2018年末から放送開始され、ヒョンビン、パク・シネが共演したことで話題となったtvN放送&Netflix配信の韓国ドラマ「アルハンブラ宮殿の思い出」。
VFXを駆使したサスペンスで従来の韓国ドラマから脱皮を図ったような印象を受けた意欲的な本作。
個性や魅力など、私の感じたところを詳しく語っていきたいと思います。
ネタバレは後半にありますので、前半はネタバレなしでお読みいただけますよ。
作品情報・スタッフ・キャスト
放送・配信
初放送:韓国tvN 2018.12.1-2019.1.20 全16話
配信:Netflix
演出:アン・ギルホ
秘密の森(2017)
アルハンブラ宮殿の思い出(2018)
ウォッチャー 不正捜査官たちの真実(2019)
青春記録(2020)
脚本:ソン・ジェジョン
順風産婦人科(1998-00)
思いっきりハイキック(2006-07)
イニョン王妃の男w/キム・ユンジュ(2012)
ナイン:9回の時間旅行w/キム・ユンジュ(2013)
三銃士(2014)
W-二つの世界(2016)
アルハンブラ宮殿の思い出(2018)
独創的で複雑な設定に挑戦する脚本家
脚本のソン・ジェジョンさんが書かれる物語は独創的。
ここ最近はタイムスリップや二次元と三次元空間を往来するものなど、ファンタジックで複雑な設定に挑戦されています。
私も「順風~」以外すべて見ましたが、タイムスリップものの「イニョン王妃の男」と「ナイン」はハマり度評価MAXの5!ハマりました。
本作「アルハンブラ宮殿の思い出」は「W-二つの世界」のように実際にはない世界のモノや事が現実となってしまう予測不可能な事態に向き合う主人公たちを描いてありました。
映像へのこだわりを見せた監督
そして本作で演出を担当されたのは「秘密の森」を締まった作品に仕上げていたアン・ギルホ監督。
色味であったり、光の使い方であったり、そういった映像へのこだわりを感じていたのですが、本作はVFXを駆使したファンタジックな作品ゆえにそのこだわりが大爆発。
ゲームのシーンはもちろん、ドラマ部分の色調など、コントラストを効かせてあったり、色の彩度をあげて鮮やかさを出したり、ワンカットに青み・黄みがかったシーンを同時に使って人物の雰囲気に違いを持たせ心情を表現してみる、みたいなことも随所にありました。
絵がキレイだったりシーンの印象にも一役買っていて、ほぉ~と思わずにはいられませんでした。
本作は監督・脚本ともに、“製作費があればやってみたかったことを実現した”のでは?と感じてしまいます。
冒頭あらすじ
有名ゲーム会社の若き代表ユ・ジヌは、スペイン出張中にある画期的なゲームプログラムの購入打診を受けた。
そのゲームはAR技術を利用した体験型のRPGで、クオリティーの高さを実感したジヌはすぐさま契約を決定した。
開発者のチェ・セジュとは連絡がつかなかったが彼が未成年であることから、ジヌはその保護者である姉ヒジュに高額の申し出額での契約にサインしてもらうことに成功した。
ただ、このゲームはライバル会社の代表で元親友ヒョンソクも狙っていた。
ゲームにログイン中再会し、戦闘の末ジヌは勝利するのだが、翌朝ヒョンソクは遺体となって発見されてしまいジヌは戸惑うしかなかった…。
予告編
ファンタジックでサスペンスタッチ、ロマンスの香りも漂う予告となっていますね。
字幕版予告がNetflixでもご覧になれます。こちらは字幕もついています。
▶︎▶︎Netflix予告編へ
アルハンブラ宮殿の思い出の魅力と個性
韓ドラ業界初?ARをテーマにした物語
現実世界とデジタル処理された映像を重ねて、今そこにないものをあるように見せる技術AR。
最近だと、ポケモンGOをイメージすると分かりやすいですね。
そのAR技術を使ったゲームによって想定外の事態が発生し、主人公が解決に奔走することになります。
最近の海外ドラマではデフォルトとまでになっているVFXの技術を駆使してARゲームのシーンを作ってありました。
映画で活躍していたヒョンビンを久しぶりにドラマに呼べたことで駆使することができたのではとしみじみ感じます。
公式の動画をツイートしたクリップ映像がこちら↓
アルハンブラ宮殿の思い出、ユーザーがいる現実世界にコンピューターで作られた映像を重ねてまるで実際にみているかのような体感が得られるAR技術を巡る物語になるみたいなんだけど、主人公が体験してるシーンが公式から上がってた。ヒョンビンの演技がいいからわかりやすい pic.twitter.com/1BGLXXYICJ
— ドラマはびっと (@drma_hobbit) 2018年12月2日
こんな風に、主人公ゲーム会社社長ジヌはグラナダの町を舞台にした未発表のARゲームを目の当たりにし買い付けを決意します。
今後はグラナダが魔法のような都市として有名になり、ゲームを楽しむ人々が押し掛けるはずとジヌは確信しました。
サスペンスが物語を牽引する
ゲーム中のシーンは剣を振り回したり銃撃戦だったりアクションシーンが満載。
開発者セジュの姉ヒジュとのロマンスもふわっと描かれますが本作はサスペンスドラマ。
- セジュは一体どこへ行ったのか?
- ゲームで倒したヒョンソクがなぜ現実に命を落としたのか?
- ログアウトしているのになぜヒョンソクが現れ攻撃してくるのか?
分からないことだらけ。
ジヌは命がかかっているために必死で解決策を求めるのです。
アルハンブラ宮殿の思い出とは
アルハンブラ宮殿のあるグラナダを舞台に作られたARゲーム
が引き起こした不可解な事件の答えを求めるサスペンス
ハマり度は
2.5
本作が挑戦していた映像へのこだわりは十分に伝わり、なぜ不可解な事件が起きたのかを知りたくて主人公ジヌとともに追う感じで最後まで見ました。
パク・シネを美しく撮っていたのでロマンスも期待しましたが、そこはあくまで一つの要素どまりでした。
普段韓国ドラマを見ていない視聴層にもアプローチできるような作品には十分なっていたのでは?と感じます。
ここからはネタバレがあります
ご注意ください
ネタバレあらすじ
本作はジヌの奮闘を描く、ソロ主人公の物語でした。
で、ヒジュは華。
本作ジヌがなさねばならなかったのは
- セジュをみつけること
- ヒョンソクに殺されないこと
- ヒョンソク殺害犯として逮捕されないこと
- 会社やゲームをやる人を守り抜くことでした。
セジュをさがして
ジヌは推論を立てて段階を追ってセジュに近づいていきました。
まず、なぜセジュは姿を消したのか?の謎に対し、友人マルコをゲーム中倒したことにより、自分が倒したヒョンソクに襲われるように、セジュもマルコに追われているのではないかと考えました。
ヒョンソクのレベルは4とか5だったのに対し、セジュやマルコはゲームをやり込んでいて銃を扱える80以上となればセジュは逃げるのが精いっぱい。
攻撃を食らってしまえば実際に命を落とすことからどこかに潜伏しているのではと考えるのが妥当でした。
ジヌは周囲の懸念を受けながらレベルを上げ続け、90に達した時、マスター・セジュからの特別ダンジョンを受け取りました。
マスターを救出するためにアルハンブラ宮殿に向かったジヌ。けれど、救出ならず。
ただし、特別な“鍵”を手に入れました。
鍵の使い道
鍵の使い道にたどり着いたのは終盤近く。
セジュが作っていた姉ヒジュの顔をした平和のシンボルともいえるキャラクターエンマに鍵を渡すことで天国の扉が開くという。
エンマが鍵を受け取り開けた扉。
それは、なんと“バグの削除”でした。
バグの削除
そう、ヒョンソクなど現実の人間がゲーム中に命を落とし、ゲームのキャラクターとして存在し続ける理由や、逆にログアウトしているのにログイン中と同じ状況に陥るジヌ本人。
そのほか、特殊な“IDの中”に逃げ込んでジヌに解決してもらうまでは異空間に閉じ込められたままとなったセジュの状況も一種のバグ。
鍵をエンマに渡し、バグを削除したことでゲームはトータルリセットされることとなりました。
物語はハッピーエンドだったのか
バグ削除と共に解放され戻ってきたセジュ。
一方でバグだったと(解釈された)消え去ったジヌ。
1年後、バグが消え危険が無くなったゲームは無事製品化されジヌは会社を守り切った形となった。
自分の作ったゲーム内に閉じ込められ怖い思いをしたセジュはしばらく引きこもっていたが、ジヌの会社に温かく迎え入れられ心の傷は得意なゲーム開発によって癒されそうな予感。
けれど、ジヌは消えてしまい、世間的には失踪した状態でした。
ジヌはどこかにいると信じるヒジュは、発表されて間もないゲームにIDがない銃を持つ高レベルキャラクターがいることを聞きつけます。
バグとして削除されたジヌだったけれど、セジュいわく、マスターのダンジョンを成功させたことによって特別な権限を与えられIDの中に居場所を得たのではないかということでした。
でも肉体はどこに?バグの修正でジヌは元の状況に戻れなかったのかい?
え、、、本作的にはジヌは消えていなかったと言いたいのか?
いやいや、3次元に存在しない以上消えたと言えるのでは?
まって、そもそも、ゲームの中にいる存在をジヌと言っていいのか?
ハッピーエンドなのかどうなのか、ヒジュ的にはログインしたら会える!という喜びが見えていたのでそれはそれで充分ハッピーなようでした。
感想
映像の美しさ、チャレンジングなテーマ、宙ぶらりんな謎の答えが知りたい、そういう思いもあって最後までじっくり見ました。
正直、ロマンス部分は期待していなかったし、「W-二つの世界」の時のように答えが出たようで出ていないかすかな感じが残る可能性も一応含んでみていました。
見終わってみて、やっぱり答えはあったようでないやんwwwwとなりました(笑)
とりあえずバグで片付けられてしまった感が否めないwww
でもこういう片付いた感!みたいなエンディングを迎える海外ドラマを過去にいくつか見たことがあります。
あれはどうなったんだ?とかあそこの理屈が合ってなくない??とかいうのはSFものやタイムスリップもので追及したらキリがないのと似ている、としておこうという気分です。
それでもOST
なじみのある韓国ドラマらしさを保っていたのはOST
華を添えたロマンスシーンで繰り返し流れた
Ailee「Is You」
声も歌い方も大好きなAilee、何度聞いても良い曲です!
そして、後半のロマンス部分の映像が盛り込まれたOST
ヤン・ダイル「I’m Here」
映像きれいですよね~。
本作はミステリーサスペンスなのですが、こうやって予告もサントラもメロ部分を推してくるのでついつい期待しちゃいますよね。
さいごに(ピリ辛)
「アルハンブラ宮殿の思い出」は一言で言ってゲーム世界と現実世界の境界を失わされてしまい翻弄されたある一人の男の物語でした。
ヒョンビンがその過酷な一人芝居を見せ切ったと言ってもいい。
残念ながら、なぜ架空世界と現実世界の境界が失われたのかの答えは最後まででません。
そうなるきっかけはあっても、説明できる規則性もルールも簡単には見出せない未知の何か、とうような曖昧な答えしか残りません。
ラスト、ジヌがゲームの中で生きていた!みたいなエンディングでした。
ジヌがもともとデータの塊のAIとかだったとしたら、(ウエストワールドみたいに)ゲーム世界の中で生き続けましたとさ、めでたしってなる可能性はありましたが、生身の人間でしたからね・・・。
例えば最初からスピリチュアルな何かの気配がありでもしたらもしかしたらまた違ったかもしれませんが、本作はゲームが引き起こす現象です。
人為的なものなのだから、答えはきっと出るはずだという思いを抱いてしまったし、論理的な答えが用意されているはずと感じさせる作りでした。
映画やドラマを見ていると、時々こういう過程を楽しんだとしておこうか・・・という作品に出会うことがあります。
実際のところ、本作の映像、色や風景の切り取り方、VFXなどはとても好きな仕上がりでした。
本作をきっかけに、今後の韓国ドラマにおける映像クオリティ=本作レベルがデフォルトとなっていったらいいなぁと期待しています。