今年度、これほどまでに新鮮な旋風を世界に巻き起こした映画があったのか?というほど全世界で大反響を得ている「パラサイト 半地下の家族」を先週劇場で見てきました。
アカデミー賞でも国際長編映画(全編英語ではない映画作品の部門)だけでなく作品賞にもノミネートされた本作は言葉を越え映画としての魅力が評価されています。
- 第92回アカデミー賞で4冠!獲得となりました
- 作品賞 監督賞 脚本賞 国際長編映画賞
- アジア・全編非英語作品
結果、歴史的快挙となりました。
私も本作を見て感じたところを語っておきたいと思います。
現在劇場公開中ですので、ネタバレや詳細なあらすじはなしでいきたいと思います。
作品情報
公開・製作国:2019年 韓国
原題:寄生虫
主な受賞歴
第92回アカデミー賞 作品賞受賞作
カンヌ映画祭 | パルム・ドール賞(最高賞) |
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第92回アカデミー賞 | 4冠:作品・監督・脚本・国際長編映画賞 |
全米映画俳優組合賞 | キャスト賞(最高賞) |
ゴールデン・グローブ賞 | 外国語映画賞 |
放送映画批評家協会賞 | 監督賞・外国語映画賞 |
全米映画批評家協会賞 | 作品賞・脚本賞 |
青龍映画賞 | 作品賞・監督賞・主演女優賞チョ・ヨジョン・助演女優賞イ・ジョンウン |
監督・キャスト
監督:ポン・ジュノ
ユリョン(1999)
殺人の追憶(2003)
グエムルー漢江の怪物―(2006)
母なる証明(2009)
スノーピアサー(2013)
オクジャ/okja(2017)
パラサイト半地下の家族(2019)他
脚本
ポン・ジュノ
ハン・ジンウォン
キャスト
ソン・ガンホ(キム・ギテク)
チェ・ウシク(キム・ギウ)
パク・ソダム(キム・ギジョン)
イ・ソンギュン(パク・ドンイク)
チョ・ヨジョン(ヨンギョ)
イ・ジョンウン(家政婦)
パク・ソジュン(ミニョン)特別出演 他
ポン・ジュノ監督の輝かしい経歴
ポン・ジュノ監督は脚本も書かれ、高い評価を受ける映画をこれまでも生み出されています。
韓国内にとどまらず、海外の俳優陣との撮影や国境を越えたテーマを選ぶ監督の作品には、どの国にも存在する普遍的なメッセージが内包されているためといえるのでしょうね。
冒頭あらすじ
狭い半地下に暮らすギテクら家族4人は職がなく、内職で食いつなぐ貧しい暮らしをしていた。
ある日、数年浪人中の長男ギウは、一流大学に通う友人ミニョクから「留学に行っている間だけ裕福なパク家の一人娘ダヘの家庭教師をしてくれないか」と提案され引き受けた。
経歴詐称しつつうまく立ち回りパク家に気に入られたギウは、ダヘの弟の美術家庭教師を求める奥様に外国帰りのいい先生がいるといって妹ギジョンを紹介するのだった。
予告編
ここで公式90秒予告編をご紹介します。
物語の導入部分、衝撃の展開へと駆け抜けていくだろう本作の世界が垣間見えます。
パラサイト 半地下の家族の個性と魅力
コミカルとスリラーを紙一重に描く究極のブラックユーモア
ジリ貧の中でも家族4人たくましく生きているキム家のもとに舞い込んだ裕福な家の家庭教師という高額バイト。
チャンスをみるみる引き寄せていく家族の就職作戦とも呼べる連係プレーは、一つ一つミッションをクリアしていくようなコミカルさとスリルがあふれています。
テンポの良いストーリーにどんどん引き込まれていきました。
しかし、すべては嘘で塗り固めた詐欺行為。
隠しきれない本当の姿がスリラーとも呼べる出来事を引き寄せていく怖さをふり幅にして効果的に描かれた見事なエンターテイメント要素でした。
普遍的で深い社会問題を内包させたテーマ
厳しい就職難と開き続ける格差の姿を二家族の生活の対比で見せながら、交錯してしまった二家族の価値観と視点の差異を浮き彫りにします。
裕福なパク家の幼い長男ダソンだけが気づき見ていたもう一つの層の人々の存在と姿。
気づかないことは ない も同然、気づかなければ いない も同然?
私たちが見ていないものは何なのか、もしかしたら見えないだけで、においのように、暗闇に溶け込むようにそこにあるはず。鋭い社会派の要素でした。
チョン・ジェイルが引き上げた映画の世界観
ポン・ジュノ監督作品でたびたび音楽を担当されてきたチョン・ジェイルさんは卓越した才能を持つ作曲家でありプロデューサーでありミュージシャン。
名シンガーソングライターのパク・ヒョシンさんと2014年ころからともに曲作りやステージを作ってこられた方として私には愛着のある方で、国家規模の式典で演奏されたこともあります。
そんなチョン・ジェイルさんの曲が本作の世界観をより高みへと引き上げたと言ってもいい。
特にこの曲はとても印象に残っています。
チョン・ジェイル作曲「The Belt of Faith」
パラサイト 半地下の家族 とは
ブラックコメディとスリラー 開く格差
目に見えなくてもそこに存在するものがあると語る鋭い社会派映画
ハマリ度は
5
ポン・ジュノ監督作品の中で、「殺人の追憶」「母なる証明」を見た時に感じた時のような、“あまりに鮮烈でありながら何か腹の底に澱が沈み込むような感覚”がしばらく続く作品でした。
「パラサイト」を見終わり逡巡する時間の中で、なぜあの人があそこであんな行動に出たのか?なぜ?という問いが生まれては、いやそこじゃない、それが問題なんじゃないとなり、
では、あの人があんなことしなければよかったのか?という問いが生まれては、いやそこじゃないそこじゃないんだとなる。
どこかで完全にボタンの掛け違いがあった感覚と、かけ違いをもう戻せないほど遠くまで来てしまった諦めの感覚のような何か?
いや、それよりももっと前からすでに誰かが掛け違っていて今はもうどう手を打っていいかわからないところまできている感。
ポン・ジュノ監督は「資本主義を狭く深く掘り下げた」と語られていました。
貧富の格差を描いた近未来映画「スノーピアサー」のような作品もとられてきた監督の視点とテーマ、切り口と見せ方といったセンスが、本作で秀逸な一本として完成したように感じた素晴らしさでした。
アカデミー賞の前哨戦ともいわれている全米映画俳優組合賞で最高賞となるキャスト賞を受賞した本作。
もし、アカデミー賞で作品賞を取ったとすれば歴史がまた塗り替わることになりますね。
塗り変わってしまいました!!
ダソンの絵が気になっていたのですが
劇中のダソンの絵、結構いいとおもうなぁ?と思っていたのですがチョン・ジェフンというプロの方による作品でした(当然か(笑))
情報豊富でいつもお世話になっているむささんのツイートを共有させていただきます↓
最後に余談ながら
2019年Jtbcでチョン・ジェイルさんがパク・ヒョシンさんと音楽番組でされた「野生花」スタジオライブの様子をご紹介しておきます。
映画音楽からポップスまでジャンルの垣根を越えるチョン・ジェイルさん。ピアノを弾かれる姿がいつも印象的です。