2019年にシーズン1が配信され衝撃を受けたNetflixオリジナルドラマ「キングダム」。
ゾンビ、ホラーと言った作品がブームのように数多く作られていた時期に、韓国の時代劇ゾンビホラーが登場し、その映像とテーマ、泥臭い権力欲への政治臭、疾走を続けるアクションシーンに度肝を抜かれました。
その外伝となる、「キングダム」の前日譚が本作「アシンの物語」。
主演はチョン・ジヒョン。
1時間32分(92分)のスペシャルドラマでした。
配信開始から約1ヶ月、もう視聴された方も多いでしょうね。
私の感じたところを語っておきたいと思います。
作品情報
2021年 Netflixオリジナル 92分
シーズン1 | 2019.1.25 全6話 |
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シーズン2 | 2020.3.13 全6話 |
外伝 | 2021.7.23 92分 ←今回ココ |
監督・脚本・キャスト
演出:キム・ソンフン
映画 トンネル~闇に鎖(とざ)された男~(2016)
キングダム シーズン1(2019)
キングダム シーズン2(2020)1話のみ
キングダム:アシンの物語(2021) 他
脚本:キム・ウニ
冬のソナタ(2002)
サイン(2011)w/チャン・ハンジュン
シグナル(2016)
医心伝心~脈あり!恋あり?(2017)
キングダム シーズン1・2(2019-20)
キングダム:アシンの物語(2021) 他
キャスト
チョン・ジヒョン(アシン)
キム・シア(少女アシン)
パク・ビョンウン(ミン)
ク・ギョファン(アイ・ダガン婆猪衛首領)
キム・レハ(アシン父)
冒頭あらすじ
朝鮮北方の地、女真族でありながら朝鮮への恩義があった一族。
アシンはその首領を父に持つ少女。
母親の病を癒す薬草を探しに、百年未踏だったという廃四郡へと足を踏み入れ、そこで死者を蘇らせることができるという野草を見つけた。
ある日、アシンの留守の間に、村のものすべてが 婆猪衛 の者たちによって皆殺しにされてしまう。
アシンは 婆猪衛 への復讐を誓い、父が信じ間者として仕えていた朝鮮にその報復を願うのだった。
予告編
朝鮮の官僚・アシンの村の者・女真族 婆猪衛 の者
三者が絡む復讐の物語となることが分かる予告編です。
VFRによる精緻で迫力のある映像はキングダム本編と同じく目が釘付けになりますね。
キングダム:アシンの物語の魅力と個性
あの恐ろしい疫病の原因と理由が明らかに
世子やソビが直面した、民のゾンビ化現象。
王が亡くなることで権力図が様変わりすることを良しとしなかった大監が、王を生き返らせることを医師に強いたことが原因でしたよね。
名医スンヒ医師がなぜあの方法を知っていたのか、どういった経緯で知ることになったのかを紐解いたのがこの外伝でした。
アシンが一生背負うことになった生きる目的
アシンという少女が背負った重すぎる荷、それを描いた悲しすぎる物語。
いや、このようなくやしさを抱いて生きた人が、過去には多くいたのかもしれない。
そう思わせるリアリティが、アシンのあずかり知らぬところで物事が動きその結果が残酷な方法で突きつけられたという展開から痛みとして伝わってきます。
強い意志と、自分自身を鼓舞する目的がなければ挫けてしまいそうになる。
アシンの物語は彼女が生きるために心に誓った復讐の物語でした。
自分たちを利用した者・裏切りへの容赦ない恨
韓国ドラマが初めて日本でブームを巻き起こした頃、韓国のドラマの中に常に横たわっている感情が「恨(ハン)」であるとよく紹介されました。
主人公がひどい目に遭わされる物語は、多くが激しい復讐のカタルシスがクライマックスのひとつとなり、それを越えて主人公にとってのグッドエンドがやってきます。
本作もまさに「恨」と「復讐」の物語でした。
ただそれはアシンにとってのグッドエンドだったのかどうか……。
キングダム:アシンの物語とは
生死草の起源とルートが明らかに
悲しい恨と復讐を背負った少女アシンの物語
ハマリ度は
4
映像の迫力、アシンの背負ったものを描く描写、表情を捉える角度や陰影。
VFXも含めて、テンポや疾走感、アップの使われ方も含めて私のツボ満載の映像でした。
チョン・ジヒョン……。おいくつ!?
年齢よりも早く大人にならなければならなかったアシン、彼女が信じてきたことを根底から覆される絶望。
暗く沈み込んだ瞳で人生の苦みを味わいながら、復讐というひとつの目的に縋って生きていく彼女の悲しいモチベーション。
そこには、ラストで明らかとなる彼女が背負い続けるある者たちの存在があります。
そういったものを今年40歳になるチョン・ジヒョンが抜群のバランスセンスで演じられているんですよね。
男児二人の母ともなられていて、アシンにとっての家族=部族への表現はさらに鋭くなっているような気がしたのは私の思い込みでしょうか。
少々グロテスクで残酷・残虐な描写も出てきます。苦手な方はご注意くださいね。
Netflix舞台裏映像 監督・脚本家インタビュー
視聴前に見るとより物語の背景がわかる、そんなインタビュー動画がこちら。
アシンの物語がどんな狙いと思いが込められて作られたのかがわかりますね。
「キングダム:アシンの物語」は今すぐNetflixで観られます
ここからはネタバレがあります
ご注意ください
ネタバレあらすじ・感想
残酷な事実、復讐の矛先が変わろうともやり切るアシン
アシンの父が恩義を返すためにと部族で朝鮮の地に住んだことで、同部族の 婆猪衛の者たち(女真族)と袂を分かってしまっていました。
部族が皆殺しにされたのは婆猪衛の者たちの手によって。
父の思いを信じ、朝鮮を信じて婆猪衛への復讐を叶えてもらえると信じたアシン。
自らの手でも復讐を叶えたくて体力・弓の腕を磨き続け、スパイとしても婆猪衛の砦に偵察に行ってもいました。
けれど、気づくんです。
本当に復讐すべきは婆猪衛だけではないことに。
二重の裏切りを赦さなかったアシン
婆猪衛の者たちが、自部族の集団殺害の犯人をアシンの部族によるものだと信じ込んだせいで皆殺しが行われた。
そう思わせ、けしかけたのが朝鮮官僚ミンの部隊でした。
アシンがそれに気づき、報復として利用したのが生死草。
部隊はゾンビ化した人々が互いを襲い合い、絶滅へ。
復讐の矛先は国の根幹へ
心の支えは復讐、それだけ。
スンヒ医師に、人を生き返らせることができる薬草であると進呈したアシン。
滅多なことには使わないであろうことも分かりつつ、一度使えばその拡大は止められないその意味を知るアシン。
彼女がこれから誰かを信じることはもうないかもしれない。
悲しさが残るエンディングからは、誰かを利用し虐げた者たちは決して赦されることはないと言うメッセージ。
部族の「恨」を、たった一人の少女が心に誓い、背負い、たった一人で国を相手に「復讐」を成し遂げようとしたことでした。
ただ、何よりも悲しいのは、これがアシンにとってはグッドエンドであるということでした。
生死草の謎のひとつが明かされた
生死草が朝鮮の地に持ち込まれたその理由が本作で明らかとなりました。
自然発生的ではなく、人為的なもの。
しかも、恨みを買っての結果。
バイオ〇ロ?
COVID-19パンデミックが広がる前年に公開されたシーズン1。
疫病というキーワードがぐさりと刺さる物語ではありました。
部族のみんなを生き返らせたくて生死草を使い、どういう結果を生むのかを知っていたアシン。
悲しく、残酷で、その中でもひとりでなんとか立とうとした少女の物語でした。
まとめ
有料媒体だからこそできる、グロ描写。
辛い方も多いかもしれませんが、時代を思えばきっとこれ以上だったのだろうと思うと胸が詰まります。
アシンの最終兵器として生死草があってよかったのか、良くなかったのか……。
ときどき、ふと思い出してしまう物語です。
あわせて読みたい関連作
部族間の軋轢を利用されてしまった婆猪衛のリーダーアイダガンを演じたク・ギョファン。
同じくNetflix制作のドラマ「D.P. 脱走兵追跡官」でチョン・ヘイン演じるジュンホの相棒を演じられています。
全く違ったキャラクターで異彩を放つ彼の魅力がもっとわかるこちらの作品もぜひ。
画像出典:@NetflixKR @netflixth