2021年公開の「この夏の先には(盛夏未来)」は、2006年「花蓮の夏(盛夏光年)」のレスト・チェン監督作。
17歳の受験生女子高生の家族と初恋というプライベートな青春時代の物語。
初恋とはいえそこはレスト・チャン監督。
恋のふわふわした感覚も、現実には自分の想像通りにはいかない思わぬ事情や事態に心がついていけないしんどさも描かれていきます。
サラッとみれば思春期を超えたティーンの初恋物語ですが、私は女子高生チェン辰が恋をする男子生徒宇星ユーシンのセクシャリティに起因する彼の思いもあわせて胸にきました。
ティーンの恋を瑞々しく描きながら、その年頃だからこそ直面して感じるしんどさでえぐってくる物語が好きでした。
今回は作品・キャスト情報、そして視聴感想を語っていきたいと思います。
今回、ネタバレを気にせず語っていきますのでご了承ください。
作品情報
監督・キャスト
監督:レスト・チェン
- 花蓮の夏(2006)
- 101回目のプロポーズ SAY YES(2013)
- 20歳よ、もう一度(2015)
- この夏の先には(2021)他
同性の親友を愛した青年を主人公にした2006年の映画「花蓮の夏」で、青春期の彼らの恋を瑞々しくそしてリアルな苦みも共に描かれています。
劇中の空気感、俳優さんがたの演技、そして余韻までとても好きな映画です。
キャスト
- チャン・ズーフォン(チェン 辰)
- ウー・レイ(ユーシン 宇星)
- ハオ・レイ(チェン母) 他
主演のチャン・ズーフォン(またはツィフォン)は2001年生まれ。子役として活躍し、主人公の幼少期を演じて10歳以下の年齢で百花賞新人賞を受賞している実力派。
ウー・レイは1999年生まれ。彼も子役として活躍されてきた俳優さんで、私は「瑯琊榜」の飛流くんだと知ってあっと膝を打ちました。
ビジュアル…✨
あらすじ&予告編
いやもうね、幻想的な美しさを恋の煌めきのイメージに重ねてある素敵なシーンが終盤クライマックスのように出てきます。
作品によっては海だったり夜空だったり。本作は音楽と光なんです。
冒頭あらすじ
受験前日にプールに入って体調を崩し失敗したチェンは、親からの”なぜ”の責めに対して「失恋した」と返答。
相手は誰かと詰問され、TikTokでDJをする姿を投稿している同級生のユーシンだと嘘をついた。
留年すると、そこにはユーシンが。
勉学に集中せず恋愛などをすれば受験に失敗する例として、担任に二人を別れた恋人同士だと大々的に紹介される羽目に。
ユーシンからなぜそんな嘘をついたのかをしつこく聞かれているうちに二人は自分の事情を語り合う友達に。
チェンは親の不仲の問題。ユーシンは好きな人に振られてしまった辛さと未練を。
やがてチェンはユーシンに惹かれていることを隠せなくなっていくのだった。
この夏の先には の魅力と個性
それはもう瑞々しい主演二人の演技
- クラスに絶対いそうな女子生徒チェン。
- チェンに別れた恋人だと嘘をつかれてしまうイケメンの人気者ユーシン。
自分自身の事情を孤独に抱えて辛くなっていた二人に、それを話せる相手ができた。
自分の力ではどうすることもできず、かといって諦めることもできない非力さともどかしさを客観的な目で見てくれる友達。
時に励まし合い、時に共犯者となり、時に現実を教えてくれる友達。
ただキラキラしているだけではないんです。
ズーフォンとレイは、等身大の二人を生き生きと見せてくれたんです。
親の離婚、信じていたものが消えていく怖さ
すでに両親が離婚していたことを知ったチェン。
受験のために娘には隠し続けてきた両親の現状を自ら知ってしまったチェンの衝撃と悲しさと不安はそれはもう大きかったんです。
仲直りしてくれるかもしれないという願いを諦めきれず、受験の間は全力で自分を支える親の復縁の可能性に縋り留年していました。
目を背けていた現実をユーシンという曇りのないフィルターを通して見えてきたものは、もう戻ることはできない両親それぞれの新たな相手との人生でした。
愛した人への未練、失恋の痛み
そもそも受験をスルーしていたユーシンは、好きな人に拒絶されて北京へ会いに行こうとしたことが理由でした。
人気DJであるというその人に振り向いてもらいたくてDJ活動とSNS投稿を頑張るも、もう連絡すら拒絶されてしまうようになっていました。
ユーシンが好きなDJ MINGはおそらく男性。
映画の制作・公開は中国も対象であることから同性愛表現は極力避けてある可能性は高く、”そうである”とどこでも断言はされていません。
けれど、
- ユーシンのお父さんが、息子がお嬢さん(チェン)と過ちをおかすことは無いと断言した
- ユーシンがMingの自宅に電話した時、Mingに取り次いだのは男性でMingは無言で切った→
- Mingは女性だと一度も明かされていない
- 北京でのフェスで現れたMingは遠目で性別は判別不能
- 女性だと断言できず
- 「この先好きな人と両想いなれるならどんなにいいか」
- 希望や切なさよりも、難しさを込めた口調。好きになった男性が同性の自分を好きになってくれる率を暗に込めたかのようにも聞こえる
これらのことから、私はユーシンがフェスの最中チェンにキスをした理由をこう考えます。
一度は彼女のキスを避けてチェンを悲しませたことがありました。
今、自分を諦めてもらうしかない彼女への申し訳なさと、好きになってくれた感謝の意味もあったと感じました。
笑顔で涙を流していたチェンは、それを理解していたと思います。
この夏の先には とは
多感な時代の二人が出会い一緒に乗り越えたもの
家族・愛、訣別と前進のしなやかな青春物語
ハマり度は
4
思ったよりもハマりました。
「花蓮の夏(盛夏光年)」の監督さんによる「この夏の先には(盛夏未来)」という映画があると気づき、盛夏シリーズやんしかもネトフリにあるやん〜と気軽に再生をしたところ、結局するすると最後まで見てしまったんです。
決して甘くはない初恋物語であり、そこから一歩大人へと歩みを始める二人の若くしなやかな強さを感じられる物語。
けれど、彼らは決して強靭なわけじゃない。一人じゃやっぱり大変で、時には誰かの肩を借りることも必要。
チェンとユーシンは、辛かったひと時を共に過ごした良き友達となれる関係性をこの時築いたのではとも感じられました。
OSTがほんとよかったのよ
五月天「青空未来」
本作も「花蓮の夏」から引き続き五月天。
「盛夏未来」のメイン&エンディングテーマがこれ。
味わいが〜。
Chainsmokers&Coldplay「Something Just Like This」
ユーシンが好きな音楽としてチェンに紹介していた曲で、終盤のライブでもリミックス版が流れました。
Kidnap kid「Moments(feat. Leo Stannard)」
Mingがフェスでプレイした曲の一つに中毒性抜群のこの曲もありました。
視聴方法(2023.2.7現在)
Netflix Japanにて配信されています
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