タイの映画興行記録を塗り替えたという2017年の大ヒット映画「バッド・ジーニアス」。
タイではドラマ版も制作され、ストーリーとしての面白さとインパクトが根強い評価を受けているのがわかるクライムエンタメでした。
今回は、この映画「バッド・ジーニアス」に感じた魅力や個性などと共に、主演若手俳優さんたちについても語っていきたいと思います。
作品情報
2017年 タイ
監督:ナタウット・プーンピリヤ
Countdown (2014)
バッド・ジーニアス 危険な天才たち(2017)
ドラマ:「iSTORIES」(2018)
ドラマ出演:A Gift to the People to You Hate(2019) 他
キャスト
Aokbab Chutimon Chuengcharoensukying(リン)
Non Chanon Santinatornkul(バンク)
Oom Eisaya Hosuwan(グレース)
James Teeradon Supapunpinyo(パット)他
実力派若手が揃うバッド・ジーニアス
新鋭新人女優だったモデル出身Aokbab
1996年生まれのリン役Aokbabは2017年のアジアフィルムフェスティバルでインターナショナルライジングスター賞をタイ女優初受賞されています。
現在は難関大学チュラロンコン大学(東大クラスと言われている)にも在籍しつつ俳優活動もされています。
タイの俳優さん方は軒並み高学歴なんです。
ちなみに、Aokbabは、Netflixで配信されているドラマにも出演されています。
人気作にも出演 キャリアを積み花開いたNon
2015年のヒット青春群像劇シリーズ「Hormones」のシーズン3で助演として出演されて以降、本作に出演する直前には主演も務めるようになっていたNon。
バッド・ジーニアスに出演してからはAokbab同様、主演街道を歩む俳優さんとなりました。
彼の主演作もNetflixにありました。
出演作多数の人気俳優パット役James
先ほどNonのところで話したヒット青春群像劇シリーズのシーズン2・3で主演陣のひとりとして出演していたのが金持ちの息子パット役のJames。
1997年生まれのJamesは若くして多数の作品に出演する主演級若手俳優。
バンド活動もされています。
実力ある若手俳優さんたちがハラハラの物語をより緊迫感あるものにしていて目が離せませんでした。
冒頭あらすじ
経済的に厳しい父子家庭のリンは、有名私立高校に奨学金を受け特待生として転入してきた超成績優秀者。
出席番号が前後だった演劇部の可愛いグレースという親友もできた。
しかし、ある時テスト結果によって足切りにあえば部活動ができなくなる彼女の窮地を救うためにしたカンニングがグレースの彼氏パットの耳に入ってしまう。
リンに助けて欲しいというメンバーが金を払うといったことで、リンは天才的なアイディアを思いつくのだった。
予告編
「危険なカンニング・ビジネス」まさに!
予告編からは、ハラハラドキドキ、スピーディーに展開する高校生たちのスリリングな物語が伝わってきますね。
バッド・ジーニアスの魅力と個性
ぎっしりと詰まった飽きない面白さ
見終わったあと、2時間という時間によくぞこれほどまでの物語を詰め込めたなぁ~!という満足感が得られました。
前半は校内で、後半は世界規模の大学統一試験STICでのカンニングに挑むんです。
アイディアも徐々に大規模化し、彼らの人間関係やドラマもさらりと盛り込んでいて最後まで全く飽きませんでした。
0か10か、リスクの大きさが対価とスリルに比例する
需要と供給のあるところ商機が存在する。
助けが欲しい生徒に自分の能力を売れると気づいたリン。
バレてはならない危険があるからこそ対価となる金額は上がり、そのリスクをいかに下げられるかが腕の見せ所でもあります。
バレたら最後、結果は無に。0か10かしかない。
リン側からの視点でストーリーを見ているからこそ、バレないかにハラっハラです。
合法的に稼ぐ大人とリスキーなリンとの対比
リンがカンニングで対価を得ることに積極的だった理由の一つは、学校が学費以外に別名目で保護者からかなりの額の寄付や備品費を受け取っていることを知ったことでした。
そこには、家財を売って用意するしかないリンのお父さんからも金をむしり取っていたと知った義憤も混じってしまい盲目に。
いかに合法に利益を得るか、という視点を失っていた若いリンが落ちて行ったリスキーなビジネス。
果たして逃げ切れるのか、最後まで緊張感を失わない本作に引き込まれました。
バッド・ジーニアスとは
天才的頭脳を持つ女子学生が踏み込んだ
0か10かのリスキーなカンニングビジネスを描く
ハマリ度は
4
スピード感・勢いだけでなく、緊張感といった心理面など、バッド・ジーニアスの映像は終始一貫してダレることなく物語にひきつけてくれました。
映画としては、メッセージ性が強いタイプではなく、エンターテイメント。
ジェットコースターのように一気に乗せられて結末まで楽しく運んで行ってもらえた印象でした。
おススメです!
ここからはネタバレがあります
ご注意ください
ネタバレあらすじ・感想
この物語が、いったどういったところに着地してエンディングを迎えるんだろうかと、終盤に差し掛かると気になってきます。
ハッピーエンドは果たしてあるのかと。
成功率とリスク 想定外に対応できるか否か
実際のところ、学内でのテストはカンニングがバレてしまいリンはペナルティを受けていて失敗しています。
では国際的なテストSTICでの作戦はと言えば、現場で問題を解き答えや内容をリークさせる実行犯であるリンの相棒のバンクが捕まっています。
学内でのテストもSTICの試験も、サービスを受けた側はリンら実行犯側が吐かない限り逃げおおせられるものでした。
自分だけが責任をかぶるなら大丈夫だったけれど、実はバンクをこの作戦に引き込むために、パッドが彼の前途洋々だった無償留学の道を奪っていたと知ったリンの心境は終盤大きく変化してきました。
バンクの向かう先を見たリンの決断
自分もリンとともにSTICを経て海外の大学への道を得、その費用をこのビジネスで得たかったバンク。
正当な留学の道を人為的に奪われていた彼の取れる方法はこれでしたが、STICで不正が見つかりその道も閉ざされた。
残ったのは優秀な頭脳と大金が稼げるカンニング・ビジネスの経験。
次のビジネスの提案を始めたダークサイドへと進むバンクをみて、この過ちを正すのは自分しかいないと腹をくくったリンの姿が印象的でした。
0か10か
不正行為を行うことへのリスクはあまりに高すぎて割に合わないというのが一般的な考え方。
そこを敢えて突き進み自爆した若者の物語。
リンはバンクと会ったあと、お父さんに事の次第を話し、STICでの不正行為について証言するシーンで終わりました。
あれほど実直で優秀なバンクの前途を妨げ、彼を今後も危険な不正行為の道というダークサイドを歩ませることになりそうになってしまったその責任を取るつもりであることが見えました。
歪めてしまったものを軌道修正するために、過ちを明かし責任を取るしかない。
首謀者ではなかったバンクを、もしかしたら救える道があるかもしれないなと感じたラストでした。
さいごに
ついつい、子ども世代の物語は深刻に見てしまうのですが、この映画の魅力は圧倒的にスリリングな物語。
クライムエンターテイメントです。
見始めれば、すーーっと物語に乗せられて一気に見終わるはず。
タイの映画やドラマになじみのない方は多いと思いますが、このヒット映画は本当におススメです!
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