韓国ドラマ

D.P. 脱走兵追跡官 視聴感想 システムが生む人権軽視の現場 英雄ではない彼らの追跡劇だからこそ

2021年Netflix制作オリジナル韓国ドラマ「D.P. 脱走兵追跡官」が8/27に配信が始まり、日本Netflixの総合視聴ランキング上位に早々に入りはじめました。

原作は、軍内での問題などを描きこみ大反響を得たというウェブ漫画。

原作者キム・ボトンさんが本作の演出家ハン・ジュニ監督と共に脚本を手掛けられています。

主演はチョン・ヘイン。

少しやさぐれ感はあるが、落ち着きがあり肝が据わっていて、心の奥底に熱い情が流れているという二等兵を泥臭くもまっすぐに演じておられて引き込まれました

インディペンデント映画や海外ドラマで活躍されてきた実力派キャストの皆さんのキャラクター表現がこれまた個性的でいい感じに感情的。

どんなところに魅力を感じたのかなど、詳しく語って行きたいと思います。

作品情報

2021年 韓国 Netflix制作 全6話

演出・脚本・キャスト

演出:ハン・ジュニ

コインロッカーの女(2015)
スピード・スクワット(2019)
ドラマ:D.P. 脱走兵追跡官(2021)

脚本:キム・ボトン/ハン・ジュニ

ドラマ:D.P. 脱走兵追跡官(2021)
*キム・ボトン作家は原作者でもあります

キャスト

チョン・ヘイン(アン・ジュノ)
ク・ギョファン(ハン・ホヨル)
キム・スンギュン(パク・ボムグ)
ソン・ソック(イム・ジソプ) 他

冒頭あらすじ

ジュノは、酒浸りで家族に暴力をふるう父のもとで育った。

母親が殴られるのを見、泣く妹を守るのが精いっぱいだった少年時代を抜け、今はなんとかアルバイトで小銭を稼ぎ、不払いに遭えば泣き寝入りせず知恵を働かせて強く生きていた。

入隊しても理不尽はまかり通っていたが、ジュノは洞察力の良さと芯の強さを買われてD.P.と呼ばれる脱走兵追跡課に引っ張られた。

脱走する者の理由もそれぞれだが、そこには事情と環境が絡む。

他人事とは思えないジュノは「捕まえること=本人やその関係者を助けること」として任務に向き合うようになっていくのだった。

予告編

軍内での苛烈な問題や人権問題にも触れていく骨太でヒューマンな物語となると予想されていたのですが、まさにそういうドラマでした。

D.P. 脱走兵追跡官の魅力と個性

追跡する者もされる者も誰も完璧じゃない

演出をされたハン・ジュニ監督のコメントが聞けるクリップが出ていました。字幕から日本語が出せます。

どんなふうにキャスティングされたのか、どういったキャラクターにしようとされたのか、監督・キャストさん両方の気持ちがわかる動画となっています。

ヒーローではない彼らの追跡劇だからこそ

プロでもなく、任務・役割として脱走兵追跡官となったジュノ。

一方で、よくよくの事情がある脱走兵。

彼らの思いと絶望を知り、戻りたくないがゆえに行きつく先は極端な選択となることがあることに直面していきます。

ジュノは、助けたい母を助けられずに自分の無力感に苛まれて苦しんだことから、なぜ逃げなかったのかと母に問うています。

けれど、今は任務として”逃げた人を捕まえないといけない”立場に。

ジュノたちが捕まえないと彼らは逃亡兵として逃げ続けることになり、それを避けようとすれば彼らは極端な選択肢しか無くなる

ジュノは逃げても解決しない彼らを捕まえることで、彼ら自身・彼らの周りの人を助けようとします。

とはいえ、逃げても戻っても、どちらも地獄でしかない彼らを思ってやるせなさに無力感すら抱えるジュノからは、彼がただの一兵士であるという現実が突き付けられます。

ジュノの一人一人への思いというものが、この任務に常に横たわる問題を照らしていてズンと胸にきました。

変わらない社会・慣習に絶望する姿をまざまざと

ドラマ中の逃亡した脱走兵の事情というのは様々でした。

ただ、絶望のあまりに逃亡することになった者の多くは苛烈な人権蹂躙を受けていたというエピソードが濃く印象に残る物語となっています。

ハラスメントという言葉が浸透し、「いじめ」は暴行・障害、脅迫といった犯罪であるという認識が徐々に広がり、世界はゆるやかに良い方向に向かっていると言われています。

けれど、依然としてそれはなくなってはいない

する側が精神的に弱く狡猾で暴力的であればそれは行われてしまいその苛烈さは周囲に恐怖を与え、加担者・傍観者を生んでいく

職業軍人のルールや慣習を曲解させた上官への絶対服従の空気の中、2年の兵役が終われば元の生活に戻る彼らの軍生活内で、いじめはする側にとって除隊で時効を迎える都合の良い不満のはけ口になってしまっていました。

される側には永遠の傷になるとわかっていて傍観者は自分は違うと思いながら加担者側に立つ。

傍観者はやがてそれがあったことすら忘れていき、そんな傍観者こそが「こんなクソみたいな社会」と文句だけを垂れる社会の体現者となっていく。

視聴している自分はやはり傍観者でしかなく、なら自分だったらどうしただろうかと考えれば考えるほど、ジュノのやるせなさが他人事ではないと気づいて悲しく情けなくなりました。

D.P.脱走兵追跡官 とは

システムが生む人権蹂躙の現場
事情を抱えた脱走兵を追跡するD.P.の活躍とやるせなさ

ハマリ度は

 4

ヒューマンドラマ好きの私ですが、いじめがはびこる現場を描くドラマを見るのはつらいものがあります。

けれど、「D.P. 脱走兵追跡官」は、それに直面するヒーローではない主人公ジュノの視点で描かれていて、彼の思いというものに沿いながら見ることができる作品でした。

ジュノ自身が人権侵害を受ける家庭の中で育ち、そのことへの耐性と諦めと哀しい憤りといった様々な思いを抱えていたという背景も設定として存在しています。

父権・夫権を振りかざす圧倒的な暴力と、入隊時期が早いだけで後から来たものの人権を蹂躙して良いと判断する者のいる場所で、ジュノはそれらから容易に逃げることはできないことを知る悲しい経験者であると常に目が語ります。

追跡劇ではあるけれど、逃亡者の事情にフォーカスし、残酷な表現も辞さない覚悟のあるヒューマンな脚本と演出がこのドラマの良さでした。

しかも、シーンシーンの疾走感やアクションシーンの迫力などは魅力です。

ボクシング経験者というジュノ役を、3ヶ月トレーニングして代役なしでヘイン君は演じたそうです。

見るのが辛いという方に敢えておススメしませんが、物語からは、誰かの人権を侵害しても良い環境や状況などはどこにもないことを分かっていない者がいることを痛烈に批判してもいます

壮絶演技キャスト陣の魅力をたっぷりと

ク・ギョファン直近2役のギャップがまた魅力

チョン・ヘイン演じるジュノの良きバディとして存在する上等兵ハン・ホヨルを演じたのはク・ギョファン。

ク・ギョファンは「新感染」などの出演で俳優としての注目を浴び知名度をさらにあげられていますが、映画監督、時には脚本も書かれ、すでに才能を認められ活躍されている方です。

俳優としての魅力が強く発揮され求められるようになってきたことで話題作への出演作が増えてきました。

その一つが、つい先ごろNetflixで公開された「キングダム:アシンの物語」でのアイダガン役。

出番は多いとは言えませんが、重要なキャラクターの存在感を”空恐ろしさ”という部分でも表現されていて印象に残っています。

「D.P.」でのク・ギョファンがフットワーク軽く、時にお調子者というキャラクターだったこともあり、そのギャップがとても魅力的に感じられました。

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チョ・ヒョンチョルさんだったの?

KetflixKoreaから、ヒョンチョルさんだったのか!?というツイートが出ていてあまりにツボったのでご紹介します。

「アルハンブラ宮殿の思い出」の開発担当のヨンスさんはソクボン役のヒョンチョルさん。そのほか、「ホテルデルーナのチャンソンの先輩サンチェス役や、映画「建築学概論」にも出られていたんですね。

どこかで見ていたと思いながらも印象が変わっていて気づかなかった役柄ももっとありそうです。

役のイメージや印象に合わせてどんな演技もできる俳優さんにはいつも驚かされます。

「D.P.」ではソクボン役。ソクボンヒョン……。心優しい人を追い詰めて欲しくなかった。

ヒョンチョルさんのソクボンは、温かさと哀しさと怒りと絶望が伝わってきて、たまらなかったです。

あの印象的な役を演じた四方を深堀りインタビュー

ソクボン役チョ・ヒョンチョル、シン・スンホ役ファン・ジャンス、リュ・イガン役ホンギョン、ウォン・ジアン役ムン・ヨンオクの4名の助演俳優さん方が、視聴者の熱い反応を受けてNetflixインタビュー動画に登場。

視聴者からの称賛の声に嬉しそうに照れ笑いしつつ謙遜する姿が皆さんのお人柄をあらわしています。

どんな思いで演じておられたのかなど、わかる動画となっています。

日本語字幕はありませんが、英語字幕が出せます。

ドラマを表現する個性的なOST

オープニングテーマ曲は、少し泥臭くやるせないムードが感じられるこの曲「Crazy」

歌っているのは「ムーブ・トゥ・ヘブン:私は遺品整理士です」EP9のゲストロールとして出演もされたシンガーソングライターのケヴィン・オー。

Kevin Oh, Primary「Crazy」

軍内での苛烈な人権蹂躙問題に直面することになるジュンホの任務を感じさせるやるせなさが漂います。

Kriz, Monovated, Primary「Chaser」

もう一曲は、パワフルな曲「Chaser」

捜査し、追跡し、体を張って逮捕する。ジュノやホヨルの活動のテーマ曲ともいえるのがこの曲でした。

逮捕のシーンなども見られるクリップですよね。

走って走って、そして取っ組み合って、時に飛んで。逮捕時が特に危険で難しかったですしね。

まとめ

詳細ネタバレあらすじなどは割愛しました。

「D.P.」は社会派ヒューマン系の韓国ドラマが好きな方にはおススメのドラマです。

スピード感とぐっと沈み込むような泥臭く地獄のような状況を心理面からも表現し描く濃さが、ハン・ジュニ監督の演出として効いていて胸に迫り、リアルに苦しさを感じました。

脱走兵を演じた俳優さんはじめ、助演のみなさんの演技は壮絶です

今さらながら、みなさんの演技力のすごさを感じさせられました。

画像出典:@NetflixKR

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