韓国ドラマ

サイコだけど大丈夫 視聴感想 エキセントリックで美的な世界観 心の傷を癒していく彼らの愛の物語

サイコだけど大丈夫

キム・スヒョンの除隊後初主演作であり、「プロデューサー」(2015)以来5年ぶりのドラマ復帰作ということで話題を集めた「サイコだけど大丈夫」。

童話作家というヒロインの描き出す寓話の世界観をドラマにリンクさせていくスタイルで、映像美とストーリーの相乗効果が生きていた個性的なドラマでした。

子ども時代が彼らに及ぼした人生を生きる辛さなど、答えをどう出していくのかが気になるシリアスなヒューマンドラマであり、愛が生まれていくロマンスの要素なども盛り込まれた意欲的なドラマでもありました。

前半では、ネタバレなしで本作のドラマに寄せていた期待ポイントや魅力。

また、演出・主演俳優のソ・イェジとオ・ジョンセさんにも触れていこうと思います。

ネタバレあらすじや感想などは後半でじっくりと語っていきます。

作品情報

放送・配信

2020年 韓国tvN 配信:Netflix  全16話 

演出・脚本・キャスト

演出:パク・シヌ(シンウ)

ファントム(2012)(w/キム・ヒョンシク)
野王(2013)(w/チョ・ヨングァン)
エンジェルアイズ(2014)
嫉妬の化身(2016)
ボーイフレンド(2019)
サイコだけど大丈夫(2020) 他

脚本:チョ・ヨン

ジャグラス(2017)
サイコだけど大丈夫(2020)

キャスト

キム・スヒョン(ムン・ガンテ)
ソ・イェジ(コ・ムニョン)
オ・ジョンセ(ムン・サンテ 自閉スペクトラム症ASDを患うガンテの兄)
パク・ギュヨン(ナム・ギュリ)
キム・ジュホン(イ・サンイン) 他

美的感性あふれる演出の魅力

演出のパク・シンウ監督

これまで手掛けられたドラマはロマンス。

直近2作はロマコメ・純メロで、それ以前はヘビーなサスペンスの絡む激情タイプのロマンスでした。

本作は主人公たちがサスペンス色を身にまとったような重さを抱えていることが予告から感じられるので、まさに過去作の融合型ともいえそうです。

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そして、第一話を見て「ボーイフレンド」で感じたのと同じ、本作も画面の構図が素晴らしく、色彩が見事でした。

しかも今回は、ファンタジックなシーンでのカメラワークと映像効果、美術などさらに精緻で世界観の表現が多彩になっています。

絵本童話の世界を見せるシーンでも、その作家性にもこだわられていることが伝わってきました。

ソ・イェジ&オ・ジョンセをフォーカス

主演ソ・イェジのイメージと魅力

本作でヒロインを演じるソ・イェジは、映画とドラマ、両方で活躍しておられ、薄幸さと芯の強さを感じさせる役の多い女優さん。

OCN「君を守りたい~Save Me」(2017)→Netflixで配信中や、「無法弁護士」(2018)といったドラマで主人公を演じていて、彼女の渋くて人間臭い演技は印象に残るんです。

私が初めてソ・イェジを見たのが「夜警日誌」(2015)。

上品な顔立ちから出てくる、低く響く芯の強そうな声を持つ彼女が、スエさん(野王・仮面・映画「上流階級→Netflixで配信中)に似ていて印象に残ったことを覚えています。

実力派助演オ・ジョンセさん

「椿の花咲く頃 →Netflix配信中」「ストーブリーグ」など、ヒットドラマに立て続けにキャスティングされては存在感をいかんなく発揮している人気助演オ・ジョンセさん。

彼が今回演じられるのは、主人公ガンテにとって重荷であり、たった一人の愛する家族である自閉スペクトラム症の兄役サンテ。

母の愛、弟の思いやりと献身を受けながら、彼なりに精いっぱいの努力をしていて絵を描くことが何よりも好き。

ガンテやムニョンにとって、サンテの存在がどれほど大きいか、見進めるにつれてわかってくるのですが、オ・ジョンセさんはそんなサンテの不器用さと彼なりの生きざまを表現されていて涙あふれさせてくれました。

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ドラマ概要・冒頭あらすじ

看護士ムン・ガンテはASDを抱える兄サンテと生きてきた。

毎年2カ月間ほど決まった時期に兄のそばを離れられない事情があり、職場も10カ月ごとに辞め、再就職するということを繰り返していた。

人気童話作家コ・ムニョンは他人に共感ができないために、家族や周囲から誤解されてきた。

ガンテは小児病棟の朗読会にやってきたムニョンと出会った。

ガンテはムニョンの冷たい瞳に、昔思いを寄せた少女と重なるものを感じていた。

予告編

2人には過去に接点があったのか?

何か禍々しいようで、悲しい過去の経験・記憶。

人生を諦めていた、逃げていたガンテと、その気持ちが分かるようなムニョンですね。

ティーザー予告編

ここで、Netflix公式から出ているガンテ、ムンヨンそれぞれのフォーカスバージョン予告をご紹介します。

ガンテver。

ムニョンver.

それぞれ、過去や自分自身の中に重いものを抱えていることが分かりますね。

それによって、彼らの中に逃れられない何かがある気配も。

この二人が、奇妙な関わりの中で関係を深め互いを癒しながら愛を育てていくことになります。

サイコだけど大丈夫の魅力と個性

機能不全家族の呪縛から解き放たれていく癒しの物語

家庭の事情は一つとして同じところはなく、ムニョンはさておき、ガンテの家庭が機能不全だったと呼んでしまうのはお母さんの努力を思うと辛いところではあります。

ただ、ガンテの目線で見た時、お母さん亡き後、間違いなくガンテは家族の求める役割だけをこなす使命という名の呪縛の中で自分を捨てて生きてきたという現実がありました。

自分の人生を生きられない声なき悲鳴を上げていたガンテと、孤独の闇の中から、近づく人を威嚇して生きていたムニョンは共感したと言えます。

彼らの再会と、関係の深まりの中から、本当の愛やいたわり、孤独ではないことの心強さを知っていく物語に心を温められていきます。

寓話にのせて表現させる映像の妙

ムニョンは童話作家、そしてサンテは画力がムニョンに認められ、挿絵作家としての才能を開いていきます。

物語中、ムニョンの童話が個性的で美しい挿絵と共に彼らの心情とリンクさせて描かれ語られるシーンが幾度となくあります

ファンタジックな童話の世界と、そこで語られる寓話は、ムニョンやサンテだけでなく、見ている大人に向けた子ども時代のトラウマや思い癖に気づかせるような作用もありました

エキセントリックでダークなゴシック様式のムニョンのイメージと相まって、映像的にはとても美しく印象的に仕上げられていた妙味あるドラマでもありました。

極めて難役、演じた主演たちの実力

複雑で細やかな感情や感情の変化を演じないといけないという、かなりの難役だったガンテやムニョン

サンテ役はまた、ASDという先天性の症状を持っているという個性があり演じ方を工夫されたことでしょう。

映像や演出からアプローチできるものとは違う、俳優さんたちでしか出せないものが、キム・スヒョンやソ・イェジからは伝わってきます。

壁・バリアから出てみようとする姿、愛を知る姿、戸惑いつつ後退する様子、うまくいかず足踏みする絶望感、周りの協力を得て何かから解き放たれていく姿等々、じっと見ているとその変化が感じられる演技にため息が出るはずです。

撮影初日ビハインド動画

放送・配信を目前に、撮影初日の現場風景が動画で公開された冒頭のシーンにもその細やかさが垣間見えていて興味深いです。(日本語字幕付き)

ちょっとしたしぐさにも、キャラクターの性格やその場の感情とぴったりくる表現をさぐりながら演じていく俳優陣・演出家の息が感じられますね。

サイコだけど大丈夫 とは

エキセントリックかつファンタジックな映像で紡がれた
トラウマを抱えた主人公たちの愛の物語

ハマリ度は

 3

独特の雰囲気を持った世界観と、個性的な人物たちの心の傷を描いていく「サイコだけど大丈夫」

このストーリーを描いた切り口と角度の鋭さや、映像の面白さなど、とても興味深かったです。

誰でもハマれますかと問われれば、「そういうタイプではないと思う。でも映像部分が好みだとか、孤独な二人の切実な愛に惹かれるとか、後半に来るサスペンスの回収が好きなど、響く人にはかなり響く物語だと思う」と答えます

私は、本作はロマンスというよりは傷を癒していく人たちの愛を描く個性派ヒューマンドラマだったと思います。

見ているとつらくなるかもと不安な方や、彼らの幸せが来ないなら見たくないという方がいそうなのでエンディングについてハピエンかサッドかだけここでネタバレしようと思います。

今から2行で言いますので見たくない方は目をつぶってスクロールしてくださいね。

言いますよ。

物語のゴールは、彼らが癒され幸せを手にすることになるハッピーエンドが待っています。安心してみて下さい。

hobbit
hobbit
このあとはネタバレあらすじ・感想を詳しく語っていきます。

今すぐNetflixで全話見られます

ここからはネタバレがあります

ご注意ください

ネタバレ感想

孤独な戦いに疲れたムニョンとガンテの出会い

ガンテ、ムニョンの現在の状況から、ふたりがこれまで生きてきた人生の断片が少しずつ描かれました。

他人の感情に共感することができないムニョン

父親からは”怪物”と呼ばれ、死んでくれと手をかけられ未遂に終わった過去がありました。

そんなムニョンの書く童話には、子ども心に深く刻まれてしまった悲しさ、さみしさ、恐怖 トラウマを直視するしかないと くり返し物語に乗せて語っているようでした。

ムニョンの物語は 自分を鼓舞し続ける孤独な戦いでもある。

でも、もう疲れて助けを求めているときに出会ったのがガンテでした。

ありのままでは愛されない寂しさ

一方、サンテを守るよう頼まれ、愛情と責任感を背負って育ったガンテ

つまりガンテはケアが必要な兄弟をもったきょうだい児。

機能不全家族の中で、家族の求める役割を果たそうと感情を抑制し、子ども心に抑圧された環境に身を置いていたことがトラウマとなってしまうケースでした。

間違いなくお母さんはガンテも愛してくれていたのだけれど、一生あなたがサンテを守って欲しい、そのためにあなたがいる(産んだ)と言われた一言が心に刺さったままのガンテのさみしさは空虚な傷に。

しかも、幼くしてお母さんが殺害によって亡くなってからはずっと、自らそうするしかありませんでした。

愛されたい子ども時代を使命と義務だけで乗り切ったガンテ。

本作では、サンテが子どものころに”見た”ある衝撃的な出来事がトラウマとなり、生活を難しくしていることが彼らの人生を出口のないものにしていました。

サンテのトラウマとは

お母さんが亡くなったのはある者に殺害されたからでした。

目撃者はサンテ。

犯人に脅され、殺される恐怖から口をつぐんだサンテは、犯人の胸についていた蝶のブローチだけを覚えていました

お母さんが亡くなった季節になると、蝶を怖がり怯え続けるサンテのためにガンテは仕事は辞め、その時期が過ぎると次の職場を探して引っ越すということを十数年繰り返していたのでした。

犯人は誰だったのか

人命の重さに対する感覚が狂っているものによる犯行だったことは明らかでした。

犯人はムニョンの母でした

物語の初めの頃から、ムニョンが母親を怖れていたこと、ムニョンの父が妻を怖れ殺害しようとしたことが伏線として語られ続けます。

彼女こそが愛を知らないサイコパス。

邪魔であれば排除し、時に殺人を楽しみもする彼女は、娘ムニョンを自分の望む人形のような理想のものにすることを愉しんでいた人でした。

お父さんはそんな妻を怖れ、妻に似た娘を怖れ、手にかけようとした過去があったということでした。

整形か何かで顔を変えたムニョンの母は、ムニョンの父が入院する精神病院の師長としてすぐそばで弱り続ける夫を眺めることこそが復讐だったと語っています。

結末は

愛し合うようになったガンテとムニョン。

ガンテたちを温かく見守ってくれたジュリのお母さんや病院長など、彼らを取り巻く温かい助けの手を借りながらトラウマを少しずつ癒していった彼ら。

ムニョンはサンテと共に新たな自分たち3人を現した童話を上梓し、サンテは挿絵作家として評価を得ました。

3人は、それぞれが大切な愛する人として家族となりました。

誰かのために生きるのではなく、自分のために生きながら、誰かの助けとなり共に寄り添う人でいいということに気づいたガンテ

兄のために犠牲になることが使命だと感じていたガンテが、兄を信じることを知り、兄を守ることは目標でいいと知った笑顔と涙が美しいラストでした。

ムニョンとサンテの童話 彼らを投影した集大成

ムニョンとサンテは作家・挿絵作家として初めて一つの絵本を作り上げました。

その内容は、彼ら3人を投影したものでした。

登場人物3人は

  • 自我を失った仮面少年 →ガンテ
  • 心がからっぽの空き缶少女 →ムニョン
  • 人との関わりが怖い箱をかぶったおじさん →サンテ

OK精神病院で出会った患者さんとの出来事や3人で協力して乗り越えたことを描きこんであり、ドラマの世界を端的に表現してありました。

hobbit
hobbit
OSTの紹介のあと感想を語っていきます

OST

OST第一弾として、Heizeさんが参加されることが分かっていましたが、第一話ラストに聞くことができました。

Heize「You’re Cold (더 많이 사랑한 쪽이 아프대)」

Heizeさんの声サウンドカラー!世界観が合いますね!

ちょうど2話までのシーンが見られます。

先ほどお話しした構図や色彩感・映像そしてカメラワークの妙なども見て取れますよね。

そして何よりも、キム・スヒョンとソ・イェジの”目”が印象的ですよね。

本作は”目”が実はとても大事で特徴的な意味合いを持つ表現パーツなんです。

そして次の曲、この曲、めちゃくちゃ好きなんです

サム・キム「Breath」

ちょうど3話くらいまでのシーンが見られますね。

出口のない孤独を抱えて、疲れ果てているけれど人生を放棄できないし、しない二人の生きづらさが垣間見えますね。

もう一曲、

学童ミュージシャンのスヒョンが歌うこの曲は、劇中後半付近でも印象的に使われていてとても好きでした。

Lee Suhyun of AKMU(이수현) – In Your Time(아직 너의 시간에 살아)

この他にも素敵な曲が続々とOSTとして加わっていました。

ぜひ聞いてみて下さいね。

感想

セットや小道具、衣装といった部分から映像の美しさまで、本作が意欲的に表現していた世界観はとても興味深く引き込まれました。

その分、物語の重さや主人公たちが向き合わないといけない過去の出来事の辛さなどが引き立っていくような要素と、中和させる要素が絡み合っているなど複雑な足し算引き算もあって戦略的ですらありました

ドラマとして作るうえで、演技面だけでなく、とても難しい作品に取り組まれたことを評価したいと同時に感謝もしています

ただ、私のハマリ度がぐぐぐっと上がりにくかった部分として、ムニョンの母による終盤のクライマックスが急にチープに思えたことでした。

サイコパスのムニョン母の動機と費やした日々の長さなど、彼女のもつ衝動的な部分と彼女の美学が一致していないと感じざるを得なかったためです。

ムニョン母が正体を明かすことで、ムニョンを受け入れるのかどうかといったガンテたちの心を試すことになるエピソードだったことは理解できました。

ただ、ここまでの作り込みを考えると、彼女が数十年勤勉にあの病院で誰にもバレずに続けてきたこと自体整合性が取れません。

サイコパスの彼女は狂っていたから、で片付けるならそれはそれでチープです。

どうしても気になった部分としてはこのムニョン母のキャラクター設定と行動のみでした。

ドラマ全体としては私はとても好きでした。

キム・スヒョンは本当にすごい俳優さんですよね。

お母さんの木の前で、自分が手掛けた挿絵の絵本が出版されたことを報告するサンテを抱きしめて涙するシーンのリアル感は忘れられません

ソ・イェジもオ・ジョンセも、存在感実力共に信頼できますね!

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