およそ3時間近くに及ぶ2007年の大ヒット映画「ミウの歌~Love of Siam」。
家族のへの愛と同性の少年たちの初恋を描き、サントラとともに大ヒットを記録した本作の監督はMa-Deaw Chookiat Sakveerakul(チューキアット・サックウィーラクン)監督(Manner Of Death、Triageほか)
2020年代のタイBLドラマ界隈では知らぬもののいない有名演出家さんでもあります。
私たちが抱いていたイメージとは違い、「Love Of Siam」が公開された頃はタイでも同性のロマンスが映像作品として商業ベースに乗ってくることはほぼなかったと言い、本作の大ヒットや海外からの評価がきっかけで制作への可能性が広がったというレジェンド映画。
タイBLを語る上で「Love Of Siam」は必見と知り視聴しました。
今回は、現在日本で見られるVODサービスなどもないため、ネタバレしながら語っていこうと思います。
望まれない方はご注意ください。
もくじ
作品情報
制作・本編
2007年タイ 約2時間50分
監督・脚本・キャスト
監督・脚本:Ma-deaw Chookiat Sakveerakul
監督の携わられた作品の一部
レベル・サーティーン(2006)
The Love of Siam(2007)監督・脚本
Chocolate(2008)脚本
Club Fridayシリーズ(2015-2019)演出
SisterS(2019)他十数作品
Dew the Movie(2019)監督・脚本
ドラマ:Manner Of Death(2020)
ドラマ:Triage(2022) 演出
The Fabric(2020)脚本
ドラマ:Wish You Luck(予定) 他
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キャスト
Mario Maurer(Tong)
Pitch Witwisit Hiranyawongkul(Mew)
Nok Sinjai Plengpanich(Tong母)
Kob Songsit Rungnopakunsi(Tong父)
Ploy Laila Boonyasak(June/Tang二役) 他
UWMAにも出演されていたベテラン俳優陣が両親役
2020年の秀作BLドラマ「Until We Meet Again」で、Deanの両親役だったベテラン俳優さん方が、本作でTongの両親役で出演されています。
Love of Siamから13年経って、BLドラマで夫婦役をされているということに感慨が深いです。
しかも、UWMAでは息子の愛を応援する両親役でしたしね。
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冒頭あらすじ
Mewは両親の事情から祖母の家で暮らしていた。
学校でのトラブルがきっかけで、Mewはお向かいのTongと大親友となりいつも一緒にいる仲に。
だが休暇先でハイキングに行ったTongの姉が行方不明となり、状況が変化したTongの家族は引っ越していくことになった。
それから数年後、高校生となっていたMewとTongはSiamで再会した。
予告編
幼少期の出会いから少年期へ。
家族の物語であり、少年たちの恋と迷いの物語であることがわかりますね。
音楽が彩りを高めてもいます。
ミウの歌~Love of Siam 個性と描いたもの
想定以上だった大ヒット作
同性の恋や愛に対する目が厳しかった2007年タイで、同性の少年たちの恋をメインエピソードの一つとして描くにあたり、本作は新人君たちを起用するなど限られた予算で制作された映画でした。
監督自ら作詞作曲されたという、主人公のMewのバンドが歌う劇中歌のヒットも相まって映画は予想外の大ヒットとなり、海外の映画祭にも招待・受賞されるなど評価されました。
のちのクリエイターたちに与えた大きな影響
フィリピンBL「Hello Stranger」の演出をされたPetersen Vergas監督は、インタビュー記事で、本作を見て自分もセクシャリティについてや同性の恋を描く作品を作りたい、勇気づけられる人がいると気づいたそうです。
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国外の映像クリエイターの方々に影響を及ぼしていたということは、タイ国内ではいかばかりか。
2013年から3シーズン続いた「Hormons」シリーズや2014年の「Love Sick」がBLドラマの黎明期の扉を開け、2016年の「Make It Right」では俳優たちやファンダムと共に作品を盛り上げるメディアミックス的な成功例となった。
この「Love Of Siam」は、少年たちのアイデンティティの目覚めを描いたことで、愛というものの純粋さと瑞々しさを描く成功例としてのちのBLドラマクリエイターたちに影響を与えたことは間違いないでしょうね。
家族を失う痛みと癒し
物語のもう一つの柱となっていたのは、Tongの姉の遭難失踪による家族の哀しみの深さを描くエピソード。
後悔・自責の念に苛まれアル中から病気になった父親と、残った家族を守り抜くためにより強くあろうとした母親の姿が苦しく描かれていきます。
娘の生存を信じたいというかすかな希望を捨てられず、喪失に対する痛みが家族の中に常にある家族の状態のやるせなさも。
Tongの家族はまさに、ドン底の状態でした。
そこに、彼らの行き詰った心に日を差し込むような出会いと出来事が訪れるんです。
夜明け前の最も暗い時間から夜が明けるような印象のエピソードで、”必ず状況が変化する時は来る”と語っているようでした。
少年から青年期への過渡期に直面するアイデンティティ
「自分は何なのか?」
- ガールフレンドよりも、MewだったTong
- Tongと再会してから、ラブソングが湧き出るように書けるようになったMew
TongとMewは互いへの思いが友だちとは違う何かであると気づきます。
ただ、まだ友情の延長線上にあった二人の幸せに対する、大人の予想外の大きな反応が彼らを戸惑わせました。
この思いは過ちではないけれど、許されないんだなと受け取った若き彼らの下した決断。
それが、「恋人にはなれないけど、愛していないわけじゃない」というTongのMewへの言葉でした。
ミウの歌~Love of Siamとは
家族への愛と同性の少年たちの初恋
心に抱いた愛をどう守り抜くか
普遍的な物語の中で紡がれた夜明け前
ハマリ度は
4
愛に違いはない
家族への愛、大切な人への愛も
愛に変わりはなく、そこには愛の対象への垣根など何もない。
「恋人にはなれないけれど、愛していないわけじゃない」
Tongの言葉に、笑顔で手をふっていたMew。
ふたりが引き裂かれることなく、いつでも共に笑い合い「お互いを大切に思っている、愛している」と伝えあうことはできる。
…彼らの選択には切なさももちろんあります。
ただ、この瞬間での最適解を導いたふたりにとって、将来の幸せを期待できる一つのハッピーエンドだったと私は受け取りました。
人生はまだ続き、状況は刻々と変化していく。
夜明け前が最も暗く、変化しないものはない。
今出せない答えを先送りにするのも自分達の愛を守り抜くために下した勇気ある選択でもある。
いつか彼らが大人になり、状況が変化する可能性は必ずある。彼らの物語はまだ続いていくはずだから。
OST
Mv. กันและกัน – Ost. รักแห่งสยาม
MV. ขอบคุณกันและกัน
さいごに
この家族愛と同性の初恋という二つのエピソードをリンクさせながら描いた脚本は本当に素晴らしかったです。
それを映像化させた監督さん方も。
その後も、MarioくんとPitchくんのお二人は折に触れてエールを送り合う関係のようです!
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