2018年初夏にMBCで放送された韓国ドラマ「ここに来て抱きしめて」。
連続殺人犯を父に持った少年と、少年の父に両親を殺害されてしまう少女とのロマンスというヘビーなストーリー。
このロマンスを演じたのは本作が初主演というチャン・ギヨンとチン・ギジュ。
なかなかにつらい物語ながら結局は最後まで見終えた私の感想や、本作の見どころなどをちょっと語っていきたいと思います。
ネタバレあらすじ・感想は後半に。前半はネタバレなしでお読みいただけますよ。
ここに来て抱きしめての作品情報
演出家・脚本家・キャスト
放送
韓国MBC 2018.5.16-7.19 全32話(実質16話)
演出:チェ・ジュンベ
禁じられた愛~ハヌルジェの夕暮れ~(2013)
帝王の娘・スベクヒャン(2013-14)w/イ・サンヨプ
最高の恋人(2015)w/チェ・チャンウク
ここに来て抱きしめて(2018)他
脚本: イ・アラム
ドクター・イアン(2015)
ここに来て抱きしめて(2018)
キャスト
チャン・ギヨン(ユン・ナム チェ・ドジン)
チン・ギジュ(キル・ナグォン ハン・ジェイ)
ホ・ジュノ(ユン・ヒジェ)
ソ・ジョンヨン(チェ・オクヒ)
ユン・ジョンフン(キル・ムウォン)
ナム・ダルム(ユン・ナム中学生)
リュ・ハンビ(キル・ナグォン中学生)
主演をつかんだチャン・ギヨンとチン・ギジュ
主演をゲットしたのはともに初主演となったチャン・ギヨンとチン・ギジュ。
二人のナム役とナグォン役はとても良く、やり切ってくれました。
特にチャン・ギヨンはIU主演の「私のおじさん」で演じるのもおそらくつらかったであろう重い役をきっちり演じていて印象に残っていた役者さん。
フレッシュな俳優さんが次々と登場するドラマ界で大きな一歩を踏み出したなぁと応援したい気持ちになる俳優さんです。
ちなみに私の中でチン・ギジュはイ・ジュンギ主演の「麗~8人の花萌ゆる皇子たち」でIU演じるヒロインの侍女役をしていた印象がかろうじて残っています。
いやぁ大抜擢でしたね!
冒頭あらすじ
真面目で学業も優秀な中学生ユン・ナムは転校生のキル・ナグォンと友達になった。
ふたりは一目ぼれだったが、積極的なナグォンのおかげで二人の気持ちは深まっていった。
クリスマスイブの夜、ナグォンの両親はナムの父ヒジェに殺害された。
かねてから父の行動に異常なものを感じていたナムは、ナグォンの家に駆け付けた。
ナグォンを守り抜き、連続殺人を犯していた父ヒジェはナムの通報により逮捕された。
しかし10年後、ヒジェが自叙伝を発売したことで被害者や遺族そして殺人犯の息子として人生を耐え続けるナムらの癒えない傷をまたえぐるのだった…。
予告編
ここで、2人の出会いと重い運命を感じさせる本国放送当時の30秒イメージティーザーをご紹介します。
好きな人ができて「守りたい人ができた」という初々しいナムの思いと、残酷な運命の中、「必ず守り抜いて見せる」と誓う姿の対比が効いていて切ないです…。
物語の比重が大きかった子供時代
韓国ドラマでは重要な物語の起源となる子供時代。
本作ではティーザーにもあった二人の中学時代に人生が一変する出来事が起こります。
ナグォンの両親は連続殺害犯に殺害され、その犯人は思いあっていたナムの父でした。
ナムとナグォンは地獄を経験し、互いに救いとなる存在となっていきます。
その時代を演じたのがベテラン子役ナム・ダルム君と私はお初だったリュ・ハンビ。
真面目で善良なナムと積極的ではつらつとした笑顔がかわいいナグォンというそれぞれの役を印象深く演じています。
二人の回想シーンがたびたび登場したときにも、“あの頃”の彼らの深い傷が思い起こせるほどの感情表現と存在感を見せてくれました。
ここに来て抱きしめての個性と見どころ
執着の殺人鬼を演じたホ・ジュノ
本作では人々の敵となる連続殺人鬼のヒジェの歪んだ人物像がキモでした。
醜くおぞましいヒジェを体現して見せたホ・ジュノ。
もうかなりのお年なのでは?と思うのですが、あの鍛え抜かれた体が却って不気味にすら思える怪演でした。
カリスマ大御所相手にチャン・ギヨン頑張ったな~と思わずにはいられません。
凶悪犯が生む醜悪な負の連鎖
本作で十数年ぶりに因縁が動き出したきっかけが殺害犯の自叙伝でした。
殺害犯の自叙伝、どこかで聞き覚えがありますよね…。
自己顕示欲と自分が特別だとでも思っている傲慢さしか垣間見えない自叙伝の出版という展開が再び関係者を傷つけるきっかけとして描かれています。
出版を持ち掛け世間に話題を投げて利を得た記者や、凶悪犯を崇拝する人々、模倣犯の存在を助長するなど、弊害しか生まない負の連鎖も描いてありました。
善良で純粋な主人公たちが物語を引っ張る
犯人の息子として被害者・遺族への贖罪の思いを抱えて強く生きている主人公ナムは、世間の目という風だけでなく、獄中の父の影が見え隠れする事件に向き合っていきます。
善良で純粋なナムとナグォン、二人の愛し合う姿が本作の見どころだったといえます。
警察学校在学中のナム(チェ・ドジンに改名)と駆け出しの女優として撮影に来たナグォン(イ・ジェイに改名)との十年ぶりの再会しシーンはとても切なくつらい瞬間だったのですが映像として美しく撮られていました。
制服が似合うチャン・ギヨン(心の声)
加害者家族の視点も描く
本作が描いていたのは、殺人犯と殺人犯の息子は別人であるという部分。
事件が凶悪であればあるほど、一般的には凶悪犯とその家族はひとくくりにとらえられ憎悪の対象となり易い。
加害者の息子と被害者の娘という、通常なら相いれない二人のタブーともいえるロマンスを描くうえで、加害者家族の視点は描かざるを得なかったと言えるでしょう。
ここに来て抱きしめて とは
殺人犯の息子と被害者の娘
事件を背負いながら互いを守り愛しぬく姿を描いた物語
ハマり度は
3
4話あたりで、主人公たちがこのあと12話かけてつらい目に遭い続けるなら、私もつらい…と正直視聴を迷いました。
でも主人公たちが再会してから互いを愛している思いは一瞬たりとも揺るがず、ロマンス部分が本当に美しかったんです。
それともう一点、家族を守り抜きたいという人たちの思いが胸を打ったからでした。
DVD
ここからはネタバレがあります
ご注意ください
ネタバレあらすじ・感想
見る前は重い・辛い・暗い・しんどい、そんなドラマなのかな?と思っていたのですが、ロマンス部分が美しかった。
殺人犯の息子だけれど自分はどう生きるべきなのかということを決めていたナム。
そんなナムが警察官という職業を選び因縁ともいえる父親からの執着を断ち切るまでの辛い13年間を描いてありました。
ナムが自分を失わず生き抜けた理由はナグォン
「自分の血を受け継いでいる」「優しさは軟弱さ」「強さに目覚めろ」とナムを人が殺せる強い人間に覚醒させようとする連続殺人犯の父ヒジェ。
ヒジェがナグォンの家に皆殺しに行ったのは、ナムの軟弱さを加速させる者たちを除外しようとしたためでした。
ナムは被害者への申し訳なさを抱え、犯人の家族という理由で遺族からの憎しみを受けとめながら、どう生きるべきかを常に見失いませんでした。
ナグォンを必ず守り抜けるだけの大人になるという心の支えがあったから。
そんなナムの気持ちをわかっているナグォンは、ナムをただただ抱きしめるのでした。
血のつながらない家族の絆
本作では、ナムとナグォンの二つの家庭を中心に描いてあるのですが、どちらも血のつながらない家族の絆を詳細に描きこんでありました。
ナムのお母さんオクヒさんはヒジェの4番目の妻で、連れ子ソジンは血のつながらない妹。
母違いのナムの兄ヒョンムはオクヒさんに拒否されるのが怖くていつも自分から突っぱねていた問題児でした。
物語が進んでいく中で、オクヒさんが本当の母のようにダメな自分も受け止め、命を投げ出してでも守ろうとしていると知ってヒョンムは変われました
ナグォンの兄ムウォンは、検事だったお父さんと女優だったお母さんに引き取られた少年でした。
両親を殺害され、犯人に逆襲して殺害してしまい正当防衛が証明されるも一人ぼっちになったムウォンはナグォンの家庭で第二の人生を得ています。
一生かけても返せない恩をナグォンに返していくと心に決めたお兄ちゃんムウォンは、最後はナグォンが幸せならとナムを認めてくれるのでした。
悪縁かどうかは本人たちにしか分からない
両親を殺した犯人の息子を愛せるのか?
犯人の息子を見るたびに殺された両親のことを思い出してしまわないのか?
繰り返しナグォンが事件の遺族や記者から聞かれた言葉でした。
思い出してしまうのは間違いない。けれど、あの地獄の中で唯一の救いだったのはナムで、生き抜けるのもナムを愛しているからでした。
お母さん同様有名な女優となって自立の道を力強く歩んでいる姿をナムに見せることがナムへの応援になると分かっていたナグォン。
中学の頃の約束通り、テレビに映る自分を通して、自分はここにいるよ会いに来てとナムに伝えられるよう頑張りぬいていたのですから。
OST曲をひとつ
いくつか曲は流れていたのですが、そのうちの一つだけご紹介させてもらいます。
HILIGHT(元BEAST)のヤン・ヨソプ「Cries Without Sound」
声を押し殺して泣くなんて悲しい題名ですね。
二人の出会い、離れていた時間、そして再会。
精いっぱい生きてきた二人が再会し、ここから互いに支え合い寄り添い抱きしめ合う関係性を暗示していた物語冒頭のシーンが映像に収められています。
凛々しいナム、笑顔が美しいナグォン。悲しみを共感する二人。切なくも美しいです。
さいごに
ワクワクしてキャーキャー言えるラブコメと違ってハマり度は上がりにくいタイプの作品ではあるのですが、本作で描きたかったであろうことはちゃんと伝わる作品だったんじゃないかと感じています。
純粋で善良な人がくじけずに大切な人を愛しぬく話は涙腺にきまくる私。
今回も、ナグォンに寄りかかり抱きしめてもらう時の赤ちゃんのような表情をするナム役のチャン・ギヨンを見たらまた泣きそうです。
*インタビューで、ナグォンに抱きつくときは子犬のように演じたと語られていました(@KNTV情報誌) なるほど!
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