2019年11月から韓国ケーブル局jtbcで放送されたドラマ「チョコレート」がNetflixで日本初配信されていたのを観終わりました。
Netflixでの邦題は「チョコレート:忘れかけてた幸せの味」
大ヒットをおさめた「ごめん、愛してる」(2004)の演出脚本コンビと、ハ・ジウォン&ユン・ゲサンが揃ったヒューマンロマンスということでかなりの期待値を集めていたドラマでした。
物語のテンポはゆったりめ、穏やかに人生の大切なものは何なのかを考えさせるヒューマンドラマ的なストーリーでした。
小エピソードを盛り込みながら主人公たちのストーリーが流れていくという感じで、ドハマりするというタイプの作品ではありませんでしたが温かさの残るドラマでした。
どういったところが魅力だったのか、このあと私の感じたところを語っていきたいと思います。
ネタバレは後半以降となっています。
作品情報
放送
2019-20年 韓国Jtbc 全16話
演出:イ・ヒョンミン
ごめん、愛してる(2004)
赤と黒(2010)
力の強い女ト・ボンスン(2017)
私たちが出会った奇跡(2018)
チョコレート:忘れかけてた幸せの味(2019-20)他
演出:イ・ビョンヒョプ
チョコレート:忘れかけてた幸せの味(2019-20)
脚本:イ・ギョンヒ
サンドゥ、学校へ行こう!(2003)
ごめん・愛してる(2004)
ありがとうございます(2007)
優しい男(2012)
むやみに切なく(2016)
チョコレート:忘れかけてた幸せの味(2019-20) 他
キャスト
ハ・ジウォン(ムン・チャヨン)
ユン・ゲサン(イ・ガン)
チャン・スンジョ(イ・ジュン)
ユ・テオ(クォン・ミンソン) 他
脚本はヒューマンメロの名手イ・ギョンヒ作家
イ・ギョンヒ作家は、私が知っているだけでも2000年のドラマ「コッチ」から早20年は活躍されてきたベテラン作家さん。
大ヒットメロ「ごめん、愛してる」(2004)を始め、残酷なまでに悲しく、時に四面楚歌な状況の中で切実な愛を育む主人公たちを描いてこられています。
過酷な状況の中から光を放つような愛を見せてくれるヒューマンロマンスの名手と呼べるイ・ギョンヒ作家が、今回イ・ヒョンミン監督と「ごめん、愛している」以来のタッグを再び組まれます。
これは期待したい見どころポイントの一つでした。
主演ユン・ゲサンをチェック
ドラマの魅力を語る前に、ハ・ジウォンと共演した主演のベテラン俳優ユン・ゲサンさんについてチェックしたいと思います。
デビューはアイドルユニット
今やキレッキレの役から寡黙な役、社会派からコミカルなものまで幅広く演じられているユン・ゲサンさんは、1999年元祖アイドルの一つgod(ジオディー)でデビューされています。
godは大人気を博し、2014年にファンに望まれて再結成するなど伝説のグループでもあります。
本格的な俳優活動はグループ脱退後2004年から
ドラマ「兄嫁は19才」映画「バレエ教習所」(どちらも2004)を見た時には個性のある俳優としての印象がすでに感じられたことを覚えています。
今や実力派俳優であるユン・ゲサンが、「濃いロマンスを演じたかった」と3年ぶりのドラマ出演として本作を選んだ理由を語られていました。
1978年生まれ、40代を迎えた熟年俳優が見せるハ・ジウォンとのケミが楽しみですよね。
冒頭あらすじ
父を早くに亡くし離島で母と共に食堂をして暮らしていたイ・ガンは、ある日父親が縁を切って出ていた実家からの迎えが来た。
大病院の跡継ぎだった父親同様優秀だったガンは20年後脳神経外科医になっていた。
しかし、ガンを温かく迎える母も家庭の安らぎもなく常に孤独だった。
ムン・チャヨンの初恋の少年はイ・ガン。
幼いころ母親の方針のダイエットでお腹を空かせていたところを救ってくれたバカンス先の食堂の少年がイ・ガンだった。
あれから20年たち、盲腸で訪れた病院で再会した医師がガンだと気づいたチャヨンは片思いを始めるのだった。
予告編
ここでNetflixの予告編をご紹介します。(日本語字幕は設定で出ます)
深い事情が心の傷となり、そこにチョコレートが何か意味を持っていることが感じられる予告編です。
ギリシアでのロケで幕を開けた撮影ということで、番組のポスターや予告編にも美しい風景が撮り込まれていますね。
チョコレート の個性と魅力
死と隣り合わせの現場で
主人公チャヨンは幼いころ未曽有の大事故を経験し、それが引き金となって家族との離散を経験。
ガンもまた父母共に幼いころに亡くし、成長し医者となるも紛争地帯の医療団として向かい凄惨な事故を経験します。
ガンはホスピスの医者に、チャヨンは料理人として日々を大切に生きるホスピスの患者さんのそばで働くことになります。
患者さんの思いを知り、時に汲みながら大切な人を愛する手助けをするいくつものエピソードがヒューマンドラマとしての珠玉のパーツとして描かれていました。
愛するということの本質を描く
チャヨンは心で愛し続けたガンや関係者のために難しい決断を迫られる状況になり、自らが耐えるという道を選びます。
チャヨンの性格が時にもどかしく、また韓国ドラマお約束の障壁設定のようにも感じられたのですが、終盤まで来るとあの選択は間違っていなかったことがじっくりと見えてきます。
相手の人生や人間関係、そして大切にしたい人の心に負担をかけない選択をしたことで縁のあった人との関係がやがて花開いていく。
愛するということはどれほど相手のことを思い大切にできたのかということに尽きると語るようなロマンスエピソードとなっています。
日々を大切に生きる
本作では死というものを意識する現場であるホスピスや病院、事故、そして認知症のエピソードも描かれています。
残された時間を悔いなく生きることに対する実感が呼び起こされます。
いつか死を迎えるのは、余命宣告を受けた人もそうでない人も同じこと。
今の生き方で悔いは残らないのかと考えさせられます。
日々を大切に生きる、そして大切な人を近くででも離れていても精いっぱい愛する姿に人生の本質、愛の本質を感じさせてくれる物語でした。
チョコレートが意味したものは
ふたりにとって、「チョコレート」はある特定の思い出とつながっていました。
詳細はネタバレのところで語りたいと思いますが、
「チョコレート」はふたりにとって強く生きる力となり、やがてふたりをつないだ赤い糸のようなものとして描かれていました。
チョコレート:忘れかけてた幸せの味とは
死を意識すると見えてくる人生の尊さ
大切な人を愛せる日々を大切にという本質を繰り返し伝えてくる物語
ハマリ度は
[jinstar2.5 color=”#ffc32c” size=”16px”]2.5
とても意味のある深いドラマで、何度も涙するしかないエピソードに出会いました。
ストーリーの内容もテンポもゆったりしていてじっくりとみられるヒューマンドラマとなっています。
それゆえに、ロマンスの熱さや次が気になる勢いはあまりなくてハマり度が上がりにくいといった面はありました。
ハ・ジウォンもユン・ゲサンも、準主演のチャン・スンジョも、そして二人を取り巻く助演の皆さんも、各人物に用意されていたエピソードをたっぷりと見せてくれました。
ハラハラドキドキはなく、ロマンスというよりも全年齢層向けのヒューマンドラマといった感じでした。
ここからはネタバレがあります
ご注意ください
ネタバレあらすじ・結末
2人の出会いとすれ違いは26年にも及ぶ
ロマンスのスタート地点は二人が小学生の頃のたった一度の出会い。それが初恋でした。
それから20年後、偶然再会した時にチャヨンだけが病院の医師となっていたガンを”初恋のあのイ・ガン”だと気づきます。
告白しようとしたときには、ガンは内戦で荒れるリビアに医師として派遣され爆発事故に巻き込まれ生死をさまよっていました。
病院でガンが爆発事故に巻き込まれたことを知ったチャヨン。
チャヨンにアタックし続ける弁護士のミンソンさんの求愛を受けることにしたのが約1年後。
けれど、ミンソンが紹介してくれた彼の親友が回復して戻ってきたイ・ガンでした。
もう会えないと思っていたガンがいて、チャヨンはガンへの思いが止められないと気づきギリシアへと去りました。
それから5年後、余命わずかの病気となったミンソンの最後の願いをかなえるためにチャヨンを探しに来たガンと再会。
韓国へと帰国したチャヨンはわけあってミンソンの入院していたホスピスで働きはじめガンとまた関わることになりました。
最初の出会いから約26年。
二人はことあるごとに“縁がある”と気づくことになりました。
ふたりにとってのチョコレートとは
チャヨンはイ・ガンと初めて出会ってからおよそ1~2年後、百貨店崩壊事故に巻き込まれています。
極限の中でいつくるとも知れない救出を待つ間、近くにいたおばさんから息子に買ったというチョコレートをもらい生きる力をもらった過去がありました。
チャヨンはつらいことがあればチョコレートを食べ、「生き延びたら誰かの役に立つ人になりたい」と決めた人生の目標を再確認し乗り越えてきました。
またガンは、母親がチョコレートを買いに行った百貨店で事故に巻き込まれ亡くなって以来、弱気にならないためにチョコレートを食べなくなったという理由がありました。
人生を棒に振る生き方をする人々
本作では、死が近づき日々を大切に生きる人々とその家族を描く一方で、まるで人生を棒に振っているかのような生き様を見せる人々も描かれます
一つはガンの父親の生家であるコサン病院のオーナー家。
ガンの父親はコサン病院オーナーであるイ家の次男で、優秀だったことから後継者と見なされていたけれど愛する女性との人生を選び離島ワンドへと来て早世してしまったとの事でした。
母親と二人、身の丈に合った幸せの中で生きてきたガンが、父の母親つまり祖母に連れ戻されてしまったことで悲しい日々がまっていました。
父母のいないガンは、息子ジュンを後継者にしたい伯父夫婦から虐げられつづけ、大人になってからも優秀な医師となったガンはけん制され、常に疎外感とさみしさを抱えていました。
伯父夫婦が固執していたのはコサン病院。
その執着の道具だったのが息子のジュンでした。
他にチャヨンのお母さんなど、足手まといなら家族であっても子どもや病人を捨てる人、騙されるより騙す方がいいと言い張る人など、自分さえよければいい人々の存在もありました。
彼らこそ、人生最後の日に後悔があるかもしれない人々でした。
結末
ジュンとガンは財産争い・病院争いの虚しさに気づいていました。
病院が手に入ったらそのあとは? 何もない。
おばあさんが倒れ、実はジュンのお父さんはイ家の血を引いていないという(彼らにとって)決定的ともいえる真実が発覚したことが大きなきっかけとなりました。
ガンはホスピスを潰して高級老人ホームにするという案を白紙にしてくれるなら、病院の経営は伯母さんに任せると言い切りました。
ジュンの母が経営者となり、ガンはホスピスを得た。
ガンとの関係が「分かり合えるいとこ同士」にやっとなれたジュンは、親の言いなりではなく自分の意思で人生を生きることができそう。
ガンはチャヨンという愛する人ができ、チャヨンがずっと自分を愛し続けていたと知りました。
大切な女性ができ、その女性は自分の母親が崩落事故の時に励まし生きるよう願った女の子だったことも知りました。
ガンの優しさは、それが自分の母親だと言わなかったこと。
言ったところで、誰も幸せにはなれない。
チャヨンもガンも、いつかわかるかもしれないけれど、大切な人を愛しながら日々を大切に生きていく選択をしました。
OST
ここで本作を彩ったOSTをご紹介したいと思います。
有名どころのシンガーさんたちが続々と参加されていたのですが、やっぱり見終わって一番好きだったのはこの曲
Ailee「Just Look For You」
Aileeは私の鉄板。
チャヨンの愛し方、あるいは、別れても思い出してしまう愛する人への気持ちのような素敵な曲ですよね。
もう一曲は、劇中穏やかで温かい印象の曲が流れていたのですが、それが「You & I」。
これ、ユン・ゲサンとハ・ジウォンが歌っていたんですが気づかなかった!
ドラマ終盤というかラストの映像も含まれていてドラマの余韻が楽しめるMVとなっています。
ユン・ゲサン ハ・ジウォン「You & I」
このほか、Seventeen、フイ(Pentagon)、ケイシー、ステラ・チャンなどなど豪華アーティストが参加されていました。
ぜひ聞いてみてくださいね。
感想
生と死を描く脚本家さんであることは分かっていたのですが、本作のようにロマンスよりもヒューマンドラマに大きく振らせてくるとは思っていませんでした。
確かに「濃いロマンス」と言えなくもないのですが、どちらかというと「長くかかったロマンス」でした。
脚本家さんもベテランで、かなり人生観を突き詰めて到達されたのが「幸せとは何か」、「人生の最後に持っていけるもの・残していけるものは何か」という究極のテーマだったのかもしれませんね。
強烈な設定の中ではぐくまれる悲恋を描いた「ごめん、愛してる」とは違い、四面楚歌な状況ではあるけれども、より暖かく光る愛の姿が描かれた物語でした。
その点では、ユン・ゲサンの落ち着きは本作には合っていたかもな~と感じます。
ただ、ただですよ、いとこのジュンが年上という設定なんですが、どう見てもジュン役のチャン・スンジョの方が若く見えてしまうというね(;^_^A
童顔俳優チャン・スンジョ
とはいえチャン・スンジョさんも38才(1981年生)、壮絶な童顔ですね!!
「ボーイフレンド」(2019)にしろちょっと悲しい役が多いですが、これからもどんどん活躍されそうですね。
さいごに
胸キュンなロマンスはなく、落ち着いたヒューマンドラマにロマンスが盛り込まれていたという印象の本作。
ゆったりとドラマの時間の中で身を任せて見られる方やヒューマンドラマ好きな方はとても楽しめる作品だと思います。
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