2019年12月、Netflixで配信された映画「マリッジ・ストーリー」を見ました。
先に劇場公開されていたのですがすでに絶賛の嵐で、早くも諸々の賞を獲得し、アカデミー賞に6部門ノミネートされるなど評価の高い作品となりました。
ある夫婦が離婚に臨んだ姿を描いた本作について私の感じたところを、ちょこっとだけ語っていきたいと思います。
ネタバレを含んでいますので、望まれない方はご注意ください。
作品情報
監督・脚本:ノア・バームバック
ヤング・アダルト・ニューヨーク(2014)
マイヤーウィッツ家の人々(2017)
マリッジ・ストーリー(2019) 他
キャスト
アダム・ドライバー(チャーリー)
スカーレット・ヨハンソン(ニコール)
Azhy Robertson(ヘンリー)
ローラ・ダーン(ノラ)他
予告編
Netflixの予告編をここでご紹介します。
日常のリアル感、突然押し寄せる”離婚”。
状況に思考が追い付かないチャーリーの様子、自分の人生を生きられないと感じていたニコール、そして二人にアドバイスをくれる弁護士たち。
繊細な部分、滑稽な部分を含めて描かれてゆく物語であることが分かりますね。
マリッジ・ストーリーが描いたもの
日常の中に確実に存在した愛と幸せ
お互いのどういったところが長所だと感じていたか、日常の中に根付いていた当たり前の幸せ感や愛情が夫婦関係の基盤となる部分だったりします。
子どもと過ごす日々、子どもに見せるパートナーの表情、それらがお互いへの愛情や日々の幸せをより高めていた様子が冒頭で語られます。
二人が積み上げてきた日常の中に愛情と幸せは確実に存在していた。
本作ではその描写が“離婚”という現実へと進むとき、愛憎0か10かなどという白黒などつかない感情のなかで決断を迫られる夫婦の姿が描き出されていきました。
一緒には生きられない、切ない勇断
片方だけが満足している結婚生活はうまくいっているとは言えない。
「家族3人ともに幸せ、結婚生活はうまくいっている、現在のあり方に間違いはない」と思っていたチャーリー。
チャーリー自身結婚生活と仕事が一体化していたという特殊事情があったかもしれません。
ニコールは夫の劇団の舞台女優ではなく、映像の仕事をやっていこうとしていたけれどチャーリーはそれが妻の切実な気持ちであることだとは理解できていませんでした。
愛していないわけではない、憎んでいるわけではない、けれど一緒に生きられない
そう感じていたからこそ、ニコールは”離婚“という選択肢を選びました。
離婚という現実の身も蓋もなさ
憎んでいるわけではない、けれど、離婚という現実に向き合った時に押し寄せてくる身もふたもない割合のぶんどり合い。
本作が、離婚経験のある方ならわかりみがすごいと言われるエピソードはこの弁護士を挟んだ話し合いのリアルの部分もあるようでした。
離婚後も子育ては続く、だからこそ言葉で殴り合うようなことはやめたほうがいいという弁護士さんがいる一方で、離婚の段階で取れる権利は取り切らないといけないという弁護士さんも登場します。
”離婚“の核心を突く印象的なシーンでした。
アダム・ドライバーが見せたチャーリーの心
晴天の霹靂だったチャーリーを演じたのがアダム・ドライバー。
本作ではチャーリーが経験する弁護士を立てた突然の離婚協議・裁判という激流の中に物語の核となるテーマがありました。
離婚という現実に向き合って初めて妻の譲れない本音と離婚の現実に気づかされるチャーリー、そして動き出した離婚に彼の思いは置き去りにされてゆく。
状況が受け入れられず戸惑う様子から、あがいてみる姿、受け入れようとするが納得できない様子、そしてあの「Being Alive」を歌うシーン…。
アダム・ドライバーが見せたチャーリーの姿に本作のテーマが凝縮していたように思います。
マリッジ・ストーリーとは
人生を共に歩むことができなくなった夫婦
離婚に向かう二人の心境と現実をつぶさに描く秀作
ハマリ度は
2.5
見どころも多く、俳優陣の演技もとても良かった。
けれど、私にはあまり刺さらなかったというのが本音です。
とはいえ、結婚・離婚という普遍的なテーマをリアルに描き出したという点やキャストの演技は素晴らしかったので幾多の賞にノミネートされたのも当然です。
キャスト陣の中で、私が最も印象に残っているのがニコールに離婚訴訟の神髄を見せた弁護士ノラ。
演じたローラ・ダーンのキャラクターが光りに光っていました。
年明けのアカデミー賞の行方が気になるほど評判の高い本作、一度ご覧になってみてくださいね。
私は、懐かしの「クレイマー、クレイマー」(1979)や未見のバームバック監督の「マイヤーウィッツ家の人々」(2017)を見てみたくなりました。