あの大ヒットドラマ「トッケビ」を超える視聴率で話題となった韓国Jtbc放送の「SKYキャッスル」を見終わりました。
邦題は「SKYキャッスル~上流階級の妻たち~」となりました。
噂にたがわぬ総合的なクオリティーの高さと面白さで私も夢中になって最後まで見ました。
シニカルなコメディテイストが味付けとなったミステリーサスペンスであり、親と子のヒューマンドラマでもある本作の魅力など、今回も主観的に語っていきたいと思います。
前半はネタバレなし。後半以降ネタバレあらすじや感想を語っています。
作品情報
放送
2018-19年 韓国Jtbc 全20話
演出・脚本・キャスト
演出:チョ・ヒョンタク
危機一髪!プンニョンマンション(2010)
親愛なるものへ(2012)
Who are you?君を守る恋(2013)
イニョプの道(2015)
魔女宝鑑(2016)
SKYキャッスル(2018)他
脚本:ユ・ヒョンミ
グリーンローズ(2005)
神の天秤(2008)
楽しい我が家(2010)
カクシタル(2012)
ゴールデンクロス(2014)
短編:ありがとう、息子よ(2015)
SKYキャッスル(2018)他
キャスト:
ヨム・ジョンア(ハン・ソジン)
イ・テラン(イ・スイム)
ユン・セア(ノ・スンヘ)
オ・ナラ(チン・ジニ)
キム・ソヒョン(キム・ジュヨン)
チョン・ジュノ(カン・ジュンサン)
チェ・ウォニョン(ファン・チヨン)
キム・ビョンチョル(チャ・ミニョク)
チョ・ジェユン(ウ・ヤンウ)
チャニSF9(ファン・ウジュ)他
冒頭あらすじ
高級住宅地SKYキャッスルに住むソジンは、高校進学と同時に超難関大学の医学部に娘イェソを入れるため準備を始めていた。
見事ソウル大医学部に入学したヨンジェのお母さんを労う名目で祝賀パーティーを催したソジンの狙いはヨンジェの入試準備の資料だった。
ヨンジェ母からもらった情報でソジンは合格率100%という入試コーディネーターを娘につけることに成功。
しかし、ヨンジェのお母さんはある朝未明自殺してしまったのだった…。
予告編
富裕層が集う住宅地SKYキャッスル。
超難関大学ソウル大に子どもを入学させるために、サスペンスの要素も絡んだ激しいストーリーを繰り広げることが感じられる予告編となっています。
SKYキャッスルの個性と魅力
超難関大学合格への執念と執着
超学歴社会と言われている韓国の受験事情を過激なシチュエーションを舞台にしてデフォルメした脚本が見どころ。
予告にもあった受験コーディネーターの存在が、子どもを超難関一流大学に入れたい親の執念と執着にどう影を落としていくのか一つのホラー要素としても機能していました。
富裕層のスノッブさをシニカルな笑いに昇華
SKYキャッスルに住んでいるという地点で上位数パーセントの富裕層として誇りを持っている親たち。
優雅な雰囲気を纏いながら極端な持論を繰り広げる熱い親たちの姿をオーバーに描きながら、子どもたちの本音のまともさとの対比が効かせてあります。
シニカルな笑いを誘発させながらシリアスな人間模様や問題を浮き彫りにさせるという両輪の演出が物語の緊張と緩和の役割を果たしていて最後まで面白く見ることができました。
親はいかに子の人生を守れるのか
親が子を守る方法は十人十色。
SKYキャッスルに住むソジン達は難関大学=人生の勝ち組という単純な図式に囚われます。
そこには子どもの適性や望みというものの入り込む隙間がないほどの妄信で。
SKYキャッスルでは、難関大のソウル医大に合格したヨンジェ君のお母さんが幸せの絶頂のはずなのに自殺してしまいます。
一体ヨンジェ君家族に何があったのか、そこをミステリーのように展開させながら親がいかに子の人生を守れるのかという核心の物語へと導かれていきました。
SKYキャッスルとは
優雅な富裕層が陥った受験戦争の罠
シニカルな笑いを織り交ぜつつ親子の関係を描くミステリーサスペンス
ハマリ度は
4.5
- お高くとまった親たちがみせるカオス
- 過激な受験戦争に登場するすご腕コーディネーター
- ミステリーサスペンス
- 思春期の子どもたちの不安と親との衝突
ミニシリーズで一つのドラマにこれだけの要素が群像劇的に盛り込まれています。
刺激的で見せ方が本当にうまかったです。
しかもストーリー運びの面白さの上に、全キャラクターが個性的。
親世代も子世代も、見事としか言いようのない演技だったこともあり、本国大ヒットとなった点に疑問は一切ないです。(笑)
機会があればぜひ見てみてください!おススメです
ここからはネタバレがあります
ご注意ください
ネタバレあらすじ・感想
本作は親たちが子どもたちを社会の頂点へと上り詰めさせることを目標とし、その最も大きく絶対的な関門が超難関大学合格一点だったことでひずみが生まれた物語でした。
親たちの滑稽ともいえる受験への執着や言動に苦笑してしまう一方で、生き生きと描かれる子どもたちの苦しみや悲しみに胸が潰される思いになりました。
ひずみが生んだ悲劇
目標もゴールも超難関大学合格。
合格しさえすれば子どもにはバラ色の人生が待っていて、自分は子育てに成功した者として輝かしい栄光を手に入れられると信じて疑わない親。
娘イェソを何としてでもソウル医大に入れたいソジンは、100%合格させてくれるという入試コーディネーターに1億円近くの金を払って雇い入れます。
コーディネーターの言うとおりにさえしていれば結果が出ると信じたい思いと、出してもらわないと困るという親の執着で出口のない受験の牢獄内に親子とも閉じ込められていきました。
すご腕コーディネーター キム・ジュヨンの罠
このSKYキャッスルの住人達が、そのスノッブさを利用され残酷なまでのエピソードが展開していくきっかけとなった大きな要素はキム・ジュヨンでした。
ただのコーディネーターではなかったキム・ジュヨン。
100%の合格率の陰には数々の犯罪が行われ、最終目的は合格を餌に子どもを人質に取りながら家族を壊していくことでした。
カリスマと状況判断の的確さ、そしてマインドコントロールの腕。
彼女自身の有能さは自分を含め周囲への諸刃の剣であったことが分かってくるのです。
キム・ジュヨンの動機
彼女自身が優秀な子どもを持つ親の気持ちが手に取るように分かっていて、それを失った時の絶望感までも経験していたからでした。
彼女には幼くして難関大学に飛び級できるほどの天才だった娘ケイを自分の過ちから大事故にあわせ、脳に損傷を負わせてしまっています。
自分の絶望感を埋める方法として選んだのが、優秀な子を持つ親に自分のような気持ちを味わわせること…。
彼女はその家庭に影を落とすあらゆる要素を利用し、時には殺人すら犯していました。
悔い改める姿に溜飲を下げる
SKYキャッスルのおもしろさは、コーディネーターキム・ジュヨンのホラーサスペンス部分だけではなく、親と子の関係が改善していく様子でした。
親たちの言動が子どもたちの人格を無視していたのは冒頭から一目瞭然。
その過ちがどう正されていくのかにもとてもひきつけられました。
はっきり言うと、自分の欲にくらんだ言動で子どもを苦しめている親がどう痛い目に遭い、反省するのかという結末を見せてくれる脚本になっています。
子どもに愛され尊敬される親になっていく姿は、子どもたちから向けられる笑顔がバロメーターとなっていました。
私たちがこのドラマを見ながら望むゴールは、子どもたちの幸せという最も大切で普遍のものゆえに、視聴者の願いを外さない脚本だったなと思います。
…ただ、ヘナの一件だけはあまりにやるせなかったですね。彼女を生前守ってあげられなかったものたちが彼女を思い続けていくだろう姿を確認できたのがせめてもの救いでした。
自分の価値観と子どもの人生は必ずしも一致しない
これまで生きてきた中で感じたことや経験したことを基準にして親は子供の将来をより明るいものにしようと必死になるものです。
けれど、子どもの声を聞いてみると親の価値観が子の幸せへとつながっているとも限らないことが見えてきます。
ドラマでは自分の思い描く子供の幸せだけを願う親の傲慢さが事態をドロ沼化させ悲劇を生んだという側面も描かれました。
ぐるっとひととおりの悲劇を経験したSKYキャッスルの親子たちが憑き物を払うようにして見つけた子どもの人生を守る生き方の選択のあと、またもや教育ママが越してきます。
社会構造が変わらない限り、受験地獄の本性を知らない限り、教育ママは生まれるというシニカルなエンディングにまたもや苦笑。
最後までシニカルユーモアが貫かれていたそのブレないテーマに唸ったラストでした。
OST
ここでSKYキャッスルを彩ったOSTを振り返ってみたいと思います。
まずはこの曲なしでは語れない!
ハジン「We All Lie」
SKYキャッスルといえはこの曲!といえる世界観も雰囲気もピッタリな曲でした。
MVの動画には親たちの滑稽ともいえるほどのカオスが垣間見えていますね!
物語を彩った家族たち
本作はどの登場人物も演じた俳優さんたちもすごく良くて一人一人語りたいくらいです。
なかでも、子どもたち役を演じた面々はみんな素晴らしく、これからが楽しみでしかないです。
SF9チャニくん
濡れ衣を着せられ服役までさせられる心優しき優等生ウジュを演じたのはSF9のチャニ君(2000生まれ)。
長年子役として活動してきているチャニ君は20才を迎え安定の演技で胸が詰まるほどの不遇を受け入れるウジュを見せてくれました。
SKYキャッスルの価値観に染まらない毅然とした強さと優しさを持つウジュの両親がキーパーソンとなってもいました。まるでオアシスのような家族でしたね~。
「プロデュースX101」にも登場したユジンくん
ウ医師の息子を演じたスハン役イ・ユジン君は先ごろ終了した人気アイドルサバイバル番組「プロデュースX101」にも登場して注目を浴びました。
惜しくも最終メンバー選抜まで残れませんでしたが、チャニ君のようなアイドルになれるよう諦めずに目指してほしいです。
本作では勉強が苦手なことに心を痛めるとても子供らしいスハンを演じて愛されました。
もっとも一般的なイメージの家庭像が見られたこの家族は憎めない存在でしたね。
これから楽しみな二人
その他、チャ教授の双子の息子役キム・ドンヒ(99年生まれ) チョ・ビョンギュ(96)など本作のヒットがステップとなって大活躍してくれそうな二人が今後楽しみ。
チョ・ビョンギュはこなれた演技の中に、ふとキム・ガンウを思わせる雰囲気を感じました。
キム・ドンヒは柔らかい風貌で人気ですよね~、あの人気ウェブドラマ「A-TEEN」に出演しています。
ドンヒ君2020年には主演俳優に!!
チョ・ビョンギュ君2021年主演ドラマヒット!
デビュー16年のベテラン キム・ボラ
そして孤独の中で精いっぱい自分を守りながら生き、悲しい最期となったヘナ役のキム・ボラの存在感は抜群でした。
「彼女の私生活」でも安定した演技を見せてくれ、映画で主演もされているデビュー16年、今年25才のベテラン女優さん。
童顔で高校生役をもらうことが多いという彼女のインタビュー記事がありました。彼女の演技や女優という仕事に対する考え方などがよくわかる記事でした。
弱さと醜さを表現したソジン一家
さいごに、キム・ジュヨンのターゲットとなったソジンの家族たちはこちら。
若いころはモテましたというママボーイ役もすこぶるうまいチョン・ジュノは今回も憎めないイケオジ役をされていました。
強い女が似あうヨム・ジョンアさんも迫力でした。
イェソを演じたキム・ヘユンは本作でステップアップし、2019年MBCのドラマ「偶然見つけたハル」で初主演を手にしました。
総合的に見ても「SKYキャッスル」は本当に見ごたえのあるドラマでした!