海外ドラマ

ザ・ホーンティング・オブ・ブライマナー 思いのなれの果て、情念を持つ人間の尊さと哀しさを描くヒューマンホラー

先日2020.10.9にNetflixで配信スタートした海外ドラマ「ザ・ホーンティング・オブ・ブライマナー」を見終わりました

ホラーが苦手な私が本作を見たのは、前作である、「ザ・ホーンティング・オブ・ヒルハウス」のマイク・フラナガン監督が続投された「ホーンティング」シリーズだったからでした。

*アンソロジーシリーズなので、両作にストーリー上のつながりはありません。

前作の「~ヒルハウス」は幽霊屋敷の話ではあっても、描かれていたのが人間ドラマ。

しかも、映像も脚本も演技も素晴らしかったことから、本作への期待値を高めるしかなかったんです。

そして見終わってどうだったか、というと・・・、

すばらしかったです!!!

私が感じた魅力など、今回も熱く語っていきたいと思います。

作品情報

配信・シリーズ・原作

配信:Netflix

シリーズ

2018年ザ・ホーンティング・オブ・ヒルハウス 全10話
2020年ザ・ホーンティング・オブ・ブライマナー 全9話 ←今回ココ

ベースとなった原作

ヘンリー・ジェームズ「The Turn Of The Screw」(1898)

演出・キャスト

演出:マイク・フラナガン

アブセンシア(2011)
ジェラルドのゲーム(2017)
ドラマ:ザ・ホーンティング・オブ・ヒルハウス(2018)
ドクター・スリープ(2019)
ドラマ:ザ・ホーンティング・オブ・ブライマナー(2020)他

ザ・ホーンティング・オブ・ヒルハウスS1
ザ・ホーンティング・オブ・ヒルハウス 視聴感想 Netflix海外ドラマ2018年Netflixオリジナル海外ドラマ「ザ・ホーンティング・オブ・ヒルハウス」を見終わりました。ホラーは苦手ですが本作は重層的に描く家族の物語。最後まで見ごたえのある物語でした。前半はネタバレなしです。...

キャスト:

ビクトリア・ペデオレッティ(ダニ)
オリバー・ジャクソン・コーエン(ピーター)
T’Nia Miller(ハナ)
アメリア・イブ(ジェイミー)
Rahul Kohi(オーウェン)
タイラー・シャリフ(レベッカ)
ヘンリー・トーマス(ヘンリー・ウィングレイブ)
カーラ・グギーノ(語り部)
ケイト・シーゲル(ヴィオレッタ) 他

冒頭あらすじ

結婚式を明日に控えた新郎新婦との食事会のあと、招待客らはイギリスのあるお屋敷にまつわる幽霊話を聞く流れになった。

語り部となった上品な初老の夫人。

イギリスに来て半年ほどのアメリカ人のダニが訳ありだと分かる住み込みの教育係として郊外の広大なお屋敷「ブライ領」にやってきたところから語り始めた。

ダニが担当したのは2年前に両親を亡くしている10歳と8歳の兄妹。

問題行動で全寮制の学校を退学させられた兄のマイルズと、想像力が豊かな妹フローラだった。

予告編

ここでは、2分42秒の予告編をご紹介します。

お屋敷に何かいるのは明らか。

子どもたちには見えているようでもあり、有害なのかどうか分からない。

ただ、領地内の不穏な湖がひとつの鍵であることは感じられますね。

いや~、ホラーですね~。

ザ・ホーンティング・オブ・ブライマナーの魅力と個性

混乱と恐怖を彼らの見る事実の積み重ねで描く

舞台は長い歴史を持つお屋敷と広大な領地。

関係者以外は踏み込めない閉鎖的な空間でもあるお屋敷は、お屋敷自体が秘密を抱えています。

秘密らしきものの正体を指し示す出来事の一つ一つを、幼い兄妹の目を通し、お屋敷で働く者たちを通し、そしてダニの目を通して事実として積み上げていきます

彼女・彼らを混乱させるものが、心の中からくるものなのか、外的な、霊のようなものからくるものなのか、わからないゆえの恐怖が同時にある。

サイコホラー的な部分の緊迫感に牽引されて物語が進みつつ、人間とは何なのかという部分を彼らともう人ではない者たちによって描き出されるドラマでした。

彼らの現実を映像にする技術と表現方法

物語に登場する一人一人が見て、感じる出来事すべてを映像として捉えながら、物語も進んでいく。

混乱するしかない登場人物に対し、見ている私たちは謎は謎として物語についていくことができます。

表現が複雑で難しいシーンは多々あったと感じましたが、置いてけぼりを食うことはありません。

映像における表現方法・技術といったものを持つ制作陣による高度なお仕事であったことに感服するしかありません。

ザ・ホーンティング・オブ・ブライマナーが描いたもの

感情・情念を持つ人間の尊さと哀しさ

人がこの世を去ったあと、持っていけるものは何なのか、また、残るものは何なのか

私は、どれほど思いを込めたかという大切な人への想いじゃないかなと思っているのですが、それは、残された人の心を温かくする思い出であること限定です。

この物語の中では、強い思いを込められたある物事がすべての不穏な出来事のおおもととなっていることが分かってきます。

この“大元となったものの思い“は、受け取る人を失った時に空虚で無意味な執着になっていく

本作は、そんな”思いのなれの果て“を描いていたと言えます。

尊い思いの果てと哀しい思いのなれの果て。

尊いものになるのか悲しいものになるのか、それは受け取る人がいてこそ

ザ・ホーンティング・オブ・ブライマナーとは

人の生きた場所に残った向かう場所のない思い
刻み続けられる永遠の時に洗い流されて行く記憶の儚さ

ハマリ度は

 4

アンソロジー第一弾だった「ザ・ホーンティング・オブ・ヒルハウス」よりも壮大で情報量が多く、描かれていたものが多かったという印象です。

しかも、その人を形作っていたものの本質を指し示すものとして描かれていたことも人間ドラマとしての深みの一つだったようです。

語り部の語る幽霊物語の主人公ダニのエピソードは後半のネタバレの部分でしか語れませんが、彼女の抱えたものや、彼女が関わることになった人たちの想いなど、見終わったあとに残る余韻の切なさは、ホラーを見た後というよりも、深いヒューマンドラマを見た後の感覚です。

大丈夫かも??と思える方は、ホラーという部分にひるまずに見てもらいたいなと思います。

本作は今すぐNetflixで観られます

ここから後半はネタバレがあります
ご注意ください。

ネタバレあらすじ

物語の謎だった部分について、ここで見も蓋もなくネタバレしていこうと思います。

望まれない方は、ささーーーっとスクロールしてしまってください。

お屋敷には幽霊はいたのか

いました。何人も。

お屋敷からは出られない、あるいは決まった部屋から出られない、なぜそこにいるのかいまだにわかっていないものたちや、まだ死んで間もないものなどさまざまでした。

そして最も重要だったのは、彼らをこのお屋敷から出られなくする“重力”を持つ亡き者がいたことでした。

この屋敷に刻まれてしまっていた出来事とは

屋敷を含む領地を治めていたウィロビー家の時代にさかのぼりました。

屋敷を守る思いと家族への思いを強く持っていた当時の女主人が無念の死を遂げたことで屋敷と敷地内の湖にその思いの念が残り続けることになりました。

子を思う思いに駆られて屋敷をうろつき、屋敷の財産に手を伸ばすものを成敗する。

なぜそうするのか、もう理由は分からないほど時間が過ぎ去り、ただその衝動だけで生きるものを抱きしめ、排除する亡霊であり怨霊

彼女が無念の死を遂げた事情と募らせた怨念の表現も見事でした。

結末は

子どもたちを守り抜こうとする中で、ダニは霊が求めているものを知ります。

フローラを連れ去ろうとした女主人の怨霊に、自分に憑依を許す言葉を掛けました。

怨霊による領地内の重力は消え、とどまっていた霊は解き放たれ消えました。

ただ、怨霊をその身に受け止めたダニは、その後十数年いつ目覚めた怨霊によって身近な人を危険に陥れるか注意を払ってきました。

ついにその時が来たと気づいたダニはあの湖の中に、怨霊をとり込んだまま誰も傷つけないために沈みました…。

ダニを愛したジェイミーが、その哀しい一部始終を知っていました。

感想

怨霊に対する解釈の興味深さ

まず、怨霊というものに対する解釈がとても興味深いと感じました。

生前の記憶が鮮明な間は姿かたちもまだ生前のままであるのに対し、時間の経過と共に彼らが記憶の断片になっていくにつれ、目や鼻といった顔のパーツを失っていきます。

彼らは、常に強い思いの残る記憶に引っ張られていくけれど、時間と共にそれすらも薄れ、感情の片鱗だけが残っていく

どこにも行けず、この世をさまよう怨霊が、そこに存在する意味を忘れ、ただ残った感情にのみ突き動かさるのみという部分。

さいごに残るのは生への執着ゆえか、命ある者との同化が最も強い願望となっていく。

忘却の癒しと恐怖

自分自身が存在する意味が確実にあったはずなのにそれが分からない。

自分自身にとっても、他の人にとっても恐怖はそこにある。

コックのオーウェンが、認知症のお母さんを介護していたというエピソードにもつながる含みがあると感じました。

自分は忘れてしまっても、代わりに記憶していてくれる人の存在の心強さ

オーウェンはお母さんの代わりに多くのことを記憶し、亡くなった親しい人を偲び続けます。

愛憎・執着のあとの忘却という、ひとつの癒しにもなるステップが、ある者にとっては恐怖となるけれど、偲んでくれる人がいる限り安らかに癒されることに。

ラストのささやかな反転の演出が魅力的

時間が経ち、人々の記憶から消えていく誰かをもう一度新たな記憶に刻んで欲しい願い

そういった願いが形になっていたのが、この「ザ・ホーンティング・オブ・ブライマナー」の物語でした。

つまり、ある新郎新婦の結婚式前夜の語り部が語った物語そのものが、自己を犠牲にし、すべてをその身に背負うことで愛する人を守り抜いたダニの物語であったことでした。

語りべはダニを愛し、ダニの最愛の人だったジェイミー

物語を語りだした当初、私は、語り部こそがダニだと疑っていませんでした。

最終話まで来て、あ、ジェイミ―だったのか・・・と涙ぐむことになりました。

そしてもう一点、生死を何度もかいくぐり、ダニに命を救われた子どもたち、マイルズとフローラ。

結婚を控えていたのは、その頃の記憶を一切忘れてしまったというフローラでした。

他人事として聞いてくれていい、ただダニの物語をぜひ、フローラの記憶にも刻んで欲しかったジェイミーの願いが込められたストーリー。

また、視聴者に向けたささやかな反転のシーンでもありました。

さいごに 脚色による重層的な物語の壮大さ

ダニたちがブライマナーで経験した出来事は1987年のロンドン

ダニがアメリカから逃げるようにイギリスへと来たきっかけが、婚約者との別れと、彼の事故死への罪悪感でした。

ダニはレズビアンであることをついに明かし結婚をやめたいと婚約者に別れを切り出した直後の事故死、それは偶然でしたがダニの心には、別れたこともその理由も誰にも明かせない苦しさを抱えていました。

語り部が女性だったことからミスリードを誘いつつ、物語を最後まで見れば物語の本当の姿が見えてくる

ヒューマンドラマ・ホラー・ゴシックロマンス・超常現象のあるミステリ的な部分や、セクシャルマイノリティーだった主人公の葛藤などを盛り込んでいて、重層的で壮大な物語にドップリとつかりました

ベースとなった原作は1898年の小説ということで122年前の作品。サイコホラー的作品のはしりともいわれているようです。

ドラマは、斬新な解釈と脚色によってとても現代的。

すんなりと受け止めていける作品でした。

はぁ~マイク・フラナガン監督天才か。

おススメです!

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