2020年、台湾で2本の同性同士の愛を描いた映画作品が評価され金馬賞などにノミネートされました。
そのうちの一つは、若い学生の恋を描いた「君の心に刻んだ名前」と本作「親愛的房客 Dear Tenant」邦題「親愛なる君へ Dear Tenant」。
「君の心に~は」公開年内にNetflixにて世界配信されたことでBLファンを中心に視聴され、日本でも話題になった作品でした。
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私の2020年最後の視聴作品は、若い主演二人の熱演と共に人気を収めた台湾映画「君の心に刻んだ名前 Your Name Engraved Herein」(2020)でした。 もろもろ感じるものは…
こちら「親愛なる君へ Dear Tenant」の方は、金馬賞では6部門にノミネートされ、主演・助演俳優さんが最優秀賞を受賞されるなど高く評価された作品でした。
ストーリーのあらすじを知った時からぜひ見たいと思っていた作品だったのですが、完全に心を鷲掴みにされてしまいました。
今回は本作に感じた魅力などを語って行きたいと思います。
もくじ
作品情報
「親愛なる君へ」日本公式サイト
第57回金馬賞6部門ノミネート(作品賞・監督賞・主演男優賞・助演女優賞・脚本賞・映画音楽賞)3部門受賞
第57回金馬賞受賞
- 最優秀主演男優賞 莫子儀
- 最優秀助演女優賞 陳淑芳
- 最優秀映画音楽賞 法蘭
監督・脚本:鄭有傑
石碇的夏天(2001)
陽陽(2009)
太陽的孩子(2015)共同演出
ドラマ:他們在畢業的前一天爆炸(2017)
親愛的房客(2020) 他
キャスト
莫子儀(林健一)
陳淑芳(おばあさん周秀玉)
白潤音(王悠宇)
姚淳耀(王立維)
是元介(王立綱)
謝瓊煖(チャン検察官) 他
冒頭あらすじ
健一は愛する立維の家の屋上部屋の間借り人として越してきて5年。
現在は立維の他界後、彼の前妻との子で養子縁組をした悠宇を育てながら、立維の母であり悠宇の祖母秀玉の介護もしていた。
ピアノ教師として身を立てつつ、家事子育て、秀玉の通院などの世話をする毎日だったが、秀玉が突然亡くなったことにより健一は容疑者とされてしまう。
死因が薬物の多量摂取だと判明したため、家の権利が悠宇名義になっていたことを疑われたのだった。
予告編
はぁ……。
予告編を見返して、また泣けてきた……ㅠㅠ
親愛なる君へ の魅力と個性
細かな日常から伝わる愛情と責任
健一がこなす家事の様子、悠宇や秀玉と交わす言葉や行動。
そのどれもが細かな日々の積み重ねの一つを伝える繊細なシーンの連続です。
愛した立維の子であるというだけでなく、悠宇によって自分自身が幸せであることや、秀玉を義母として大切に思っていることも健一から伝わります。
秀玉の変死によって彼らの日常が突然変化するわけですが、彼ら3人の日々が愛情と責任、そして信頼の上で成り立っていたことが分かります。
映画としてのストーリーが終わるころ、この彼らの日常の姿こそが彼らの関係を物語っていたと分かる素晴らしいものでした。
家族の形はさまざま、なじみのない形を理解されない葛藤
彼ら3人の間には思いやりと信頼の絆は確かに存在し、間違いなく彼らは家族でした。
ただ、内縁の夫夫だった健一と立維の家族との関係を理解できない人々の誤解と偏見が彼らを苛みます。
けれど、そのことで、健一がどれほど立維を愛していたか、どれほど悠宇を愛しているか、どれほど秀玉に信頼されていたかが見えてきて、もう視聴していて私の心は泣きどおしでした。
主演3人のしびれる演技
子役の白潤音君を含め、家族3人を演じた俳優さん方の演技にはただただ惹かれてしまい、引き込まれました。
中でも、主演健一を演じた莫子儀さんは、主演男優賞は当然。
愛情と責任をもって悠宇らと接しながらも、今でも立維への恋しさと喪失感に泣く一人の愛する男としての姿にも胸が締め付けられました。
莫子儀さんの演技の一部分ですが、このあとのMVで見てみて下さい。
受賞曲「法蘭Fran《 在夢裏 In Dreams 》」
本編にないシーンと、予告編に出てくるシーンがほとんどなので、良ければここでご覧下さい。
そう、健一と王維との思い出のシーンは実は本編ではほとんど出てきません。
この思い出を心の支えにしながら、健一の今があるのだなとわかる、切なくも美しいシーンでした。
親愛なる君へ Dear Tenantとは
目に見えなくてもそこに“ある”愛情と信頼
どうしようもない出来事に直面しながらも
大切な人へ心を込め思いを尽くす
ハマリ度は
5 です!
これは、ぜひ多くの人に見て欲しいと感じる映画です。
ひとりの男性を愛した彼の愛の物語であり、父親として子を愛した親子の物語でもあります。
心の底から愛する思いを持っていながら、ままならない現状を受け入れ、そのつらさを知っているからこそ子どもに伝えられる言葉がある。
誤解・理解されないこと・偏見、喪失感・恋しさ、そして自分自身に課した贖罪の思いなど、健一という男性のひたむきな生き方に泣きました。
ぜひ
視聴方法(2024.10.13現在)
RakutenTVでいますぐ
2024.10.13現在、RakutenTVで配信されています
最新情報は、楽天TVにてご確認ください
ネタバレあらすじ・感想
それは君のせいじゃないことを覚えておいて
健一にとって、彼の人生は自分の力では制御する事が出来なかったことの連続。
- 王維を愛したこと
- 王維を喪ったこと
- 秀玉の自殺願望
- 悠宇の思いやり
- 王維の兄弟立綱からの誤解と不信
悲しみに陥り、後悔も多く、そして自分自身の弱さと直面もしてきた。
健一にとって守りたいものへの愛情は深く、彼が心から悠宇に伝えたい言葉があるとすれば、それは「君のせいじゃない」ということでした。
「今後、嫌になることや、予期できない困ったことに出会うこともあるだろうけれど、よく覚えていておいてほしい、悠宇のせいじゃない」
どうしようもないことに直面してしてしまう人生に押しつぶされないでほしいということを、9歳の悠宇に伝えたかった、健一の精いっぱいの言葉でした。
悠宇の戸惑いと否定しようのない愛情と、そして結末は
9歳の悠宇は、学校の先生やクラスメイトから、実のお父さんが亡くなっているためにあの人は誰だと健一のことを聞かれます。
4歳の頃から健一と暮らしている悠宇でしたが、養子縁組で親子となったことも理解しています。
だからこそ、「僕がいなかったらお父さん=健一がもっと楽になれるのでは?」と聞くシーンもあります。
「悠宇が幸せをくれるんだ」と答える健一。
ラストシーンは、殺害容疑が晴れ数ヶ月後の健一のもとに、おじと共に上海に行った悠宇からCDが届きます。
健一の作った曲に悠宇が歌詞をつけていました。
🎵あなたのいるところに飛んでいけたら、一緒に家に帰れたら
この曲は、もとは健一が立維に贈った曲でした。
それに悠宇が歌詞をつけ、健一を思う歌となって戻ってきた。
深い深い愛情の物語。
金馬賞俳優莫子儀さんインタビュー動画より
さまざまな人物を演じることで伝えられること。
今回は心の帰属する場所である家族の多様な形を通じて、そこにある愛を伝えることが自分の役割であると感じられていたそうです。
「社交的なタイプではない代わりに、演技という形で社会とつながることで人々を知る。
役を通して人生を経験し、自分の心にあるものを見出していく。」
演技を通して作品を作っていく職業への真摯な姿勢と、演技が莫子儀さんにとって代えがたい自身の居場所のようなものである印象を受けるインタビューです。
自動翻訳によって見ましたので、誤解などありましたら申し訳ありません。ご了承ください。
さいごに
2020年の台湾映画界は「1秒先の彼女(消失的情人節)」が強かったけど、きっと僅差
2020年の台湾映画界は、時間の流れが異なるファンタジックな男女のラブストーリー「消失的情人節」(邦題:「1秒先の彼女」 2021.6.25より日本公開)が強さを見せました。(11部門ノミネート5部門受賞)
→「1秒先の彼女」公式サイト
作品賞・監督賞・脚本賞など、「消失的情人節」に持っていかれた感があるのですが、本作「親愛的房客」がノミネートされていた部門から見て、おそらくは僅差と言える位置づけだったと思われます。
「親愛的房客」ほどの作品が日本で劇場公開されないのは残念だと思っていたのですが、公開決定しました!
7/23公開されます!→2022.4.21現在、お家でシネマートにてオンラインで視聴できます。▶︎視聴方法
機会があればぜひ見て欲しい作品です。
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健一と悠宇の関係の中にある親子の愛情に気づいてくれた検事(判事)さんを演じた謝瓊煖さん。
「幸せのエチュード」では主人公志明を未婚の母として産み、事情があって育てられなかった後悔を背負っていたお母さん役でした。
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