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レスト・チェン監督による高校生たちの友情と恋の物語。
ただ、恋は決して一筋縄ではいかず、また恋とはそもそも何なのか、誰かを求めるほどに思い慕い愛し合うことと恋人であるということとは一体何なのかと迷いの中にスッと落とされてゆく物語。
BL沼の方はすでに視聴された方も多いでしょうね。
「We Best Love」で抜群の存在感と演技力を見せつけたレイ・チャンと「次の被害者」「最後はキミを好きになる」のジョセフ・チャン主演。
「花蓮の夏」の世界に沈んだ私の感想を記しておきたいと思います。今回ネタバレしまくりますのでご注意ください。
小学生の守恒は問題行動を繰り返し、先生から叱られクラスの友達から仲間にも入れてもらえなかった。
彼のガイドとなる友達とペアを組むことで上手くいくのではという専門医のアドバイスから、担任は成績も良く落ち着きのある正行を選んだ。
二人は親友となり高校生に。
だが、正行の幼馴染慧嘉が香港から戻ったことで正行は守恒に恋愛感情を持っていると気づくのだが、同時に慧嘉の存在が親友同士の関係に変化を生んでしまう。
慧嘉が気になる守恒に対し、正行が守恒を思っていると知りながらも慧嘉は守恒を好きになってしまった。
受験を控えた正行のために関係を隠していた二人。けれど、親友だからこそ隠しごとをしたくなかった守恒からの告白に正行がひどく傷ついた。だが傷ついた本当の理由を守恒は知らない。
守恒を避けるようになった正行に、彼を失いたくない特別な思いが守恒に正行を抱くという行為に駆り立てた。
慧嘉への申し訳なさ、彼を受け入れた悲しさに揺れる正行。
そして正行は告げるしかない局面で愛していると守恒に告げる。
守恒は正行と離れたくない、彼のいない人生は考えられない。でも慧嘉も好きだった。守恒の返事は「正行は親友」。
親友…それは今はもう、彼に求める答えではなかった正行の涙。
レイ・チャンに尽きる…。
本当にあの表情、あの目。
正行の自分の感情の重さ、辛さ、悲しさ、惨めさ、そして期待からの絶望が逐一伝わってくる。
優しく繊細ゆえに、彼の中にある愛は彼の望む形で実を結ぶことは難しいという悲しさが残る。
曖昧な関係は正行にとって永遠に真綿で首を締め続けるようなものとなるだろうし、恋人同士の守恒と慧嘉を友として間近で見るなど残酷でしかない。
初恋が辛い形で幕を下そうとするその瞬間を確認した正行の悲しみが胸に迫りすぎて本当に堪らないんだ😭
守恒には発達障害があると見受けられます。
純粋だけれど、行動の適不適を自分では判断できず、幼いうちはコミュニケーションもままならず、なぜ叱られるのかどうすればいいのかわからなくて不安だったはず。
守恒は、正行が孤独で寂しく不安だった彼を救ってくれた大きな存在であることを慧嘉に涙を流して伝えています。
今もこれからも彼なしでは生きていけないと。
守恒は努力では変えようのない生きづらさを一生抱えていると自覚しています。それを丸ごと受け止めて寄り添ってきたのが正行。
慧嘉は、守恒の行動そのものが答えであり、それは正行への愛と同一のものだと感じたのではないでしょうか。彼女の流した悲しい涙はきっとそれを知ったからかも。
成長とともに、パターン学習や常識的な思考を正行のフォローもあり身につけていた守恒。けれど、彼の個性では正行も慧嘉も愛の対象でした。
慧嘉を選んで正行を失うことを避けたい守恒は、正行に親友で居続けて欲しいと思ったはず。
けれど、それが正行も慧嘉も悲しませることになることまでは思い至らない。
わかっていてもそう言うしかなかったとも言えるけれど、残酷であることには変わりがない…。
正行は慧嘉のためにも守恒と距離を置くでしょう。
ただそうなったとて、慧嘉は正行を失った守恒の喪失を支えられるかどうか、と言う問題も生まれそうです。
韓国シネ21のインタビュー動画を保存かつUPされている方がいらっしゃいました。（もうシネ21にもありません）
ベッドシーンは監督もお二人も初めてで、一度の撮影で完璧に終えようと準備したそう。撮り直しなしのワンテイクだったんですね。（読み違えていたらごめんなさい🙏）
レイ・チャンが俳優をやっていて面白いと思う部分は、想像力を駆使して作品によって違ったキャラクターを生み出せること。彼の演技姿勢はずっと貫かれているのでしょうね。
このインタビューで、レイ・チャンは高校時代アルバイトしているときにスカウトされたと話しています。カッコ良かったのは間違いない！
＊字幕で日本語が出せます
メロディアスでパワフルエモーショナルなロック。
悩みも多く、抑圧感に身動き取れなくなる思春期の葛藤と、それを振り払おうと駆けるような熱を感じます。
親友に恋をして知った自分自身と切ない現実
容赦無く瑞々しく描かれる青年たちの苦い恋の行方
4.5
花蓮の夏は、迷路に迷い込み出口を見つけられず、出口を見つけても必ずしも笑顔では出られない、無邪気な少年時代との訣別を描いた物語。
セクシャリティー、恋、愛、友情。
彼ら三人は、愛する人の愛を必ずしも手にすることができないことを知り大人への扉を開けて進むしかなくなりました。
深く深く恋すればするほど痛みは大きい。けれど、誰かを好きになることは止められないと言う実体験とともに。
本当に胸にぐぐぐぐっとくる映画ですよね！
視聴可能でしたらばぜひご覧になってください。
habbit視聴方法のあと、プチ情報と余談感想を
この条件が揃っていたので視聴可能でした
日本で視聴できる媒体が見当たらず、調べたところアメリカではNetflixで配信されていました。（そのほかに配信対象となっている国もあります）
私はネトフリにNordVPNでアメリカから繋いで視聴しました。
VPNとは何かこちらでお話ししています
好きになった女の子という意味で慧嘉は恋人として守恒に選ばれた形になりました。
けれど、結びつき・絆という面で見ると、守恒は正行に強い関係性を感じています。
事故に遭い死に直面したであろうあのとき、守恒は正行を求めていました。
彼の人生に欠かせない存在であり、絶対に失いたくない存在、体ですら繋がりたいあまりに特別な存在。
守恒の中にある（自覚していないかもしれない）正行への思いを常に突きつけられるであろう慧嘉が寂しさに耐えられず、また彼の幸せを願って去る可能性の方が高いと私はつい思ってしまいます。
まだ彼らは20を過ぎたばかり。
この痛みがいつか和らぐ日も来るだろうし、自分を愛してくれる誰かと結ばれる日がきっと来ると信じます。
小説版では、すでに正行は事故でこの世を去っているところから回想するように物語が描かれていくようなんです。→Wiki
守恒に思いを告げ、彼にも受け入れられたという妄想を抱いていたとか。
実際にキャラクターとして演じてみた時、あるいは実写として世界を作り上げてみた時、彼らならこうしたはずだというリアリティが浮き上がってくることがあるといいます。
これはレイ・チャンも出演された「We Best Love」の撮影秘話で語られていたことと重なります。
きっと映画の中の彼らは、友情と恋心、利己的な願いと生々しい自分の後悔を経験する中で、妄想を抱くことすらできない現実を目の当たりにしたはずです。
「花蓮の夏」が刺さりまくるのは、若い彼らのリアリティが映像からも押し寄せてくるから。
レイ・チャン中心に語ってきましたが、主演枠で数々の作品に出演されているジョセフ・チャンさんあっての守恒正行でした（感謝🙏）
2021年公開のレスト・チェン監督による盛夏シリーズとも言えるティーンの悩みと恋を描いた映画が「この夏の先に」。
「花蓮の夏」をみた後、「この夏の先に」がNetflixにあると気づいて観てみました。
女子主人公は男子に恋をするのでヘテロの初恋物語ではあるのですが、彼女が恋する彼ははっきりとは描かれていませんが、ゲイ（もしくはバイセクシャル）だと判断できる人物でした。
また「花蓮の夏」と共通するテーマも含まれていました。
監督が描くティーンのラブストーリーはなかなかに甘くない、そこがむしろ気に入っています。
詳しくはこちらで語っています。
好きな守恒に思いを抱くだけで伝えることなく、自分の恋を悲しく見つめ、好きな人に受け入れてもらえない絶望に悲しく沈んでいく目の色がリン・ズーホン演じるWBLの高仕德と重なって見えることが何度かありました。
鼻梁のくっきりとした美しさのあるお二人で、繊細な表情が本当に似ているんです。
レイ・チャンは がっしりと鍛え上げられた今よりも「花蓮の夏」の時は少しズーホンに体型が近いスリムさだったからかもしれません。
いとこ役は本当にピッタリだったななんて改めて思ってます。
あわせて読みたい
レイ・チャンの凄さを改めて感じてもう一度チェック！「We Best Love」。
彼の演じた守一は感情を理解できないという生まれ持ったハンディキャップを抱えている保健医であり飲食店オーナー。彼の物語はこちら後編”2位の反撃”で詳しく描かれます↓
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