2019年OCNで放送された本格サスペンス「WATCHER」を見終わりました。
主演はハン・ソッキュ、ソ・ガンジュンそしてキム・ソンジュ。
演技派ベテランと今回本格サスペンスものに初挑戦となった若手ソ・ガンジュンのケミストリーはなかなかに良く、ストーリーと相まって見ごたえ十分でした。
何よりも本作の演出は「秘密の森」を撮られたアン・ギルホ監督。
期待値上がりますよね。
今回も私の感じたところを主観的に語っていこうと思います。
前半はネタバレなし。
後半以降はストーリーを整理する意味で、がっつりネタバレのあらすじを書いていますので未見の方はご注意ください。
作品情報
放送
2019年 韓国OCN 全16話
演出・脚本・キャスト
演出:アン・ギルホ
恋のハイヒール(2014)w/ミン・ヨンホン
秘密の森~暗い闇の向こうに~(2017)
アルハンブラ宮殿の思い出(2018)
ウォッチャー 不正捜査官たちの真実(2019)
青春記録(2020)
脚本:ハン・サンウン
グッドワイフ~彼女の決断~(2016)
ウォッチャー 不正捜査官たちの真実(2019)
キャスト
ハン・ソッキュ(ト・チグァン)
キム・ヒョンジュ(ハン・テジュ)
ソ・ガンジュン(キム・ヨングン)
チュ・ジンモ(パク・ジヌ)
ホ・ソンテ(チャン・ヘリョン班長)
パク・ジュヒ(チョ・スヨン)
キム・スジン(ヨム・ドンスク)他
演出は「秘密の森」のアン・ギルホ監督
2017年には秀作サスペンス「秘密の森~深い闇の向こうに~」を演出され、昨年2018年にはVFRを駆使した新しい映像作品となったファンタジックサスペンス「アルハンブラ宮殿の思い出」(2018)にも挑戦されているアン・ギルホ監督。
サイコサスペンスでもあった本作が過去2作品同様にダレない緊張感が維持されていたのはアン・ギルホ監督の手腕なのだなと感じました。
冒頭あらすじ
白バイ警官のキム・ヨングンは、子どもを人質に取った男に発砲したことで、ト・チグァン率いる監査部で調査を受けた。
この件に関し、ヨングンは男の家に広域捜査課のチャン班長らが現れた状況と会話に不審なものを感じ取っていた。
元刑事だったヨングンの父は妻の殺人罪で服役中。
ト・チグァン、広域捜査課のチャン班長はヨングンの父と同じチームで活躍した元同僚だった。
予告編
彼らに事情があると同時に、過去・現在・警察内部・外部など、複数のエピソードが重なるように展開することがわかる予告編となっています。
WATCHERの個性と魅力
エピソードの重なりと演出が生む緊張感
物語の目標地点は15年前の事件の真相。
中だるみなしの緊張感が最後まで維持され、サスペンスとしては完成度が高いドラマだったなと感じています。
先ほど話した過去・現在・警察内部・外部などが絡む複雑な事件たちが、時に独立しているように、時に関連しているように進んでいきます。
複雑かつ重厚にとつとつと描かれていくストーリーでありながら最後まで緊張感が途切れない見事な演出でした。
主演陣の秀逸なケミストリー
若い警官ヨングン、ベテラン警部チグァンそしてヤメ検弁護士テジュ。
3人がそれぞれの目的で立ち回るという点もストーリーを複雑にするポイントでした。
3人とも洞察力・行動力・目的遂行能力が高く優秀で、それをソ・ガンジュン、ハン・ソッキュ、キム・ヒョンジュの3人の俳優さんがたが見事に表現。
私の感じたキャラクターのイメージを色でいうと
- 赤やオレンジ色の熱量を感じるヨングン
- 青白く時に灰色に見える冷静で真意の見えないチグァン
- 情が垣間見えつつも理性的に行動する白紫のような色を感じさせる女性テジュ
という風に、それぞれの俳優が演じるキャラクターの表現力のケミストリーは本作の見どころの一つでした。
ハン・ソッキュ 行間の魔術師
ハン・ソッキュは感情のあいまいさまで演じる行間の魔術師じゃないかと私は思っています。
「浪漫ドクターキム・サブ」(2016)などでも感じた、完璧じゃない人間味がありながらどこか信じてついて行きたくなる味わいもあります。
「~キム・サブ」でも続編が可能な印象を受けたのですが、本作WATCHERでも感じました。
WATCHERとは
15年前の事件につながる関係者
警察組織にはびこる不正の根を追及するサスペンス
ハマリ度は
4
見ごたえありました~
キャスティングも本当に良かった。
事件一つ一つが真相への鍵を提供していき、それらが相互に関係していたりと凝った構成だったと感じています。
誰もが真相を隠し、ヒントとなる事件や人によって攻防が繰り広げられていました。
私の記憶力と理解力が追い付いていないところもあるので後半のネタバレあらすじをどこまで詳細にかけるか怪しいですが、主人公たちが求めていた15年前の真相にたどり着くまでの物語をかなり楽しめます。
上質な韓国サスペンスでした。おススメです。
ここからはネタバレがあります
ご注意ください
ネタバレあらすじ・感想
ここからは、事件やエピソードが一体どういう真相につながっていたのかを整理していこうと思います。
はっきり劇中で語られたわけではなかったり私が見落としていたリして、”私の解釈”的なことになっている部分もあるかもしれません。あらかじめお含みください(。-人-。)
ネタバレだらけとなりますので、未見の方はここまででお願いします(‘ω’)ノ
3人が追っていたもの
ヨングン
ヨングンは15年前、お父さんがお母さんを刺し殺した犯人だと証言しています。
ショック状態だったあの時の記憶は正しかったのかどうか、ヨングンは事件の真相を求めていました。
チグァン
チグァンは、たった一人ででもやるつもりで警察内部の不正を追及する監察チームを希望し作りました。
同じチームの先輩だったヨングンの父を逮捕したのもチグァン。
警察官の不正に対しても目を光らせ、罪を犯せば正しく裁くべきだという信念を持っていました。
テジュ
テジュは新人検事の頃、ヨングンの父の事件を担当しています。
判決が出た後、無罪の可能性を捨てきれず再捜査をはじめた時、のちに“亀“と呼ばれていると分かったある猟奇犯に親指を切られるという被害に遭っています。
今でもPTSDに悩むテジュの目的は、“亀”を何としてでも捕まえることでした。
誘拐事件のエピソードで見えたもの
広域捜査課のエース チャン班長の右腕キム・ガンウクが殺人鬼の顔を持っていたことが分かりました。
不正警官は存在し、私腹を肥やすものがいるという現実が見えました。
そして、ヨングンもチグァンも「救える人を救う」という点に対しては現実的なグレーゾーンの選択をすることもあるという面も描かれました。
臓器売買組織のエピソードでは
借金のかたに臓器を強制されているように見えた女が、実は検事と組んである企業の会長の妻になり財産を狙っていたという事件がありました。
そこには相続の邪魔になる者が殺害されるなど凶悪事件が隠れていました。
ヨングンたちチームの活躍で彼らの計画が失敗し、口封じに臓器売買組織のキム室長と呼ばれる長が殺害されました。
キム室長殺害犯が警官であることと、検事長と警察のパク次長がつながっていたことが判明しました。
ムイル裏帳簿のエピソードで見えてきたもの
刑務所にいるヨングンのお父さんの情報から、財閥ムイルグループの裏帳簿が流出したことが判明。
お父さんと同じ房に入った男が帳簿を持つ男で、その男はムイルグループから帳簿を渡すよう狙われ、妻とも連絡が取れなくなっている人でした。
その人の妻は遺体で発見され、埋められていた自然公園からでたその他数体の遺体は、テジュの追う“亀”のシグニチャーである親指が切り取られた遺体でした。
遺体の身元が判明しいていくと同時に15年前の出来事の鍵が見えてきました。
姿が見えた秘密組織
実体がつかめずにいた警察内部に存在したという組織の名は「チャンサ会」。
元は警察エリートが作ったといわれているチャンサ会は、司法で十分な罪を償わせることができなかった事件の犯人を自分たちの手で死刑にするような過激な思想を持っていました。
死刑、あるいは関係者を黙らせたり欲しい情報を吐かせる拷問を実行するチャンサ会の者が通称“亀”でした。
一人とは限らない、その時々によって“亀”は役割として存在し、親指を切り落とし“人間を人間たらしめるものは何か?”という問いを相手に投げかけ心理的に服従させる常套パターンを義務付けていたのでした。
15年前お父さんに何があったか
多くのことを知っていたヨングンのお父さんは仮釈放で出てきたのち殺害され、15年前にお父さんが借りた貸金庫から「すべてを語ったヨングンへのメッセージ」と「ムイル裏帳簿の原本データ」が出てきました。
もともとチャンサ会を作ったのは警察大学出身のエリートだったヨングンのお父さんでした。
当時は逮捕が熱望される犯罪者を不正捜査をやってでも逮捕する免罪符を上層部との約束で取り付けていた可能性があります。
しかし、当時チャンサ会のあり方に活路を見出してしまったパク次長が反対する同僚を殺害したことでお父さんはこの会の存続を後悔したようです。
すべてを清算すると決めた日、ヨングンのお母さんが刺殺される事件が発生。
お父さんが獄中の人となってしまった後は完全にパク次長の都合のいい組織へとなり下がっていったようでした。
ヨングンのお母さんの事件の真相は
当時お父さんやチグァンと共にチームで活躍していたチャン班長。
会の存続を断念するつもりのお父さんから裏帳簿を取り戻すようパク次長に頼まれてチャン班長がヨングンの家にやってきたのではないかと思われます。
急ぐあまり自宅に強引に押し入ったチャン班長に対し、恐怖に駆られたお母さんが刃物で脅しもみ合いになり、取り上げたチャン班長にふいに突進したお母さんに刃物が刺さる事故に。
チャン班長は殺害の意志はなかったけれどそのことをパク次長に相談するしかなく、以降それを隠蔽する道を選び続けていたのでした。
恐怖からチャン班長の事を記憶から消してしまった幼いヨングンでした。
自らの証言でお父さんを殺人犯にしてしまった後悔は相当だろうと思いますが、正義のためにとやり始めた小さな不正が巨大な不正権力組織を作り出したことへの償いという部分もお父さんは抱えていた可能性もあったのかもしれないなと感じています。
それから15年間のチャンサ会
獄中のお父さんはなすすべなく、外ではパク次長が検察と組み資金源のムイル財閥や臓器売買グループの金を吸い上げるために便宜を図り私腹を肥やしていました。
チャンサ会で“亀”となった者たちは、「極悪人しか手にかけていない」とうそぶく。
彼らには信念があったのかもしれないけれど、パク次長たちに吹き込まれた極悪人像だったかもしれない部分もある。
時にはキム・ガンウクのような警察の仮面をかぶった殺人鬼も生んでしまう危険もありました。
結末
チャンサ会に関するすべての関係者の名と事情を明かし、この市の不正の温床を一つ取り除いたヨングンたち監査チーム。
庁長の罪を一つ見逃す代わりに監査チームの存続を手にしたチグァンに厳しい目を向けるヨングン。
誰かにとっては正義だとしても、それが許されるかどうかを第三者の目が常に見守る必要がある。
チグァンを監視し続けると宣言するヨングン。
そしてまた誰かもヨングンを監視する必要がある。
本作のコピーともなっている
「WATCHER」監視者は誰が監視するのか
本作のテーマは司法におけるもっとも大事なポイントを身をもって体験する警察監査チームの物語でした。
さいごに
あらすじ的にざっと整理してみましたが、本作は登場人物の多さの分だけ各人の思いや行動が事件に絡み、入り組んだ構成になっていて見ごたえがあります。
ヨングンの子どもの頃の記憶の事も含めて、人は自らの感情や状況によって意図せず過ちを犯すことがあることを物語の芯として描かれていました。
複数の目と正しい捜査、そして正しい裁きを目指す理不尽のない、過ちの少ない司法を目指す一つの答えを提示しているように感じました。
監査チームの面々は実力があって個性的。
OCN局はシリーズ化も期待できるのでぜひお願いしたいところです!
今回はいつも以上に長くなりましたが、最後までお読みいただきありがとうございました!