) 他

キャスト

生田斗真(リンコ)
柿原りんか(トモ)
桐谷健太(マキオ)
ミムラ(トモの母) 他

冒頭あらすじ

11歳のトモは、お母さんと二人暮らし。

自分のことはだいたいなんでもできるしっかり者だけれど、お母さんが男性と恋をし、帰ってこなくなる時はとてもつらかった。

こんな時、トモは叔父のマキオのもとに身を寄せていた。

ただ今回はいつもと違っていた。

マキオは大切な女性というリンコさんと一緒に暮らしていたこと。そして彼女は、元は男の人だったことでした。

予告編

リンコを演じた生田君の美しさがまず目に飛び込んできますよね。

リンコは本当に温かくて心が美しい人。

マキオの言葉は、彼女との関係を見事に語っています。

彼らが本気で編むときは、 が描いたもの

理解がまるで進んでいない日本の現状

トランスジェンダーのリンコに対するトモの反応は「なじみがない」戸惑い

トモの友だちカイのお母さんの反応は「普通じゃない」という拒絶でした。

なじみがないということは、関わりがなく知らないということですが、実際のところ、日本の地方(むしろ田舎)に住んでいる私もトランスジェンダーと明かす方と関わったことはなく、いらっしゃるかどうかも知らないという状況です。

もしいらしたとしても、少数であるがゆえに注目され、なじみがないゆえにあらぬ無理解な目にあうことを怖れ明かしにくいかもしれません。

萩上監督は、欧米と日本での認識の差の大きさを知って本作を書かれたそうです。

日本はつまり、明かしにくいがために見えず、見えないから知らないという「遅れている」状況。

トモの学校のいじめのような嘲笑とイジリが、なじみがない人・ことに対する大人社会の縮図として描かれ、明かしにくい現状を示しているように感じました。

に対しても批判は無用、嘲笑・差別などもってのほかであることを、映画は、リンコと彼女を愛する人との物語を描くことで、ただあなたとは違うだけと伝えています。

傷つき、自分の存在すら否定してしまう悲しさ

セクシャルマイノリティーとされる方々は、日本でも12~3人に1人ほどの割合でおられるそうです

調査の場所や対象によっても差は出てしまうそうですが、複数の調査を見てもこのくらいの数字前後になるようです。

実は米英よりも高い割合です。

トモの友だちカイ君もそのひとりでした。

好きになってしまい胸が苦しくなる相手は男子の先輩。

映画の中では、彼の最も身近な存在であるお母さんが、マジョリティーと違うことを理由に “普通じゃない”人として拒絶し悪のように振舞います

自分の意思ではどうしようもないことに絶望するカイ君は自分の存在自体を否定してしまうんです

あっけらかんと、「そりゃ死にたくなるね」と言ってくれるトモに苦笑するカイ。

心は女の子だったリンコを抱きしめ、女の子になることを手助けしたリンコの母との対比がくっきりと描かれています。

女性であることと母親であること

産んだから母親だという絶対的な自信を持つトモの母。

母親である前に女なんだと声高に言い放ち、子どもを産めないリンコに向かってあんたなんか親になれないと侮辱したのもトモの母。

産まなくても女性だし、産んでいなくても母親になれることがトモには十分伝わっていたリンコさんの存在。

リンコさんは、子どもを守ることが人として最優先だと断言しています

11歳のトモに、コンビニおにぎりとカップみそ汁だけを与え続け、女である以上恋ぐらいしてもいいだろうと子どもを一人残して家を空けていたトモの母。

女の体で生まれたことを前提にしてリンコを責め侮辱する姿に、人としての美しさは心の中からしか生まれず、子を守れない親の存在理由の薄さを突き付けるシーンとなっていました

彼らが本気で編むときは、 とは

辛さ悲しさを呑んで編み込み愛されて強くなる
ひとときの時間が生んだもう一人の心の母

ハマリ度は

 4

誰もが誰かに愛される大切な人

リンコはお母さんからとても愛され大事にされている。

そしてトモは、リンコさんから本当に愛されていたし、これからもずっと大事にされる

目の前にいる人は、誰かにとって大切な人。

傷つけたりはしてはいけない。

ただ、誰からも大切にされていないと感じて、愛して欲しい欲しいとさまよう人もいる。

でもお母さんもトモから愛されている人。

彼らが本気で編んだものとは

悲しさ・くやしさ・怒りなどといった、他人からかけられる心無い言葉や態度を受けた辛さによってこみ上げてくる感情を呑みこみ、心を落ち着かせるリンコの煩悩除去方法が編み物でした

また、一目一目編み続ける最終目的としていたのが、細長い綿入りのぬいぐるみを108作り供養すること。

リンコ曰く、捨てた男根を形作ったぬいぐるみを焚き上げた後には、戸籍を女性にしマキオと結婚するつもりでもありました。

リンコと共に、必死に編んだトモとマキオ。

女性として結婚すれば、トモを養子として迎えられる可能性が高まるというはっきりした理由も生まれていたからでもありました。

だから彼らは本気で編みました。

今は、養子の話は叶わなかった。でもリンコはずっとトモを母親のように愛し続ける。

3人で編んだ時の思いというものはトモに刻まれたし、リンコがいないときはあのにせものの毛糸のおっぱいがそばにいてくれます。

触れる必要がないほどに物語に集中できた主演陣の演技

物腰やしぐさ、表情。

リンコの心や思いが伝わってくる話し方や視線。

生田君が、私に自然にリンコという人物を知り物語に集中できるよう導いてくれました。

トモの斜に構えた強がりも、子どもらしいさみしさも、そして信頼できる人への愛情も見えた。

桐谷君はとてもニュートラルな存在でありながら、リンコさんぞっこんのマキオの日常を見せてくれる。

敢えて触れる必要がないほど「そこにいる人たち」のようでした。

すばらしいですね。

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