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映画『エゴイスト』視聴感想                                    

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2020年に享年50歳でお亡くなりになられている高山真作家の自伝的小説が原作となった映画「エゴイスト」。

鈴木亮平さん、宮沢氷魚さん主演、松永大司監督による本作は、公開に先立って出品された映画祭での評価も高く、予告編を見た地点でこれは可能な限り早く劇場で見たい、と思っていた映画でした。

冒頭からドキュメンタリーかと見紛うナチュラルな空気感に引き込まれ、また鈴木さん宮沢さんが演じる生き生きとしたやり取りの浩輔と龍太の姿の見事さに、私は序盤ずっと満面の笑顔という不審者状態に。

でも中盤からは、他のお客さん方に申し訳ないくらいすすり泣き続けでした…🙇

「エゴイスト」を視聴して感じたこと、私の解釈や本作の魅力など考えていきたいと思います。

もくじ

作品情報

2023年 日本
監督:松永大司
主演:鈴木亮平・宮沢氷魚
助演:阿川佐和子・柄本明他

公式サイト

原作:高山真(浅田まこと)「エゴイスト」

著:高山真
¥594 (2023/02/12 20:50時点 | Amazon調べ)

予告編&あらすじ

あらすじ

浩輔は中学時代に母を亡くし、セクシャリティを理由に悲しい想いをした故郷を出て、今は東京で編集者として成功していた。

後回しにしていた体を鍛えようと、ゲイ仲間から紹介された個人トレーナーの龍太と出会い愛し合うように。

ただ、龍太には持病を持つ高齢に差し掛かったシングルマザーとの生活があり、そのために年若い頃から体を売って生活していたと知る。

彼を支えたい、亡き母にできなかった後悔を龍太のお母さんを応援することで果たしたいと思い行動する浩輔。

彼のその想いは愛なのかエゴなのか。

エゴイストの魅力と個性

まるでドキュメンタリー そこに浩輔たちがいるようで

予告編のみで、一切の前情報を遮断してなんとか公開2日目の一発目を視聴。

始まるや、まるでドキュメンタリーと見紛う世界がそこに

浩輔と友人たちのフランクな酒の席、龍太と浩輔の表情など、フィクションとは思えない映像と期待以上の演技に、私はずっと笑顔状態に。

手動のカメラがそれぞれの表情を時にアップに追うドキュメンタリータッチのカメラワーク。

何よりも伝えたいところは至近距離の超アップで。

シーンによっては映さない場所など大胆に削ぎ落とされていて、今私たちがどこを見ればいいのかが一目瞭然であり、時に圧倒的な感情が伝わってきた。

浩輔と龍太の幸せなワンシーン。

ラブシーンにおける表現に圧倒される

特別な好意を伝え愛し合う、彼らにとって彼らの心の交換の一つがセックス。

浩輔と龍太の関係にある体の交流を表現するシーンは幸福感を含めて圧倒的。

本作では、ここ最近日本でもNetflixで導入されてきたインティマシー・コーディネーター*も入れての撮影をされたそう。

性的なシーンでの動きや感情、表現方法を整理してから演じたことにより、より演技に集中できたとのこと。

*インティマシー・コーディネーター:親密なシーン(キス・ヌード・性的なシーンなど)での表現方法について制作サイドと俳優の間に入り調整する専門家。演者が望まぬ演技を強いられることを防ぎ、身体的・精神的な安全をサポートする。

また、LGBTQ+インクルーシブディレクターとしてミヤタ廉さんも参加され、男性同士のセックスの監修もされたのだそう。

監督が打ち出すまるでドキュメンタリーのような映像と、リアリティを追求する制作の姿勢が合わさり、視聴する私を「エゴイスト」の世界にぎゅっと引き込んでいきました。それもすごい力で。

アジア版アカデミー賞アジアフィルムアワード3部門ノミネート

素晴らしいですから✨

スペシャルインタビュー

「エゴイスト」をもう一度頭の中で反芻でき、演者さんたちの思いや撮影ビハインドを知ることができるインタビュー。

映画を見て感じたドキュメンタリー調の映像は監督の目指す作品への根気と、俳優さんがたの役への熱意の賜物であったことがわかります。

habbit

私は映画視聴後にこの動画を見て、プロフェッショナルに徹した現場でチーム全体の堅い信頼の上にこれほどの作品が作られたんだと納得しました

鈴木さんインタビューもぜひ

社会的影響も見つめ真摯に役に向き合われた鈴木さん

メイキング&インタビュー特別映像

鈴木亮平、恋人役の宮沢氷魚の魅力語る「本当に龍太が氷魚君でよかった」

視聴方法(2023.10.2現在)

U-NEXTにて配信スタート

▶︎U-NEXT

*2023.10.2現在の情報となります。最新情報はU-NEXTサイトにてご確認ください。

プレス記事はこちら

感想

habbit

ここからネタバレあり」の案内まではネタバレなしで読んでいただけます

愛とは何かを浩輔と問い直す

”大切な人を心から思う愛”がある。けれど、”愛”とは何なのかを浩輔とともに問い直す物語。

誰かを愛した時、人は相手を幸せにしたい、という強い思いが湧き上がるのだと私は思います。

それは、相手を幸せにすることで、自分が幸せになる(幸せに感じる喜び)ことと一体でもある。

互いに相手を幸せにしたいと感じ、そして相手が幸せなのだと感じることで双方が幸せを感じるのが最上の愛の形なのだと。

でもそれは結局は自分の幸せのための行動なのでは? と「エゴイスト」からは問い返されるんです。

浩輔の行動はエゴだったのか

龍太が若い頃から、厳しい生活を維持するために母に内緒で体を売り続けていたと知った浩輔は、自分が龍太を買うという名目で自分の可能な額を毎月渡すことに決めます。

彼を支えたい、彼の心を守りたい、そして彼を愛している自分の心も見つめ、悩んだ末の答え。

けれど、男娼時代の額に及ばない分を昼夜の重労働で賄い、おそらくは早く浩輔の負担にならない男になろうと頑張っていた龍太の体は悲鳴をあげていた。

彼の生活に介入したことで、むしろ彼に負担をかけてしまったと苦悩する浩輔の姿に、龍太を愛したことは身勝手なエゴだったのではと責める彼の愛がまた浮き上がってきました。

結婚という選択肢が彼らにあったなら

劇中、同性婚が日本ではできないために、二人で婚姻届を書いて壁に貼るにとどめたという浩輔の友人がいました。

のろけとユーモア混じりの笑い話として仲間と語られていました。同時にそこにはこの日本では同性の婚姻届が受理されない現実を共有している彼らの詮ない思いが優しく切なく含まれてもいて。

もし同性カップルに結婚という選択肢があり、浩輔たちがそれを選べたなら、浩輔・龍太、ひいては龍太の母妙子にとって違った形の幸福があったのではと思ってしまう。

”愛=相手を幸せにして自分も幸せになりたい”という行動を、社会や制度の中で下支えることができる結婚制度

影のテーマとして、私は誰かを愛した時に、相手の大切なものや人を守りあえることを約束することができる選択肢がない現状の不備も含まれていると強く感じました。

ここからはネタバレがあります
ご注意ください

もしも…

「もしも」。

もしも、浩輔と龍太に結婚という選択肢があり、ともに生活するという選択をしていたら龍太はあれほどまでの激務をその身に課しただろうかとふと感じる。

生活基盤を一つにすることで、家族になることで解決できることがあったかもと。

もしも浩輔が龍太と結婚していたとしたら、お母さん妙子を支えたいと強く思っていた浩輔が一つ屋根の下でもっと多くの時間を過ごし、妙子の体に起こった異変にもう少し早く気づけたかもしれない。

…でも、もしもは詮ない言葉。

とはいえ、異性間では選択できる他人同士を繋ぐ、人生に大きな影響のある制度が、同性である彼らの選択肢にないというのは不公平でしかない。

ただ、二人が結婚を選択したかはわからないのだけれど。

浩輔の愛がエゴならば

龍太はある朝突然この世を去っていた。

愛する人を失った悲しさ、彼の愛した人を支えたい浩輔の純粋な思いは間違いなく彼の中にあった。けれど浩輔は自分を責めた。

誰かを愛し行動したことが、結局自分のためだというのなら、愛はエゴだと呼べばいい

そのエゴに、浩輔に、救われたと龍太は生前妙子に涙ながらに感謝していた。

余命わずかの日々弱り続ける妙子が浩輔を息子だと同室の患者に紹介したとき、彼のエゴは妙子の心を穏やかにしていたのだ。

愛はエゴかもしれない。

だとしても、龍太の死は浩輔のせいではなく、浩輔は苦しまないでほしい。

それでも、浩輔の喪失感は、自責の念と共に優しい彼の心を軋ませ続けるだろう。

純粋で優しいエゴイストの浩輔。

彼に出会い、愛された龍太が幸せだったのは間違いないと思うのだけれど。

エゴイストとは

愛した人と出会い過ごした日々の切実な記録
自分の愛が愛する人を幸せにしたかを問い続けるだろう浩輔の心の記録

ハマり度

  5

また見たくなる映画です😢

公開劇場の情報などは公式サイトにて、ぜひ

▶︎「エゴイスト」公式サイト:劇場情報

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