Netflix映画「ザ・ランドロマット~パナマ文書流出~」視聴感想

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ザ・ランドロマット~パナマ文書流出~

2019年Netflixオリジナル映画、スティーブン・ソダーバーグ監督の「ザ・ランドロマット~パナマ文書流出~」を見ました。

メリル・ストリープ、ゲイリー・オールドマン、アントニオ・バンデラス、シャロン・ストーンなどなどの出演陣の豪華さに目を奪われ、スティーブン・ソダーバーグ監督作と聞いてこれは是非に見ておこうと思っての視聴でした。

独特のテンポと演出で冒頭からさらっと引き込まれつつ、本作がつきつける問題を視聴後しみじみと考えこまされた本作について、私の感じたところを語っていこうと思います。

目次

作品情報

配信

Netflix 2019年

監督:スティーブン・ソダーバーグ

エリンブロコビッチ(2000)
トラフィック(2000)
オーシャンズシリーズ
チェシリーズ(2003)
ハイ・フライング・バード(2018)他

脚本:スコット Z.バーンズ

ボーン・アルティメイタム(2007)
インフォーマント(2009)
コンテイジョン(2011)
007ノータイム・トゥ・ダイ(2020予定)他

キャスト

メリル・ストリープ(エレン・マーティン)
ゲイリー・オールドマン(ユルゲン・モサック)
アントニア・バンデラス(ラモン・フォンセカ)
ジェフリー・ライト
シャロン・ストーン 他

冒頭あらすじ・予告

老境に達し夫婦で仲睦まじく暮らしていたエレンは、遊覧船転覆事故で夫を亡くした。

だが船会社が入っていた保険は保険会社の移動や買収などで支払われることはなかった。

また契約を済ませていたマンションを倍の金額を払うという別の客に奪われたことから調べを進めたエレンは、どちらもタックスヘイブンと言われる国に存在する弁護士事務所「モサック・フォンセカ」にたどり着いたのだが…

予告編

ここでNetflixの予告編をご紹介します。

コメディタッチで描かれる軽快なイメージの映画であることが分かりますね。

キャスト豪華!

でも内容は笑えないというシニカルなバランスが絶妙です。

 ザ・ランドロマット~パナマ文書流出~の個性と見どころ

ストーリーはあのパナマ文書流出事件

世界的な著名人や政治家による資産隠し(租税回避)が明るみになり大騒動となった事件とその影響をコミカルな雰囲気と斬新な演出で見せる本作。

税優遇のあるパナマに籍を置き、富裕層の資産を結果的に隠す役割を果たしていた法律事務所“モサック・フォンセカ”。

そこの事務所が行ってきた数十年間の取引のデータが流出し、顧客が明らかとなって騒然となりました。

この事務所の弁護士役をゲイリー・オールドマンとアントニオ・バンデラスが演じていて、食えない感じとシュールさが印象に残ります。

システム(制度)の問題を突く

スティーブン・ソダーバーグ監督のNetflix映画「ハイ・フランイグ・バード」を過去に見たのですが、本作と共通するテーマが本作のラストで明確になっていました。

それはシステム(制度)の問題。

「ハイ・フライング~」ではNBAという巨大スポーツビジネスにおけるシステムに関するものだったのですが、本作は2016年に富裕層や著名政治家たちの資産隠しが行われていた金融取引の内部文書が告発されるまでの数十年間に行われていたことで見えてきた、金融システムや法律を含むシステムの抱える問題を描くものでした。

流出事件そのものが描かれているわけではない

本作では、パナマ文書流出をきっかけに明るみになったいくつかのケースを章ごとに描く感じになっていました

ショートエピソード的に次々と描かれていき、中身が空っぽのペーパーカンパニーをタックスヘイブンに置くやり方で会社の価値もサービスの価値もただの空虚な概念でしかない怖さを描いていく感じでした。

システムやお約束を疑ってみないかと問う

法律などでも抜け穴というグレーゾーンが実際には存在し、そこを狡猾に利用する者が現れてしまう。

その先に不特定多数の被害を受ける人がいたとしても、たとえ責任を取る者がいなくても成立してしまう現在のシステムに警鐘を鳴らすメッセージを感じました。

ラスト、映画=映像のお約束そのものを覆して見せながら、

「あなたが見ているものが本当は何なのか考えてみる方がいい」

と感じさせる演出が余韻に残ります。

ザ・ランドロマット~パナマ文書流出~とは

金融・法律を知り尽くしたものたちによる合法ビジネスと被害
文書流出事件を機にシステムの実態に目を向けろと警鐘を鳴らす

ハマリ度

3.5

ここからはネタバレがあります
ご注意ください

ネタバレ感想

システムを悪用する輩が存在する

巧妙な手口に見えて、モサック・フォンセカが行っていた取引の根本部分はペーパーカンパニーを駆使して行うシンプルなもののようでした。

ただ、人が存在しないペーパーカンパニーを駆使したやり方ゆえに、その会社の先やもっと先にいる生身の人間が被害を受けた時、責任を取る人がいないという現実問題が存在していました。

それ以外にも、ここに依頼し会社を設立していた者たちの目的はさまざまで、中には怪しい金の資金洗浄(まさにランドロマット!)や会社を使った資産価値の操作など詐欺まがいのものも。

もちろん、ただの仲介業者であるモサック・フォンセカ自体は違法ではなく責任を取ることもない。(やり方を指南したことが証明されたりしたらだめですが)

自分だけでも損したくない

この内部文書の流出で問題となったのはもちろん資産隠し・租税回避とそれをしていた人たちでした。

「問題を正したり変えるよりも自分が利用すればいい、柔和な人々を救うよりも自分を救うのが楽と思ったモサック・フォンセカの弁護士」のような人がやはり出てきます。

違法ではないけれど被害者は出る、そういうグレーゾーンの部分で“合法な部分で得をしないと損と考える人がいる”のは想像に難くないところです。

それ以上に、現在の金融も人が作ったシステムやルールも私たちが「そういうもの」として受け入れているだけで実は実体のないものである怖さにふと気づかされます。

さいごに

劇中被害者の一人として鑑賞者である私たちを問題の中心部へと導く役割をしていたメリル・ストリープがラストで語った言葉が印象的でした。

“民主主義の抑制と均衡が崩れた証”

“政治的ななれ合いのサイクルが定着”

私たちは誰かが作り出来上げたシステムの中でこれが最善と考えて生きていますが、時代と共にシステムを知り尽くした人たちが自分たちだけの都合のよいように利用している可能性が明るみになったといえますよね。

搾取されていないか、システムの奴隷にされていないか?ちょっと考えてみ?と言われているように感じました。

日本の政治家も利用していた租税回避。

グローバルなシステムの抜け穴を自ら利用して自国に税金を納めていなかったとは…

では日本のシステムもどうなんだろうか。

スティーブン・ソダーバーグ監督の映画は考えさせられてしまいます。

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