話題になっていた2018年公開の映画「娼年」を見ました。
本作の原作が私の好きな石田衣良氏の作品ということもあって、機会があれば見ようと思っていました。
が、衝撃でした!
R18+指定の意味がいきなりわかる衝撃の冒頭で、最近過激さが増してきている韓国映画よりも私は衝撃を受けました。
監督は性の向こう側にあるものを描く三浦大輔さん、主演は松坂桃李君。
本作の魅力や私の感じたところを今回も語っていきたいと思います。
娼年 作品情報
公開:2018年 日本
原作:石田衣良「娼年」
監督・キャスト
監督・脚本:三浦大輔
恋の渦(2012)
愛の渦(2014)
何者(2016)他
劇作家・舞台演出家として活躍されてきた監督さんで、上記は監督さんの手掛けられた映画タイトルを挙げました。
キャスト
松坂桃李(森中領)
真飛聖(御堂静香)
冨手麻妙(咲良)
猪塚健太(平戸東 アズマ)
桜井ユキ(白崎恵)
三浦監督の舞台上演作の映画化
本作は監督三浦大輔演出で2016年におよそ20公演以上上演された舞台の映画化。
舞台での主演も松坂桃李君がされていて、そのほか、舞台から映画に続投出演されたのはアズマ役の猪塚健太君。
映画撮影時には演劇の時に作り込んだ以上の細かく深い役作りをされていた状態だったと考えればあの圧倒されんばかりの演技は納得しかありません。
予告編・イントロダクション
予告編は公式からトレーラーを共有させていただきました。
領が娼夫となった様子やR18+なのが分かる予告編となっています。
「欲望は心の弱いところにひっそりとつながっている」と気づいています。
冒頭あらすじ
領は大学3年生。
勉強も女性との体の関係にも退屈し、バーテンダーのバイトをただただしていた。
客で来た女性静香から女性相手のボーイズクラブにスカウトされた領は、彼女の言葉に心動くものを感じて、娼夫として働くことにした。
領は満たされない思いが、体を重ねることで癒されることがあると女性たちをとおして知るのだった。
娼年の魅力と見どころ
圧倒される凄まじい演技
ベッドシーンがあった方々皆さんももちろんですが、特に松坂桃李が演じた領という人物の内面・才覚、そして、娼夫として領が最善を尽くすシーンの凄まじい演技には驚くばかりでした。
文字通り体を張ったシーンが多く、そこに込められた感情や叫びのようなものまで感じられます。
桃李君は子どもと見ていたヒーロー戦隊「侍戦隊シンケンジャー」の殿の記憶がいまだに私の中に残っているんですが、これほどまでの演技を見てしまうとその表現力の成長に感嘆しかないという状態です。
その他の登場人物の中で壮絶なインパクトを感じたのは猪塚健太演じるアズマでした。
描きこまれたベッドシーン
肌を合わせることでしか得られない女性たちの満たされない思いを表現するために、領が会った顧客女性たちとの性的なシーンはベッドシーンを含めて詳細にじっくりと描かれています。
衝撃的であると同時に、行為が”終わる“までを描くことで性的に満たされ得られる心の充足感まで表現していたように感じました。
領自身の成長物語
領に満たされる顧客たちと同時に、この仕事を始めたことで領自身が抱えていた満たされない渇望への諦めからくる無力感にも向き合うことになりました。
少し大げさかもしれませんが、領と顧客が救い救われる姿を描いてありました。
娼年とは
圧倒されるほどのセクシュアルなシーンの中に描き出される
欲望、さみしさ、渇望を満たす人間の姿
ハマリ度
4
見終わったあとに残った衝撃波のような余韻をどう言葉にしていいか分かりませんでした。
伝えたいんだけども伝えられないもどかしさもあって取りとめのない文章になっていて申し訳ないです。
ただ、ラストに行くにつれて領が悟ったこと・乗り越えたもの・生きる道を見つけたことなどがその表情に見られ、どこかすがすがしい思いで見終わることができました。
原作には続編があるようなのでぜひ読んでみたいなと思っています。
ここからはネタバレがあります
ご注意ください
ネタバレあらすじ
領が抱えていた満たされない渇望
本作で領が虚無感から抜け出せずにいた理由の一つが、幼いころ母を失った喪失感でした。
突然の病死だったお母さんとの最後の記憶が領の中でずっと残っていて、恋しさが永遠に満たされない状態でした。
年の近い彼女ができても体を重ねても満たされない領の中には女性への諦めにも似た冷めた思いがくすぶっていたと言えます。
領が変わるきっかけをくれた人たち
領の中にある何かに気づきスカウトした静香。
ラスト近くなってはっきりするのですが、領は美しく毅然とし面倒見の良い静香の中にお母さんの面影を重ねていたようです。
静香の調査では亡くなったお母さんは娼婦だったそうです。
静香さんも元娼婦で、障がいを抱えた娘咲良を産み今のクラブ運営を始めたということでした。
女性客から求められる娼夫となった領
領が売れっ子になると初対面から断言していた店のナンバーワン、アズマ。
アズマは「領がふつうだったから」とのちに語っています。
女性客たちからの要望は大多数の人からは“驚かれる”ような内容が多く、だからこそ、女性客たちはその要望を当然のように受け入れ普通の彼のように抱きしめてくれる相手を求めていました。
領の控え目な物腰と要望をまず受け止める純粋さに、身を預けてみたいと思わせる安心感があったということでした。
結末は
クラブは摘発され、静香さんは逮捕されました。
後日談として、患っていたHIVのため静香さんは他界し、静香さんを手伝っていた娘の咲良、アズマと領が中心となってクラブを再開していました。
彼らを求める人がいる限りクラブは存続していきそうです。
感想
第一線で主演を張る俳優さんがここまでの内容の演技を見せ切るとなれば、もうひれ伏すしかありません。
本作はヒットし、主に女性からの評価が高かったことが話題となっていました。
性に女性が求めるもの
本作を見終わって、私は4~5年前に女性向けAVの男優さんたちがファンミーティングを開くほど人気があるという記事を読み、作品を見てみたことを思い出しました。(はい見ました(〃▽〃))
女性もセクシュアルな欲望は持っているけれど、精神的な充足感がなければ満たされないということを描きこんでいたことに感嘆しました。
人気となった男優さんたちは本作の領のように、女性の求めるものを性的な面から満たすことを目的としていたという意味で共通して需要のある貴重な存在だったんだろうなとふと思い出しました。
遺作となった江波杏子さん
あと、本作で70代の女性客として出演されていた江波杏子さんは本作が遺作となりました。
劇中も着物の似合う美しい女性で、高度な技術をお持ちの素敵な女性役でした。
江波さんだけでなく、本作に出演されていた女優さんどなたもとても美しかったです。
さいごに
本作を舞台化、映像化された監督三浦大輔さんの力量と、主演として領を演じきった松坂桃李君の偉業をたたえたいです。
見る機会は何度かあったものの見ていない監督の作品「愛の渦」の奥深さもちょっと見てみようと思っています。