更新情報 日付は 2023年だよ
公式YouTube動画全17話全てにNekoCapによる日本語字幕が付いています!要VPN
「To Sir With Love(クンチャーイ)」は、同性を愛する主人公の青年の愛と、兄弟・家族愛を描く物語。
制作放送はOne31。
ベテランの俳優さんがたがひしめく週2話放送のプライムタイムラコーンで、性的マイノリティの人物が主人公として真正面から描かれた歴史的な一本として注目を浴びました。
主演CPを演じたFilmとJamは特集記事やグラビアに引っ張りだこ。ファンミーティングも開催されるなど大人気に。
複雑な人間模様、その家庭に生まれ育ったことで背負った彼らのアイデンティティへの葛藤も同時に描かれた見応えたっぷりな時代劇エンタメ&純愛物語。
まずは、本作の時代背景とともに作品情報やあらすじをチェックし、私が感じた魅力と個性を。
後半ではネタバレを含むあらすじ感想を語っていきたいと思います。
ちなみに本作のエンディングテーマは「Cutie Pie」のNuNewが歌われています!▶︎OST
もくじ
作品情報
2022年 タイ
One31
全17話
演出:Worawit Khuttiyayothin
クンチャイがKAZZアワード2023で最優秀作品賞を受賞したよ
キャスト
- FilmThanapat Kawila (Tian)1993.4.20
- Jam Rachata Hampanont (Jiu)1995.2.8
- Tongtong Kitsakorn Kanogtorn (Tian弟Yang)1995.9.27
いくつものドラマで主人公をされてきたFilm
本作「クンチャイ」の反響の大きさを反映されたFilmのクリップも。
FilmとTongtongはThe5elementsのメンバー
One31の俳優さんたちのユニットThe5elementsとして、Filmとtongtongはタレント活動もされています。
歌も歌え、俳優業やモデル業もされるマルチタレントさん。
バリバリの主演クラス俳優さん達ですが、アイドル的な華もある5人ですよね〜😊
FilmとTongtongの圧倒的とも言える親密なTianとYangの兄弟感は二人の培ってきた距離感がなせる技だったのでしょうね!
努力と信念、行動力の男Jamの成功に涙
Jamは俳優を夢見て行動し続けてきた努力の人。
生い立ちを語りつつ祖母への愛を滲ませるJamに涙。
ミスターコンからモデル、エキストラからリドラー、そしてついに主演俳優にまで辿り着いた彼のバイオグラフィーインタビューがこちら。
▶︎Neko日本語字幕版へはこちら
後半は「クンチャイ」のテーマについてもJamの言葉で語られているのがとても印象的です。
日本語字幕もつけましたのでぜひ!
冒頭あらすじ
華人商連盟である五龍会の宗主家である宋家の長男として生まれたTianは、母違いで同い年の弟Yangと仲睦まじく育っていた。
ただ、Tianが同性しか愛せないことを自身も母Liも知っていたことから、それは家族にも、ましてや五龍会にも絶対に知られてはならないトップシークレットとなっていた。
後継者としての仕事ぶりが評価され始めた頃、TianはYangと京劇を見に行った。
居並ぶ屋台の中、Tianは美しい飴細工を売る男性から目が離せなかった。互いに視線を交わした彼Jiuは、Tianにとって特別な人となっていくのだった。
To Sir With Loveの時代背景
第二次世界大戦中、日本軍進駐下のタイ
TianやYangが生まれ育ち、青年となった第2話からの舞台は1943年。
まさに国際社会では第二次世界大戦の真っ只中。
タイは日本の侵攻を同盟を結ぶことで回避し枢軸国となっており、この1943年には友好国として日本軍が駐屯している一方、抗日レジスタンスの活動も活発化していました。(*参考:wikipedia)
TianがYangと見ていた京劇の屋外芝居が反日をテーマにしたものだとわかり、Tianはすぐさまその場を立ち去ろうとしています。
もし、宗主家の後継者兄弟が日本軍に逮捕されれば五龍会に甚大な被害を与えるだけではなく、命を落とす危機すらあったためでした。
混乱の最中彼に救われて
飴を買った時、売った時印象に残った人。
あの飴屋さんが混乱する広場に現れ危険を顧みずTianを助けたんです。
出会った日、何かを互いの心に残したTianとJiu。これからを予感させる緊張と余韻が後を引くようなシーンでした。
アイデンティティをトップシークレットにされて…
Tianの育ったコミュニティでは、ゲイであると知れることは何もかもを失うことを意味していました。
五龍会の創立メンバーの一人Zhangがゲイを理由に会から外され悲憤の自死を遂げていることを目の当たりにしたTianの母Liにとって、息子が持って生まれたSongの後継者であるという金の匙を何があっても握らせ続けることこそが息子のためであると信じています。
けれど、Tianはありのままを受け止めてくれない母に悲しんでいます。ただ幸せな人生を送りたいだけなのに、それはもう一生叶うことはないと突きつけられるばかり。
そんなTianは出会ってしまうんですよね、幸せを感じる相手に…。
Tianの婚約者Paiは逼塞した貴族家系出身
第一次世界大戦ごろからタイでは絶対王政への批判が高まっており、1932年についにクーデターが起こり立憲君主制へとシフト。
貴族階級の特権は失われ、事業などをうまく立てられなかった家門では経済的に逼塞してしまうことも。
本作では、裕福な商家との結婚を模索して家門を維持せんとするPaiは逼塞した貴族出身でした。
一夫多妻状態、複雑な家族関係の中に見つけたオアシス
Tianの母Liは正妻であり、Tianは長男。
Yangは父のもう一人の妻チャンが母。
そしてSongにはあと一人、Buaがいます。不妊から子を持つことができないとわかった後も、Songの屋敷でTianとYangを実の息子のように愛し、妻同士のトラブルからも距離を置く人。
辛い時、逃げ場所があるTianとYang。
TianとYangの二人が仲が良いのは、正妻のLiが賢妻であると同時に、Buaの存在がセーフティーネットのようなオアシス的存在だったからとも言える。
Buaは、多くの女性ができる妊娠ができなかったと、生まれ持った宿命への辛さを抱いて生きてきたことから、今後、Tianのアイデンティティについても常に味方として見守ってくれる存在となりそうです。
クンチャイの魅力と個性
プライムタイムのラコーンで評価を得たセクマイロマンスの快挙
「クンチャイ」は、セクシャルマイノリティであるというアイデンティティを持つ主人公が、家族やコミュニティの中で直面する問題とロマンスを真正面から描いた作品でした。
LGBTQ+の主人公のロマンスが、幅広い年代の視聴するOne31のプライムタイム枠のドラマとして放送され、しかも成功を収めた。
これは、ドラマが描いたテーマの未来の形へと一歩近づいた証と言えますね。
ジェットコースターエンタメと純愛ロマンスの絶妙構造!
本作の魅力はこの多重構造!
- 非現実に誘う時代劇
- 薬草がカギとなる不確定要素の妙
- コミュニティ・慣習上の鋼の掟
- 高純度ロマンス
時代劇は、時代劇の世界観それだけで非現実の世界へと視聴者を誘います。
フィクション的な設定でハラハラのアップダウン激しいジェットコースター的展開のなかで、まさかの薬草がカギとなり、物語の不確定要素を演出もする。
ハラハラドキドキで視聴者を翻弄し、悪事を働いたものにどんな報いが降るのか溜飲を下げるまで見るのを止められない。
そんなマッチャンドラマ(トンデモ展開)の中で、物語のテーマがくっきりと浮かび上がってくるんです。
そのテーマを語るのが、泥沼劇の中でキラキラと光る純愛ロマンスでした。
Jiuのハイライトシーンとともにロマンスの空気を少しどうぞ
人物造形・背景・確かな演技 ロマンスの解像度が高い秀逸設計
主人公を取りまく家族や関係者たち。
どれも一癖も二癖もあるキャラの立った人物たち。それをベテラン俳優さんがたが恐ろしい解像度で自在に体現をする。
自身のアイデンティティへの苦悩、恋へのときめき、愛へのブレーキ。
環境や状況といった作り上げられた背景の中で二人の恋は静かに展開します。
主人公TianとJiuが見つめ合うさまを見るだけで私はトキメキ、結ばれればその戸惑いと心の中で湧き上がっているであろう多幸感を想像して叫び出したくなる。
障壁の多さに別れを覚悟し涙し、それでも一途に思いを抱く主人公たちのロマンスにBLファンならずとも惹かれるはずです。
クンチャイ To Sir With Loveとは
こんなドラマが見たかった!
演技派揃いの大スペクタクル
確たるテーマを内包したエンタメ&高純度ロマンス
ハマり度は
5
今年、何本ドハマったドラマがあったでしょうか。
エンタメとしての演出方法、内包したテーマの届け方、純粋に応援したくなる高純度なロマンス。
それが「クンチャイ」でした。
TV局が熟練のスタッフとキャストと予算をかけて作り上げた本格的なドラマというだけあってとても楽しめたドラマ。
毎回のYouTube Live配信後、数日で英字幕がついたということが何より大きかった「クンチャイ」。
反響の大きさとして取り上げられたワールドトレンドは、まさにYouTubeで無料でかつ世界で視聴するファンを巻き込んだがゆえのムーブメント。
国際BLファンの間ではその他の人気作が席巻していた時期でもありましたが、本作はタイ国内で大きく反響が出ていたドラマでした。
愛し合う同性同士が主人公の物語を多くの人が見ることで、それは当たり前に”ある”ものとしてのイメージが自然に浸透していく。
- ”何が好きかは生まれ持ったもの”
- ”誰かの好きを自分の価値基準や良し悪しでは判断しない”
- ”その人であることは、私が私であることと同じ”
- ”人に枠をはめない、人は誰もが等しく価値ある存在”
主演を演じたJamのインタビューからは、過去から学べば未来をよくすることができるはずと語っています。
同性婚が法制化されていないことも含め現在進行形でもある”一つの差別の形”に、一石を投じたドラマになったのではと私は本気で思っています。
OST紹介の後、視聴方法・JamFilm新作情報・ネタバレあらすじとなっています
NuNewも歌う!OSTも素敵だよ
รักแท้ – NuNew
True Love、という感じですね!
なんと、このNuNewの歌うMVは3,263万回再生もされています!(2022.11.22現在)
優しい歌声が本当に暖かくて、余韻の残るエンディングテーマ曲です🥹
中国語バージョンのMVは撮影後のJamFilmVer.なのだ😭
แค่มองว่าเรารักกันก็พอ – ไอซ์ ศรัณยู
オープニングテーマ曲はこちら
愛する人たちを、ただ愛させてほしい、ただ愛する人を愛させてほしい、そんな切実さを穏やかに歌い上げる曲ですね。
やばい、この曲も聴き込むほどに泣きそうになるんですよ😭
One31から無料E-bookの贈り物💐
たくさんのシーンやグラビア、そしてインタビュー(タイ語)が、バックに流れる主題歌と共に見ることができる、全49ページのE-Book がOne31にて公開されています。
無料で見られるだけでなくダウンロードもできます。
▶︎画像がE-Bookへのリンクになっています
視聴方法(2024.1.19現在)
2024.2.1 Blu-ray発売されます
コンテンツセブンのTCエンターテイメントより正式発売です
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海外から視聴の方はYouTube
有志による日本語字幕がNekoCapにて全話についています!
こちらの一覧から各エピソードへ↓
「To Sir With Love クンチャイ」Neko有志字幕動画リンク一覧へ
*字幕をつけた関連動画へのリンクもあり
VPNを使っていてもNekoCapは出せます👌
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JamFilmプロジェクトMV&次回新作ドラマ情報
2023.2.14バレンタインにJamFilmの歌う曲がリリースされ、クンチャイを恋しく思っていたファンを幸せにしてくれました!
【OFFICIAL TEASER】 สงสัยโลกอยากให้เรารักกัน
JamFilm共演新作ドラマ「Laws Of Attraction」は2023.7.15~
交通事故で命を落としたTinの姪。加害者は金でカタをつけようとし代理人の弁護士としてやってきたCharnと敵同士となる。
社会の不均衡を逆利用するCharnと、正義・善を貫こうとするTinが果たしてどうやって心を通わせるようになるのか、気になるドラマですね!
One31で2023.7.15より毎週土曜日22:15よりスタート。
詳しくはこちらの記事で
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あらすじ感想EP1-9 Tianの家族と彼の事情 初めての恋に気づくまで
トンデモ事件の中で描かれる家族愛と繊細な初恋
BLロマンス部分はたまらないんよ😭
命の恩人・家族に優しくしてくれた人
客と飴細工売りとして一瞬の初対面で好印象だった二人。
ただそれだけだったけれど、危険な中でTianの命を救ってくれたJiu。
その後、Tianが迷子になった男の子を送り届けたことがありました。なんとその家は、幼い弟と病気の妹を抱えて一人で苦労していたJiuの家でした。
運命のように再会を繰り返した二人。
友情のような、でももっと柔らかく心に染みる暖かさをともなって互いに抱いた好意が、二人の中でゆっくりと育まれていました。
家族を人質に取られたJiuの稼業とは
Tianの父が率いる五龍会の盟友Maの汚れ仕事、それも暗殺を請け負っていたJiu。
Maは賃金の代わりに、病気の妹の薬を調達することでJiuを都合よく使っていました。
Jiuには頼れる大人も伝手もなく、高価だという薬を手に入れる選択肢がない状況で妹の命を人質に取られたようなものでした。
そして、ある日Maが依頼したのは、五龍会宗家である宋家の長男の暗殺。
現場に向かい、手にかけようとしたのがTianだとわかったJiuは、咄嗟にやめています。
この時、それがTianだとわかった上で、叫ぼうとしたTianの口を唇で封じたのもJiuでした。
近づくほどに無自覚な淡い恋心が濃さを増す
弟妹をMaの屋敷に預け、JiuはTianの屋敷の下男として雇われにやってきました。
この時、Tianを手にかけることよりも、Tianの秘密を暴けと命令されて屋敷へと入り込んでいます。
そもそもTianに対して好意があったJiu。
そして、知れば知るほど、近づけば近づくほど、Tianは誰からも好かれる愛すべき人であると分かるのみでした。
Tianが悲しんでいれば励ましたい。
彼に婚約者がいると知れば激しく傷つき、Tianから教わった文字で何度も彼の名を書いた。
Tianの中にもJiuだけにしか抱かない特別な感情はあったはず。
でも、自分が男性を好きになるアイデンティティであることを大きな秘密として抱えているTianは、たとえ好意を抱いたとしても心にしまい意識しないようにしていた気がします。
きっとJiuの方が素直にその感情に揺れていた可能性は高かったと思います。
Tianの性的指向をめぐる母の死闘
「To Sir With Love」は、JiuとTianのロマンスがテーマを描くメインストリームではあるのですが、ドラマとしてはTianの性的指向が彼らの人生やビジネス、お家事情を揺るがす一大事であるとして大きな事件の発端となっています。
Tianの預かり知らぬところで、母は息子を後継者とする道を閉ざさないために、Tianの秘密を知った男を侍女と共謀し手をかけます。
誰がその男を殺したのかを追求する者たちと、目的を達成するまでは捕まるわけにはいかない母たちの攻防。
Tianの秘密を暴こうとする人々との攻防が、第二婦人Chanの思惑と絡まって一大騒動へと展開していきました。
地位・名誉・命をも失ったZhangを目の当たりにしたからこそ…
性的指向を理由に、会での地位も、長年ともにビジネスを大きくしてきた盟友と信じていた兄貴分である宋からも背を向けられて自ら命を落としたZhang。
彼の壮絶な悲劇をTianの母Liは目の当たりにしています。
どれほどZhangを喪ったことを夫が後悔していても、会のためには今でも同じ決断をするという夫を見れば、なんとしてもTianの秘密を隠し通そうとLiが必死になったのも無理のないことでした。
息子の願う幸せは、全てのものを失うだけと経験上刻まれた以上、Liは心を鬼にして息子を守ろうと必死でした。
でも、母がしたことをTianは知ってしまった…。自分の存在の無力さと罪悪感も苦しむこととなりました。
TianとYang兄弟愛の尊さ、Yangの恋の溌剌さ
息子を後継にしたい第二婦人チャンを母にもつYangは、優しく清廉なTianを心から信頼し支えたいと願う二心のない同い年の弟。
幼い頃から共に育ったYangは、Tianの秘密というものが、彼の変えようのない性的指向であると気づいています。
Tianの幸せを願い、何があってもTianを守りたい、味方でいると心に決めているYang。
そのYangはTianの婚約者となったPinと恋仲に。
Tianの母から受けた借金の抵当に入っている自宅を取り戻すことで婚約を破棄したいPinを、TianもYangも応援しています。
爽やかでウキウキと恋する二人の姿がまた可愛いカップルです。
あらすじ感想 EP10-17終
両片思いがつまびらかになった時
二人の愛を後押ししたまさかの媚薬!
思い合いながらも、それを伝えることはできないTianとJiu。
その二人を一気に繋いだのは、まさかの媚薬。
しかも、TianをPinと結婚させるために母たちが時間と労力をかけて作り上げたチートなほど強力な媚薬!
どれくらいTianが自分を抑えていたか、どれくらいJiuがこんな瞬間が来ることを予測していなかったのかがわかる、奥手すぎるほどに純情な愛が見えました!
でも止められないんだ!
*媚薬の持続時間は熱が放出されるまで。熱!? 時間ならば2時間なのだ。
▶︎日本語字幕付きEP11へGO
両思いだったと知った喜びに
自分が何をしたのか、媚薬のせいなどとは全く知らないTianの戸惑いたるやいかほどか。
でもしてしまった。
未来のない恋心を彼にぶつけてしまい、不本意な彼を恥ずかしいことに巻き込んだように感じたのでしょう。
一旦は一緒にあの場を逃げ出したけれど、どんな顔でJiuを見ればいいのか。罪悪感と身の置き所のなさに惑うようなTianが痛々しいほどでした。
でもJiuは嬉しかったんです。愛していると言われて。
「僕の片想いだと思っていた」
Tianの言葉が、両片思いだった二人の心を繋ぎました。
愛する人を守るために状況は複雑化 加速するストーリー
TianとJiuが愛し合う関係となった。
そこから生まれる新たな”火種”が物語をより複雑化させ、ストーリーは加速度的に盛り上がっていきます。
敵派閥に属するロミジュリ状態となったJiuTianは誤解から引き裂かれ、そこに存在するやむない事情がやがて明らかとなる。
前半の物語が、後半で回収され始めれば、強硬手段を高じていた出来事はすべて因果応報の如く返ってきました。
JiuがMaの手先だった事実と、そこに横たわる不可避な事情
本作のラスボスはMa。
五龍会の宗家である宋家の地位を狙い、後継者であるTianを失脚させることに必死の男。
Tianを愛しながらもMaの部下であることを話せなかったJiuの四面楚歌とも言える状況は、当然ながらTianを傷つけました。
「Tianの秘密は、女性を愛さないことです」
今の環境では一緒になることはできないと逃げる約束をしていたJiuとTian。
どうせここを去る予定であることが前提となった状況で、Tianの命を守るために、命よりも軽い情報(だと信じて)MaにJiuは告げました。
でもこの瞬間を見てしまったTianは誤解します。騙されていたのだと。
▶︎日本語字幕付きEP13へGO
Tianの悲しみのシーンで流れていたこの曲はこちら
▶︎Namcha Sheranut「คนที่ไว้ใจ..ร้ายที่สุด」
関係性と状況におけるジレンマの絶妙さと壮絶さ
このドラマが練られていると感じるのは、関係性と状況におけるジレンマの絶妙さと壮絶さでした。
息子の幸せを願う母の覚悟が息子を不幸に…
息子Tianの願う愛に於ける幸せは”絶対に”叶わないと確信してしまっている母は、息子が権利を有している”地位”と”権威”、”富”こそが彼を助けると疑いません。
むしろ、誰よりも有利で、誰も手にすることなどできない権利を手放すなど言語道断。
そのために、彼の幸せの根幹となる彼自身のアイデンティティを封じ続けようとするのです。
しかも、Tianが持つ権利が有利であればあるほど狙われるために、犯罪に手を染めてでも、人を殺めてでも死守するんです。
そこはフィクションエンタメ満載の、母&忠実な侍女による大活劇が!
ただ、最終的に責任をとって命で償おうとする母の愛と覚悟が固いぶんだけ、息子Tianの取れる道が決まってしまうんです。
持たせてやりたいものを命と引き換えにその手にねじ込もうとしても、それを求めていないTianにとっては母の命の方が重くて大事ということになるんですよね。
Maとの決定的決別
Tianの命を助けるつもりだったJiuの本意を知る由もなくTianから拒絶されたJiu。
それでも、Maの元で働く理由だった妹への薬がアヘンだったと知り完全に決別することに。
その時にはもう、Tianは、自分が後継者になった後母が死を覚悟していると知って自分が罪を被ると決めていました。
愛しているから…遠くから幸せを願う
Tianから教わった文字で必死で認めたラブレター。
事情をすべて説明したい、愛している、一緒にどこかで幸せになろう…そいういう願いがこもったJiuの手紙は時すでに遅し。
Tianが取れる選択肢がもうほとんどない状況でした。
「僕には僕がやらねばならないことがある」
それはまさに、お母さんが守り抜きたい秘密を自ら明かしてもはや秘密では無くし、お母さんの罪を被って殺人事件の咎が母に向かないようにすること。
もう誰も死ぬことはなく、母はもう誰も手にかける必要はなくなるためでした。
劇的クライマックスは惨劇ヒーロー型 だが涙なくしては…
「クンチャイ」の迫力はその破格なエンタメ展開。
クライマックスは、これまで展開してきた殺人といった惨劇の集大成ともなる劇的なものとなりました。
悪徳隊長に命令された兵を連れ、復讐に燃えて一家皆殺しにやってきたMaとの総力戦。
人質になった大切な人を守るために命をかけて戦い、その大切な人を、自分と同じくらい愛してくれる人に託してゆく。
そうしてTianの母Liは、TianをJiuに託し、その身を賭して息子を救いました。
エンタメに寄せてあるドラマは、カタルシスが重要となるため因果応報と伏線の回収が必須。
ドラマに浸っていると涙なくしては見られない、命懸けの母の姿が、切なさとやるせなさも残しました。
結末のその後までをも描く 未来への願いがこもったエンディング
Tianの性的アイデンティティをめぐって繰り広げられた悲劇は、母Liの死と、父からの交際の認知を得て一段落。
Tianは、Jiuとの静かな生活を送るために家を離れました。
飴細工を売るJiuと翻訳に精を出すTian。
事件に見舞われた五龍会のビジネスは父の手腕で苦境を潜り抜けたところ。
物語は、3週間後に控えたYangの結婚の案内状を届けるためにJiuTianの家に家族が集結。
Jiuを息子のパートナーと見て、魚の頬を与えた父の姿が象徴的でした。
性的指向が選択の妨げになるべきではない
性的指向を理由に組織のリーダーになれないとする暗黙のルールが一連の悲劇を呼んだ物語。
本作の脚本を担当されたというクリエイターの方が最終話放送ごろにツイートをされていたのですが、Tianは何にだってなれるのです。
性的指向はその人の能力や仕事を含む選択全てにおいて妨げになるべきではないというテーマの一つをラストのラストで伝えたかったそうです。
能力があり、適性があるTianがこの仕事から離れた理由は、自分の性的指向がビジネスに影響することを懸念してのこと。
誰を愛してもいい、性別という枠はその人の尊厳を妨げることもなければ選択も妨げない。そんな社会の形を今一度考えてほしいというメッセージが込められたラストでした。
まとめ
過去の時代を舞台に、偏見や差別がゲイである主人公に科した人権への大きな問題点をテーマとする物語でした。
視聴する人が迷子にならないよう、逐一説明がセリフでなされ、はっきりとした効果音が状況を示す親切設計。
それゆえ演出は、時に大げさですらありました。
だからこそ、世に溢れるヘテロロマンスカップルの物語の中で、今一度、時に偏見から選択を制限されるゲイカップルの姿を明確なイメージとしてより多くの視聴者に届けることができたのではないでしょうか。
このドラマがまた、タイの同性婚法制化への一助となってほしいという願いも含んでいるように感じました。2022.12.9
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❤️ドラマへの熱い思いを良ければここで✨